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 全ての商品を見せて販売に関する相談を終えた後、芽衣はルスタから地図を購入した。

 手に入れにくい物かと思っていた地図は、どこの国でも普通に冒険者ギルドや商業ギルドでも販売しているらしく、1枚銅貨6枚で販売しているという。その地図は主要都市の名前だけが入っている簡単な世界地図ではあったが、これである程度の地理が把握出来る。


(ユイオンは…東の端にあるんだ)


 地図を見て真っ先にユイオンを探すと、東の端に名前が書かれていた。

 そして地理の関連として、こっそりと特産品や調味料などの話も聞いてみたが、一番手に入りやすい塩はユイオンの北と南の国で作っているらしく、そこから仕入れているという。コショウや砂糖はもっと西側の国から仕入れているので、どうしても塩より高くなってしまう。

 他の情報としては、ユイオンから一番遠い西の国には異世界人が多く住んでいたそうで、食生活なども大幅に改善されたという。そこから様々な国を通って情報が流れてきているが、ユイオンに辿り着くのは最後の方になるので、どうしても情報が曖昧になってしまうそうだ。そのため流れてきた情報を元に実際に料理や手芸品を作ってみたところ、見事に失敗してしまったとか。それらの情報は又聞き以上の話になっているため、何度か実験を繰り返した後、東側の国は冒険をせずに安定の物たちで過ごしているらしい。


「東には私たち以外の異世界人は居ないんですか?」


 西には多いという話を聞いてしまうと、どうしてもこちらの様子が気になってしまう。


「…ラスターニャ全土で確認出来ている人数は少ないが、もしかしたら…」


「そうですか」


 もしかしたら東側にも誰かいるかもしれない、ということは分かった。

 それでも芽衣が来るまでユイオンの料理にあまり変化がなかったようなので、そこら辺は期待しないことにしている。


(誰かが…せめて私が来る前に航太さんが色々と改善してくれていたかと思ってたけど…)


 料理人である航太は、夏祭り前にやっと調理を任されるようになったらしい。それまでは見習いとして食材を切ったり、皿洗いなどの雑務をしていたと聞いた。

 美味しい物を色々と食べたい芽衣は、これからの航太の活躍や住民のアイディアに期待することにした。

 他にもユイオンの行事についても教えてもらったが、暫らく大きな行事はないというのは分かった。

 歴史については王立図書館に歴史書があるので、一度読んでみるといい、と云われた。街中に図書館があるということに驚いたが、詳細を聞くと貴族街付近の奥まった所にあるらしく、それでは芽衣が今まで知らなかったのも分かるような気がした。


「色々教えてもらい、ありがとうございました」


「また分からないことがあったら何でも聞いてくれ」


 ルスタとエディルはニコッと笑っていた。

 ある程度情報を得ることが出来たので、芽衣は礼を云って商業ギルドを後にした。




 翌日からは新商品の販売準備をしつつ、時間があれば王立図書館へ行き歴史書を読んだりした。そのおかげで少しはラスターニャのこと、ユイオンと周辺の国のことについて知ることが出来た。

 王立図書館には歴史書の他に、歴代勇者の話や吟遊詩人の歌詞なんかも置かれていた。どれも面白そうなのでじっくり読んでみたいが、残念ながら図書館の本は全てが貸し出し禁止だという。


「これで地理とか行事とか、大体のことは分かった。あとやることは…リーシャさんから借りているお金を早く返さないと」


 自宅兼店舗の代金など、リーシャから借りている金額が大きいので早めに返したい。


「お金は…結構貯まってるから、もう返せるかもしれない」


 一度所持金をしっかり確認してみようと思った。そして返済が無事終わったら、残りを銀行に預けようと考えていた。幾ら特殊なマジックバッグがあるからといって、大金を持ち歩くのも少し不安になってきた。

 次にやることを考えながら帰り道にある市場を歩いていると、どの店でもトマトが沢山並んでいることに気付いた。


「トマトがこんなに沢山…。たまにはトマトソースとかミートソースみたいなのとか、作ってみてもいいかもしれない」


 トマトソースのことを思い浮かべたら、久しぶりにパスタやピザが食べたくなった。

 わざわざ作らなくても異世界商店で市販の物を購入して食べることは出来るが、新鮮なトマトがこんなに沢山並んでいるので、何かしら作りたい気持ちになった。それにもし美味しく作ることが出来れば、リーシャ邸への手土産にしてもいいかもしれない。

 そう思った芽衣はトマトを大量に買い、家へと急いだ。

 家に着くと、まずは所持金の確認をした。


「確か借りているお金は…」


 所持金を数え終えると、メモを見ながら返済金額の確認をする。


「…うん、返済できる!」


 何度か確認を繰り返し、やっと一息吐く。返済する代金は借りていた布袋に入れてマジックバッグにしまった。


「それじゃトマトソースとミートソースを作ろう」


 手をしっかり洗ってコンロの前に立つ。

 湯向きしたトマトをざく切りにし、玉ねぎとにんにくをみじん切りにする。フライパンにオイルとにんにくを入れて、香りが出てきたら玉ねぎを入れて炒める。玉ねぎの色が透き通ってきたらトマトを入れて炒め、塩コショウを加えて煮詰めていく。

 出来上がったところで味見をしてみると、納得出来る味に仕上がっていた。


「これはパスタとかピザが食べたくなっちゃう味だ!」


 良い物が出来たと喜びながら、トマトソースが冷めるのを待つ。

 その間にミートソース風を作ることにした。

 本来ならちゃんとしたミートソースを作りたいところだが、芽衣が知っているレシピにはソースやケチャップ、ローリエなどを使っているので、様々な調味料を持っている芽衣だけなら作れるが、他の人たちは作れない。それならここにある有り合わせの物で似たような物を作っていく。


「それに本格的なのを食べたくなったら、自分用に作るか買えばいいし」


 今回はリーシャ邸に持っていくことを優先し、トマトソースを少しだけアレンジしたような物になってしまうが、それは仕方ない。

 ざく切りトマト、みじん切りにした玉ねぎ・人参・にんにく、ミンチにした肉を用意し、オイルを入れたフライパンでさっと炒めていく。肉に火が通ったらトマトを入れて、塩コショウと少量の赤ワインを加えて煮詰めていく。


「う~ん…やっぱりもう少し濃い味にするにはソースが欲しくなっちゃうな。…でもこれはこれでいいかもしれない」


 味見をした芽衣は少し物足りなく感じながらも、トマトソースと似たような味でもトランたちに受け入れてもらえるのでは?と思った。

 その日は購入したトマトを全て使い切るように、トマトソースを大量に作った。そしてそれらをしっかりと冷ました後、瓶に入れて保存した。




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