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助っ人の優真が来てくれたので、早速屋台での販売を始める。
「いらっしゃいませ~」
ここで屋台販売を開始したことを知ってもらうために、目の前の通りを歩いている人たちに向かって声をかけると、その声に気付いた数人が屋台へと近づいてきた。
近づいてきた人たちはテーブルに並べられている物をジロジロと見ていた。そしてそのうちの一人が不思議そうな顔をしながら訊ねてきた。
「これは今まで見たことがない物だが…置物か?」
飴でキラキラとコーティングされているアンズ飴が置物と思ったようだ。
「いいえ。これはアンズ飴といって、杏の周りを飴でコーティングしている食べ物です」
芽衣の回答に屋台に集まって来ている人たちが不思議そうな顔をしていた。
「飴?」
飴を知らない人たちに芽衣はもう少し詳しく説明する。
「この飴というのは、砂糖を煮詰めて作った甘い物です。それを杏の周りにコーティングしてあります」
そう伝えると、アンズ飴を見ていた人たちは「えっ!?」と驚いていた。
「砂糖を使っているということは、相当高いんじゃ…」
「キラキラしているし、こりゃ高そうで買えないな」
ジロジロと飴を見ていた人たちは高価そうなアンズ飴を諦めて、その場を去ろうとしていた。
(このままじゃお客さんがいなくなっちゃう。それに折角作ったのに、アンズ飴が大量に余っちゃう!)
内心慌てた芽衣は、そこで初めて金額を伝えた。
「えっと、アンズ飴は1本銅貨8枚。こっちの野菜の塩昆布和えは1コ銅貨2枚です」
「え? これが銅貨8枚? どうやら俺は聞き間違えたようだ…」
「俺も銅貨8枚って聞こえた」
「銀貨1枚の間違いじゃないの?」
屋台に集まって来た人たちはざわつき始めた。
「いいえ。アンズ飴は1本銅貨8枚。こっちの野菜の塩昆布和えは1コ銅貨2枚で販売しています」
「!」
芽衣が値段を伝えると、その金額が信じられないというように皆驚いていた。
ルスタと相談して値段を決めたが、それでもアンズ飴1本に800円は少し高い気がするので、購入してくれる人たちには少しだけ申し訳ない気がした。
(だってお祭りだと300円前後で販売してるし…)
けれどここで安く販売してしまうと、砂糖はそれなりに安く買える物だと思われてしまう可能性があるので、少しだけ高い金額で販売することになった。その分、塩昆布和えはお手ごろ価格にした。
本当はべっ甲飴も一緒に販売しようかと思ったが、初日の今日はどのぐらいアンズ飴が売れるのか知りたかったので、売れ行き次第では明日販売してみようかと思っていた。
「ほ、本当に銅貨8枚?」
「はい。お祭り価格で1本銅貨8枚です」
恐る恐る確認してきた人に芽衣ははっきりと答える。それを聞いた人たちは一瞬考えた後、次々に手を上げてアピールし始めた。
「それじゃ1本!」
「こっちは2本! あと野菜も2コ!」
「俺も1本買ってみよう」
「私も!」
我先にと押しかけてくる人たちに芽衣と優真は困惑しながら声を上げた。
「沢山用意してありますから、順番に並んで下さい」
芽衣の声を聞いた人たちは素早く列を作った。
「なんか…凄い」
揉めることもなく、自主的とはいえスムーズに列が出来たため、それを見ていた優真がボソッと呟いていた。
そのおかげで芽衣と優真は販売に徹することが出来た。
「アンズ飴と野菜で、銀貨1枚ちょうどです」
「アンズ飴と野菜が2つずつで…はい、銀貨2枚いただきました」
急に慌しくなったにも関わらず、優真も一生懸命接客してくれた。
そして最初に買った男性が、その場でアンズ飴を食べ始めていた。
「んっ! 甘い! …そして硬い!」
アンズ飴に衝撃を受けた男性が大きな声で叫んだ。
男性はルスタと同じようにバリボリとアンズ飴を食べ、その音も周囲に聞こえていた。
「…あの硬い飴をバリボリ食べるって凄い」
その様子を見ていた優真は感心していた。
そして次が順番だという二人の子供を連れた母親は、そのバリボリという音を聞いて不安そうな顔をしていた。
「あんな硬いのを子供たちは食べられるのかしら?」
不安そうな母親に、芽衣は話しかける。
「飴をある程度舐めて、薄くなってきたところで思いっきり齧ってもらえれば、お子様も食べられると思いますよ」
「そう?」
それでも不安そうな母親に、子供たちは「あれ食べたい!」と騒いでいた。
「ちゃんと残さず食べられる?」
「うん!」
子供たちはキラキラと期待した眼差しで見つめ、母親と約束をする。子供たちがしっかり頷いたところで、母親は注文をしてきた。
「それじゃアンズ飴を3本と野菜を2コ下さい」
「ありがとうございます」
商品を渡すと、母親は早速子供たちに1本ずつ手渡す。アンズ飴を受け取った子供たちはすぐに食べ始めた。
「本当だ! 甘くて美味しい!」
「やっぱり飴は硬くて噛めないね」
二人で感想を云いながら食べていた。
アンズ飴を買った人たちが店頭で食べ始めて騒いでいるからか、その騒ぎを聞いてどんどん人が集まって来た。
おかげさまで大量に作ったアンズ飴はどんどん売れ、野菜の塩昆布和えも口直しや酒のお供として少しずつ売れて行った。その売れ行き速度から、芽衣は追加分を作った方がいいかな…と考えながら販売を続けた。
そうして初めての夏祭りは慌しくも、とても楽しく過ぎて行った。




