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美月たちにアウトドアのことを話したら「やりたい!」と答えてくれたので、早速4人の予定を合わせた。
持って行く食材などを確認し合い、それらは分担して各々が用意することにした。
当日は門付近で待ち合わせをし、合流後は優真の案内で、近場のアウトドアに向いている場所へ向かうことになっている。
「忘れ物は…ないよね? あったとしてもマジックバッグもあるし、異世界商店もあるから大丈夫だよね」
芽衣はバッグを叩き、戸締りをして門へと向かった。
相変わらず門付近は混雑しており、少し離れた場所に航太と優真が立っていた。
「おはよう」
挨拶をしながら2人へ近づくと、芽衣に気付いた2人が「おはよう」と挨拶を返してくれた。
「晴れて良かったね」
「そうだね。絶好のアウトドア日和だ」
そんな会話をしていると、美月が走ってやって来た。
「あれ? 私が最後?」
既に3人揃っているのを見て、美月はとても驚いたようだった。
「私も今来たところだよ」
「ちょっと僕たちが早く来すぎたんだよ」
「楽しみだったから…」
どうやら男子組はアウトドアが楽しみだったようで、早く到着してしまったようだ。
「それじゃ全員揃ったから移動しようか」
「うん」
航太の声に全員が頷く。そして優真を先頭にして街の外へ出る。
どこに向かうのかな?と思っていると、どうやら西の方に向かっているらしく、いつも芽衣が魔法の練習をしている場所とは風景が違った。
「アウトドアに向いてる場所ってどこかしらね?」
一緒に歩いている美月にそう訊ねられ、芽衣は考え込む。
「う~ん…森とか川とか?」
「それだったら私は川の方がいいな~。水もあるし、何より虫が少なそうだし」
「そうだね。森だと虫が多そうな気がするよね」
そんなことを話していると、周囲に木々が増えてきた。
「これってもしかして…」
「目的地は森なのかな?」
芽衣は美月と顔を見合わせる。
どうか森じゃありませんように! そう美月と共に祈りながら後を付いていくが、優真の足は止まらない。
迷うことなく森の中を歩いていると、どこからか「ウ~」という呻り声が聞こえてきた。
ハッと辺りを見回すと、ウルフ(鑑定してみると『フォレストウルフ』と表示された)が2匹こちらを見ていた。
芽衣が魔法で応戦しなくては!と思っていると、航太は落ち着きながらマジックバッグからスッと包丁を取り出し、突如フォレストウルフに斬りかかった。美月も魔物たちが苦手だという高周波を放ち、フォレストウルフが怯んだ隙に優真が弓矢を放つ。
「す、凄い」
初めて魔法以外の――しかも日本人組の戦闘を目にしたが、しっかり連携もとれているので熟練の冒険者パーティーのように思えた。
あっという間にフォレストウルフ2匹を倒し、3人はフゥと息を吐いた。
「皆凄いね! まるでパーティーを組んでいる冒険者たちみたいだった!」
ただ見ているだけしか出来なかった芽衣は興奮気味に話しかけた。すると美月たちはふふんと胸を反らしていた。
「私たちがこっちに来た時は王都で暮らしている子供たちよりレベルが低くて、とにかく弱かったからね。だからお互い時間が合う時にレベルアップも兼ねて、こういう訓練をしてたんだ」
「そうなんだ」
「そう。そのおかげでレベルも上がったし、魔物と対峙しても冷静でいられるようになったし」
芽衣はたまたまリーシャに魔法を教えてもらえたが、他の人たちは自分たちで力を付けていかなくてはいけない。そのため美月たちは定期的に集まり、王都周辺でコツコツと魔物を倒す訓練をしていったらしい。
皆凄いな…と感心していると、美月は倒したばかりのフォレストウルフをマジックバッグに入れていく。この魔物たちを冒険者ギルドで解体してもらい、その売ったお金を均等に配分するそうだ。
「そっか、魔物も売れるんだよね」
「うん。ってか芽衣ちゃんは今までどうしてたの?」
美月にそう聞かれて、芽衣は苦笑しながら答える。
「今までは…魔法の練習だから、力加減を間違えて黒焦げにしちゃったりしてるから、倒した後は埋めてる」
「勿体無い」
それを聞いた優真がポツリと呟いた。
確かに折角倒した魔物たちをただ埋めてしまうのは勿体無い。それは分かるが、色々な魔法を使っていると、ついやりすぎてしまう時がある。そういった時は大体黒焦げだったり、防御用に作った土壁に突撃して潰れてしまったりで、あまり綺麗な状態ではない。それらを回収して持っていっても、安く買い取られるだろうと思っていた。幸いお金には困っていないので、それだったら埋めてしまった方が土魔法の練習にもなるし、埋めることにしていた。
(魔法の精度を上げる練習にもなるから、今度からもう少し綺麗な状態で倒せるように頑張ろう)
そう心の中で決意した芽衣だった。
何匹かの魔物と遭遇しながらも、優真は森の中をどんどん歩いていく。
本当にこの森がアウトドアに最適な場所なのかな?と少し疑問に思っていると、段々木々が少なくなってきた。
「うわ~!」
ようやく森を抜けた光景に芽衣は思わず声を上げてしまった。それはこの世界に来て初めて目にする川原だった。
「ここなら水もあるし、すぐ側に森があるから枝なんかの採取も出来る」
「確かにここならアウトドアに最適ね」
優真の言葉に美月は頷いた。
「それじゃ今日は思いっきり楽しみましょう!」
日本人組の代表である美月の掛け声に、芽衣たちは「おー!」と気合いを入れて準備を始めた。
まず芽衣は土魔法で簡単な竈を作る。先日の燻製器と同じように、長方形をイメージし、上部分は火を起こす場所にしたいので凹ます。凹んだそこへ優真が用意してくれていた枯れ枝を置き、火魔法で火を点ける。その上に網を置き、それぞれが用意した食材を置いて焼いていく。
「バーベキューなんて久しぶり」
食材を焼いていると、優真が嬉しそうにしていた。
「こっちに来て、バーベキューが出来るとは思っていなかったよ」
「そうね。次はいつ出来るか分からないから、今日は盛大に楽しみましょう」
航太と美月も準備をしながら嬉しそうに笑っている。
(皆を誘って良かった)
最初の食材が焼き上がるのを待ちながら、皆でわいわい騒ぐのは楽しいな、と思った。
こうして芽衣たちは異世界で初めてのバーベキューを楽しみ、川で水遊びをしたり…と、アウトドアを満喫したのだった。




