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夏祭り2日目の最終日は前日よりも更に多くの人が王都に集まっていた。
「うわっ! 人が多い!」
家から一歩外へ出ると、目の前の通りにはいつもより大勢の人が歩いていた。昨日より人通りが多いことに驚きながらも、それだけユイオンの夏祭りは知名度があるということを知った。
「今日はお店の営業は無しで、屋台は昼からの予定だから…その前に美月さんと航太さんの所へ行ってみようかな」
去年は美月が働いている冒険者ギルドの屋台は遊戯系(スライム素材で作ったスーパーボール掬い)、航太が働いている食堂では飲食物(食材は教えて貰えなかったがサンドイッチ)を販売したということを聞いた。今年の販売物は聞いていないので、どんな物を販売しているのか気になる。
この人が多い中で移動するのが大変だと思うが、実際に何を販売しているのか気になるので、思い切って行ってみることにした。
「悩んでても仕方ない。気になるから行ってみよう!」
戸締りをしっかりした後はすぐに大通りへ向かい、最初の目的地である冒険者ギルドを目指す。
冒険者ギルドは商業ギルドと同じようにメイン通りにあり、王都にやって来た人たちにもすぐ分かるようにと大きな看板が出ているので、今日のようにどんなに人が多くてもそれを目印にすれば迷うことなく辿り着ける。
行き交う人とぶつからないように気をつけながらなんとか冒険者ギルドに到着すると、建物の脇にある空き地――ここも冒険者ギルドの土地で、普段は冒険者たちの訓練所になっているらしい――に人だかりが出来ていた。
「確か前回はスーパーボール掬いって云ってたっけ。今回はなんだろう?」
美月に事前に聞いてみても良かったが、それだと当日のワクワク感が減るような気がして確認しなかった。航太のところも同じ理由で何を販売しているのか聞いていない。
人だかりからこそっと覗き込んでみると、体型のいい冒険者が手にした何かを投げていた。
「ん? あれは輪投げ?」
どうやら今回の冒険者ギルドの屋台は輪投げのようだ。輪投げ板が4枚用意されており、それぞれにギルド職員が配置されている。椅子に座っている職員は不正行為や得点数を確認しているようだ。
「あれ? 芽衣ちゃん、来てくれたの?」
芽衣が輪投げを見ていると、ふいに声をかけられた。
「美月さん」
声の主は美月だった。
「冒険者ギルドの屋台は輪投げなんだね」
「そうなの。これだったら誰でも参加出来るし、楽しんでもらえるでしょ?」
確かにこれなら小さい子からお年寄りまで、皆楽しんで参加することが出来る。
「そうだね。皆凄い真剣だね」
「ふふ、それは勿論景品も頑張ったからね」
「景品?」
美月の言葉に改めて輪投げ板を見てみると的部分には1~9までの数字が書かれており、それら全ての数字に輪を投げ入れなくてはいけないようだ。もし同じ場所に入っても最初の1本だけの得点しかもらえないので、別の場所に入るように投げて高得点を稼ぐにはどうすればいいのかと試行錯誤しているらしい。
ちなみにその得点によって景品も変わってくるという。
「全部入ったら、ギルド内の食堂で使えるカウーモのステーキを3時間食べ放題チケットをプレゼント! しかもなんとグループ4名まで使えるという太っ腹! それ以外でもポーションセットや携帯食セットなんかもあるし、参加賞として魔石の欠片を準備してあるからね」
ちなみに今のところ、全部の数字に輪を投げ入れた人はおらず、6本入った人が最高得点らしい。それも6本入れたのはまだ3人だけだという。
「6本入った人への景品は携帯食セットなんだけど、その中に芽衣ちゃんのところの缶詰も入ってるから喜ばれてるの」
どうやらサバ缶も景品の一部になっているらしい。
「お買上げありがとうございます」
サバ缶が入っているということはわざわざ買ってくれたということなので、丁寧な言葉遣いをすると美月に笑われた。
「携帯食セットも多めに用意してあるんだけど、それでもまだ3セットしか出てないし…。やっぱり全部入れるのは難しいみたい」
今も大きな声を上げながら必死に輪投げをしている人たち。
特賞のカウーモ(牛に似た魔物)のステーキには時間制限はあるが、食べ放題・グループ4名まで使えるという言葉が魅力的らしく、諦めきれない冒険者たちが一生懸命輪投げを続けている。参加賞の魔石の欠片も色々と使い道があるので、今回の景品は喜ばれているのだろう。
「芽衣ちゃんもやってみる?」
カウーモはまだ食べたことがないのでとても魅力的なお誘いだったが、芽衣は首を横に振った。
「面白そうだけど、この後航太さんのところを見てから屋台を始めようかと思って」
「そっか…。本当は遊んで行って欲しかったけど、これだけ人が並んでるから順番来るまで結構時間かかるからね」
苦笑しながら美月は云った。景品目当てなのか、思うように投げられなくて悔しい思いをしているからか、投げ終わったらまた列に並び直している人がいる。
「回数制限してないから何度でもチャレンジ出来るの。輪投げはいい訓練になるって云って、冒険者たちが張り切ってるの」
どうやら投げる力や集中力を鍛える訓練にもなっているらしい。もう少し輪投げを見ていたかったが、そろそろ移動しないと家に戻るのが昼過ぎになってしまう。
「来たばかりだけど、そろそろ行くね」
「分かった。また今度集まろうね」
別れ際にアンズ飴を数本渡し、美月に見送られながら芽衣は航太の店へと向かった。




