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部屋でのんびりとしていたら、いつの間にか外が暗くなっていた。
まだ祭りは続いているので、もっと楽しみたい芽衣は慌てて外へ出た。
目の前の通りは朝と同じように、大勢の人が歩いていた。街中にいる人たちは最後まで祭りを楽しむかのように騒ぎながら歩き回っているようだ。
「もう少しでこのお祭りも終わっちゃうんだね…」
準備期間も含めて楽しかった分、あっという間に終わってしまうのが淋しい。
「そういえばこのお祭りはどうやって終わるんだろう?」
地域の祭りでは閉会の挨拶があったが、ここではどういう終わり方になるのだろうか。そもそも祭りの始まり方も知らない。まさか「朝になったら祭りが始まる」という暗黙のルールみたいなものが存在しているのか…。
それで気付いたが、この祭りよりも芽衣自身がもっとこの国のこと、この世界のことを学ばなくてはいけない、と思った。
「魔法だけじゃなくて、一般知識も勉強しないと全然分からないよ。…それにしても皆にもっとお祭りのことを聞いておけば良かった…」
今更後悔しても遅いので、祭りを存分に楽しむために歩き回ることにした。
昨夜は歩いていない北側――貴族の屋敷と王城の方へ向かって歩く。貴族街がある北側には仕切りのように壁が広がっており、向こう側へは唯一中央通の真ん中ら辺に馬車がすれ違える程のトンネルのような穴が開いている。これは大勢の人が雪崩れこまないようになっているらしい。
その北側へと向かって歩いている途中に、干し肉などの保存食を販売している店や穀物店、生活用品を販売している店が目に入った。
「普段は縁がないからあまり見てないけど、じっくり見てみようかな」
一番気になるのは保存食を販売している店。この店は祭り用に屋台販売をしており、テーブルには干し肉や干し野菜が並んでいる。
以前芽衣が食べた時はあまりの硬さに料理の具材として使った干し肉だが、どうやら食べやすいように少しずつ改善されているという話を聞いたことがある。
「食べ比べてみるためにも買ってみよう」
もしまだ硬いようなら、また料理に使えばいい。そう思って芽衣は干し肉と干し野菜を少しだけ購入した。
他にも乾燥した豆類や穀物、それらを使った持ち帰り用の料理、木皿などを販売している屋台もあった。
食器類などの生活用品は異世界商店で買ったり、露天で買ったりしていたので今まであまり縁がなかったが、祭りが終わった後に店の方も見て回りたいと思った。
生活用品の店を通り過ぎると、今度は布や飾りなどを売っている衣類関連の店が並んでいる。そこでも屋台販売をしており、そっと見てみると、可愛らしい髪飾りが売られていた。
「これは布と糸。こっちは木材、こっちは鉄石で…」
様々な髪飾りを見ていたら、店の人が何の素材で作られているか教えてくれた。店の人が云うように、そこにはシュシュのような物や組み紐やリボン、バレッタのような物やブローチなどが並んでいた。
「それじゃこれとこれを下さい」
「はいよ」
芽衣が選んだのはシュシュとブローチの2つで、ブローチには魔石の粉末が入っているらしく、時折キラキラと輝いて見える。
ここでも今後の販売参考になるのでは?と色々な店を見て行った。
そうして沢山の店の前をゆっくりと歩き、貴族街の近くまで来た時には既に空は暗くなっており、街灯が点き始めていた。こっそりとスマホで時間を確認すると、19時を過ぎていた。
「もうこんな時間なんだ…」
そう思いながらも、このまま貴族街へ進むか悩んでいた。
貴族街にはリーシャの屋敷もあるので、何度も歩いたことがある。この先にも店はあるが、どれも貴族用に少し高級な物が多い。
購入する予定はないが、一応見て回ろうかと考えていると、ヒューと聞いたことのある音がした。何の音だっけ?と考えていると、ドンッと大きな音が響き、気付くと花火が上がっていた。
「花火?」
思わず空を見上げていると、次々と花火が打ち上がっていく。
「綺麗…」
立ち止まって空を見上げていると、他の人たちも皆立ち止まって空を見上げているようだった。
「わ~花火だ!」
「毎年のことだけど、やっぱり綺麗ね」
「ってことは、そろそろ祭りも終わりか…」
「あっという間だったな」
そんな声が聞こえてきた。
「そっか。花火がお祭りの終わりの合図になるんだ」
聞こえてきた声から、この花火が終わりの合図だということを知った。
夏祭りが終わるのを淋しく感じさせないように、次々と花火は空へと打ち上がっていく。
結局芽衣は貴族街へ行くことなく、花火が終わるまでその場に立ち止まって見ていた。
これで夏祭りは終わりです




