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更新が遅くてすみません(>_<)
日々の日課になっている目新しい物を探すために異世界商店を眺めていると、とある商品が目に付いた。
「燻製チップ?」
確か燻製チップや燻製ウッドといった燃料と網などの道具を使えば燻製が出来る…という話を聞いたことがある。この異世界でも手軽に作れるのであれば、とても面白そうだと芽衣は思った。
「もし作るとしたら…玉子とかチーズ、あとベーコンなんかのお肉やお魚なんかも燻製に出来るよね」
以前スーパーで購入した燻製玉子やチーズを食べた時、スモークの匂いがして美味しかったと記憶している。それにスモークベーコンやスモークサーモンが売られていたのだから、それ以外の肉や魚も燻製出来るのでは?と思った。
そう思いながら画面を下へスクロールしていると、アウトドア商品と共に燻製関連の商品も出てきた。
「あっ、燻製用のダンボールキットなんかも売ってるんだ。しかも網とアルミ皿までついてて…あっ、これは流石に100円商品じゃないんだ」
残念ながら100円商品ではなかったものの、スキルで定められている予算内で購入出来る金額だった。
「この商品が500円以下で良かった。もし800円とか1,000円とかだったらまだ買えなかったし…」
いつになったら高額商品が買えるようになるのかは分からないが、ダンボールキットの詳細を見ているうちに燻製作りに心惹かれていく。それにこんなに便利な物があるのなら、一度は試してみたい。
衝動的にポチッと押してしまいそうなところで、芽衣はふと考え込んだ。
「でもこのキットは使い捨てだよね? だったら土魔法で囲いを作れば、燻製器みたいに何度も使えるんじゃない?」
土魔法で作った壁はダンボールより丈夫だと思う。それに土魔法で作った物ならば、必要がなくなった時に簡単に消せる。
「あっ、でも肝心の燻製の作り方が分からない」
さてどうしようか…と悩んでいると、どうやらこのキットには組み立て方などの説明書が付いているようだった。
「このキットには説明書が付いているみたい。最初から大失敗するのも嫌だし、参考に買ってみよう!」
どうせ土魔法が上手くいかなければこのキットに頼るしかないので、芽衣は燻製キットと燻製チップを購入した。
購入した燻製キットをマジックバッグから取り出し、まずは説明書を読む。
「…これだったら、なんとか土魔法で出来るかもしれない」
一通り読み終えると、物は試しにということで芽衣は庭に出て土魔法を使ってみる。コツコツと練習し続けたおかげで、今ではなんとかミニテーブルサイズぐらいの物までは作れるようになった。
「まずはイメージして…」
芽衣は四角――なるべく長方形になるようにイメージする。けれど食材や燻製チップを入れたりしたいので、正面だけは開いた状態にしたい。そうすると段々形が決まってきて、ふいに棚板のないカラーボックスが頭の中で浮かび上がった。「これだ!」と思い、それを強くイメージした。
「えいっ!」
時間をかけてようやくイメージが固まったところで魔法を放つと、箱のような壁が出来た。しかもちゃんと正面だけは壁がなく、何とかイメージした通りの物が出来た。
「成功して良かった」
フゥと息を吐きつつ、出来上がった壁に隙間や穴がないかを確認する。
あとはこの正面から材料をセットし、セットし終えたらここにフタをすればいい。
確認のためにもう一度説明書を読みながら、燻製の準備をしていく。
「えっとアルミ皿にチップかウッドを入れて、網をセットする。網の上に具材を乗せて、火をつける…。うん、何とか出来そう」
頷きながら説明書通りに網をセットしたところ、重要なその網がスルッと落ちてしまった。
「え? サイズが合ってない!?」
ここまで上手く出来ていたのに、肝心の網が合わないだなんて…。
困った芽衣が説明書を読んでみると、どうやらこのダンボールには網を固定出来る箇所があるようだ。しかし芽衣の作った燻製器には固定出来る部分がないので、それが原因で網が落ちてしまったらしい。
そこで燻製器の四隅に急遽土魔法で出っ張りを作り、網を固定するようにした。
何度も網が落ちないことを確認した後はアルミ皿と食材も用意する。今回用意した食材は、チーズと鶏肉。この2つを適度な薄さに切り、網の上に並べた。
「それじゃ実際に作ってみよう」
火をつける前にもう一度網が動かないかを確認し、そしてアルミ皿に入れたチップに火をつける。
「どうか成功しますように!」
思わず願いながら様子を見ていると、チップから薄っすらと煙が出てきた。暫らく様子を見ていたが、火が消えてしまうことはなかった。
「そろそろ大丈夫かな?」
再度火が消えていないことを確認してから魔法で土壁を燻製器の手前に出し、それをググッと押してフタの代わりにした。
「あとは…このまま放置しておけばいいのかな」
本来は途中で火が消えていないかを確認した方がいいと思うのだが、燻製器本体の素材や点けた火にも魔法を使っているので、持ち主の魔力や意思が尽きない限りそう簡単に消えはしない。
30分ほどしたら中の様子を見てみようと思い、その間に掃除や店で販売する商品の仕入れなどの雑用をこなした。
切りのいいところで時計を見てみると、予定していた30分は既に過ぎていたので、慌てて燻製器の前へと移動した。
「まずはこの正面の1枚だけを崩したいから…」
先ほど組み立てた時のように正面だけ壁がない――カラーボックスをイメージしながら、正面の壁に手を触れた。
「お願い、ここだけ崩れて!」
グッと魔力を込めて壁に触れると、芽衣のその願いが通じたかのように正面のそこ周辺だけが崩れた。
「…良かった…」
魔法で作り上げた物を一部分だけ壊すのは、全体を崩すよりも神経も魔力も使うのだと以前リーシャが教えてくれた。
芽衣自身は今まで魔法練習の最後に後片付けとして全部無かったことに…と完全に壊すことはしていても、一部だけを壊すというのは練習していなかった。なので今回なんとか成功することが出来て嬉しかった。
「今度から一部だけ…っていう練習もしなくちゃ」
いつもより集中したからか今のでとても疲れてしまった。
今すぐにでも座り込みたい気持ちになったが、それでも中が気になるので身体にグッと力を入れて燻製器を見てみる。
改めて燻製器本体を見てみると、正面の壁の真ん中周辺は壊れているが、チップを置いてある下や上の方はまだ壁が残っていた。それでも中を確認するには充分なので、芽衣はそこから中の様子を見てみた。
「うわ~」
しっかりと密閉されていたからか、壁を壊すと燻製のいい匂いが漂ってきた。
「美味しそうな匂い」
思わず目を閉じてその空気を吸ってみる。美味しそうなこの匂いだけでもワクワクしてしまう。
次に食材を見てみると、程よい茶色に変化していた。
「ってことは、燻製成功?」
あとは火を消して、このまま冷ませば完成のようだ。
「でもちゃんと味見をしてみないと成功か分からないよね」
食材を見ただけではちゃんと燻製されているか分からないので、まずは味見をしてみることにした。
「食べやすいチーズがいいかな?」
菜箸を使って1枚のチーズを取ると、それをそのまま口に入れる。
「んっ! 美味しい!」
チーズをもぐもぐと味わう。燻製されたばかりのチーズは柔らかくなっているのでとても食べやすい。
初めての燻製にしては上手く出来たと思う。
「今度は他の食材を使って…あっ、街の外で燻製を作ったら、アウトドア気分も楽しめるんじゃない?」
庭で燻製を作るのも楽しいが、どうせなら外に出てアウトドア気分を味わいたい。それには誰かと一緒に食べたりした方がよりアウトドアを楽しくさせてくれると思った。
「…それに独りでやるのはいつでも出来るし…」
そう考えた芽衣は、誰に声をかけようかと考えてみる。
「…美月さんたちに声をかけてみようかな」
まずはアウトドアのことを知っている日本人の3人を誘ってみようと思った。




