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第八十二話 蜜色の辱め。

「う……ううう……。うぇ……うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ……」



 あふれ出した涙が止まらない……。


 これが、あられもない姿を晒した女の子の感情……。



「泣いた泣いたあ、かあいいねえっ」

「おらさ罪悪感があるんだがあ、そそるのが止められねえ」

「んだば、据え膳食わねば牛乳は搾れねえっつうしなあ」

「んだんだ、タツノコの血が入れば村さ安泰だあ」

「ほいじゃ皆の衆、ひとり一回ずつ順番に回すべえ」


「「「よいやさーーーーっ!」」」



 あとはこのまま……勢いづいた暴徒どもにいいようにされて……。



「えへへえ、ニオたぁん!」



 そうして、抵抗もできない俺に対し男たちが群がってきた。



「おまえら正気に戻れ! おい、デロ、ンダン、マロ、アマダまで、俺のことを忘れたのか! くっ、姫さんに、手を出すな!」



 ディーが農民たち一人ひとりの名前を呼んで制してくれるも、暴徒と化した四十二人をたったひとりで押さえられるはずがない。


 ニオ()はあっさりと羽交い絞めにされ、中でも特に屈強な男がのしかかってくる。



「ほいじゃま、おらから……れろぉ」


「んぅ……。い……やぁ……」



 男に頬を舐められた。


 ほぼ裸同然の姿で、四方八方から両手両足を押さえられ、抵抗する気も削がれたまま、おぞましい感触が肌をなぞって痕を残していく。


 本当の生娘かのように、体は恐れに震えて動けない。


 システムアシストによる情動コントロールがマイナスに作用していることは、冷静に俯瞰するホツマ()が理解するも、もうひとりのニオ()が抵抗しないことにはこのまま最悪の事態を迎えてしまうだろう。


 だけど、この状況をいったいどうすればいいのか。


 ホツマ()が動かそうとしてもニオ()の体は動かず、少女が犯されようとするのをただ見ることしかできないのは、怒りでどうにかなりそうだ。



「んっ、んっ……や、だぁ……いや……やめ……」


「んへへえ! あまーいっ、最高の蜜の味だああああっ!」

「まじかあ! おらさにもはよ分けてけれえ! 辛抱たまらん!」

「おめえら押すなあ! 若えもんからって話だろがい!」

「ぺろぺろぺろ、んほおっ! まじであっめぇっ!」


「んああっ……! やだぁっ……!」



 そして、男たちの興味が悶えるニオのむき出しの胸へと向かう。



「えへへえへ、こっちはもっと甘いんかのう」


「も、もう……やぁ……ごめ、ゆるし……」





「何を……いったい何を……しているのですか……?」





 もうひとりのニオ()が許しを請おうとした瞬間、その存在は現れた。


 男たちの壁の向こうにいてもなおも圧してくる気配。たった一言で重力が倍になってしまったかのように、大気が質量を持ってしまったかのように、重い。


 男たちは一斉に振り向き、何を見たのかその体勢のまま硬直する。



退()きなさい」



 答えられる者はいない。


 男たちに囲まれたここからではその姿を視認できないものの、大海が割れるような勢いで人垣が割れていくことは音でわかる。


 ビリビリと、本当に部屋全体が振動しているのは何のなせる業か。


 やがて、部屋の左右へと完全に追いやられた男たちの合間から、鬼神(・・)がごとき怒気を孕んだ存在が、石床を踏み砕く圧力をもって姿を現した。



「あ……うぇ……ア……エカ……」



 もちろん、鬼神がごときその存在は“アエカ”だ。


 彼女は何を言うでなく、ひどいありさまとなっている俺を抱きしめる。



「ふぇ……」


「ごめんなさい……。アルコーンの気配を感じて急いだのですが、こんなことになっていようとは、すべての障害を無視するべきでした……」


「うっ、うぐっ……。でもっ、ギリギリ間に合ってくれたっ、助かったっ」



 大した時間を離れていたわけでもないのに、その懐かしいぬくもりに包まれて安堵した俺は、おとなげなく涙があふれ出してきてしまった。



「うぐっ、うぇぇっ、うっ、うぅぅ、うぐっ」


「ご無事で何よりです……。ニオさま……」


「ぐすっ、無事でもっ、ないっ……。うぅぐっ……」


「そうですね……」



 体を離し、俺を正面から見つめるアエカの表情は、ハイライトが消え色も抜け落ちた完全にぶち切れているときのものだ。


 こうなってしまった彼女は怖い、俺にも止められないくらいに。



「ヴァローレンさん、ライゼさん」


「ああ、この私とて、この状況で穏やかでいられるほどお人好しではないよ。いますぐに斬り捨てたいところだが、そういうわけにもいくまい」


「傷つけずに鎮圧すればいいのね、私がやるわ」



 目の前のアエカから視線をずらすと、こちらに駆け寄るイースラが目に入り、さらに部屋の入口にはヴァローレンとライゼまでいた。


 すぐにライゼが部屋の中央へと歩み出て鎌型のレリックを掲げる。



「≪誘惑幻霧エンプテーションミスト≫!!」



 彼女が使ったスキルにより、部屋中に桃紫色の怪しい霧が立ち込めると、すでに放心状態だった農民たちが次々と倒れだした。


 眠らせたのか、魅了系のデバフスキルであることは間違いない。



「ニオさま、ごめん……」


「イースラが謝ることでは……」


「そうだ。今回の事態は、奴を止められなかった俺にこそ原因がある」



 ディーが魅了スキルの影響を受けずに近寄ってくる。 


 牢屋でおとなしくしていたライゼとはやり取りがあったのか、そもそもの抵抗値が高いだけか、平然としている理由はわからない。



「本当に、皆が迷惑をかけた」



 彼は少し離れて跪き、深々と頭を下げて謝罪を口にした。



「もうよい。そなたへの罰は告げたとおり、この者らもプロトンの影響を受けていたにすぎないのなら、瘴気の浄化が済み次第、故郷へと帰そう」


「ありがたい……。姫さん……陛下には誠心誠意お仕え申し上げる」


「ああ……。と、とりあえず、そこな者らと協力し、全員を本隊に引き渡してくれるか、いますぐに……」


「わかった、迅速に事を行おう」



 ディーは有言実行と即座に従い、すでに農民たちを運び出しているヴァローレンたちのもとへと向かっていく。



「ニオさまは甘いですね……。ニオさまをこのように凌辱した連中は、絞首刑もいいところです……。怒りが収まりません……」


「あたしも同意」


「い、いや、舐められただけだから! 未遂だから!」


「それでも、私からしてみれば重罪です」


「同意」


「そ、そそ、そんなことよりも、腰が抜けていて……。ここからすぐに連れ出して、どこか水場に連れていってほしい……」


「あ、はい。汚れを念入りに落とさないといけません」


「で、できれば、誰かに気づかれる前だとありがたい……」


「ニオさま? どうかしましたか?」


「う、ううぅ……。その……も、漏らしちゃった……」



 アエカとイースラの視線が、お尻の下に染み出た水たまり(・・・・)へと落ちた。


 だっ、だってっ、ずっとトイレに行けなかったんだもんっ……!

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― 新着の感想 ―
[良い点] うーん いい趣味しているなぁ(褒め言葉) [一言] 女の子いじめるのは心が痛むけど 中身オッサンなので心痛まない よし
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