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 色々な料理を夢中になって作っていたら既に日が暮れており、夕飯はリーシャの家でご馳走になることになった。

 料理のことはトランたちに任せ、芽衣は案内された部屋――以前芽衣が借りていた部屋で料理が出来るまでの間休んでいた。

 それでもやることがないので時間つぶしに異世界商店を見ていると、イルナから食事の準備が出来たと声をかけられた。

 イルナの案内で食堂に着くと、既にリーシャとソマリが座っていた。芽衣が慌てて席に着くとトランたちが作ったレッドボアと野菜の蒸し焼き、野菜とレッドボアの肉巻きが運ばれ、更にスープとパンがテーブルに並んだ。

 全ての料理が並ぶと、リーシャは嬉しそうに微笑んでいた。


「メイちゃん、今日は料理を教えてくれてありがとう。トランたち料理人も新しいレシピに喜んでいるし、僕たちも新しい料理を食べることが出来て楽しいよ」


「どちらもとても美味しそうだわ。メイちゃん、本当にありがとう」


 リーシャとソマリに感謝され、芽衣は慌てた。


「いえ。こちらこそリーシャさんとソマリさんにはお世話になりっぱなしですし、それに料理のプロではないので、味の自信もありませんが…」


 調味料の少ない中で、それなりに簡単に作れて美味しそうな物を作ったつもりだ。


(トランさんたちには好評だったけど、リーシャさんたちはどうだろう?)


 芽衣は不安を感じながらも、二人に美味しいと云ってもらえますように…と心の中で願った。


「さて、お礼はまた食べ終わった時にもう一度。では、冷めないうちに…いただきます」


 リーシャの挨拶でソマリと芽衣も食べ始めようとした時、メイドの一人が慌てて食堂に入ってきた。


「お食事のところ申し訳ありません。ギストル様がいらっしゃいました」


「え?」


 今日の食事は王様も一緒だったの?と思っていると、リーシャとソマリは酷く困惑していた。


「急に来るなんて…」


「せめて夕食前には連絡をいただきたかったわ」


 二人はそんなことを話しているので、約束もなしにやって来たのだろう。

 応接室で待たせておくか…なんて意見が出ていると、当のギストルはズカズカと食堂へ入って来た。


「よう」


 片手を上げて挨拶をしてくるギストルにリーシャは溜め息を吐く。


「連絡もなしに突然訪れて…。しかもこれから僕たちは食事なんだけど」


 折角の食事が冷めてしまうと文句を云うリーシャとは反対に、ギストルはニコニコとしていた。


「今日の食事はメイから教わったメニューなんだろう? 是非食べてみたいと思ったら我慢できなくて、やって来た」


 エッヘン!と胸を反らしているギストルにリーシャは呆れていた。


「だからって急に来るなんて…。今から慌てて料理を用意しなきゃいけない料理人たちのことも考えてくれ」


「…そうだったな」


 急遽一人分追加で作るとなると、トランたちは慌てて準備しなくてはいけない。そんなことまで考えていなかったらしいギストルは、リーシャに云われて少し反省したようだ。


「すまん…次からはちゃんと連絡する」


 一応反省したらしいギストルを見て、リーシャは急遽トランたちに一人分の追加を頼んだ。

 急な追加だったのにも関わらず、トランたちはまた料理が作れることを喜んでいた。

 そうして夕食の席にギストルも加わり、皆で楽しく食事をした。




 食事を終え、リビングで食後のお茶を飲む。


「それにしてもどの料理も美味しかったよ」


 残さず食べたリーシャは、ニコニコとしていた。


「ええ。私は野菜とお肉が一緒に食べられる肉巻きが気に入ったわ」


「ああ、どの料理も美味かった。今日食べたレシピを城の料理人たちにも教えて欲しい」


 幾ら王様といえども、料理人の知っている調理方法が焼くか煮込むだけなので、必然と同じメニューになっていく。毎回同じようなメニューで飽きてしまうが、折角料理人たちが作ってくれているので黙々と食べているそうだ。だが内心では「もう少し違う物を食べてみたい!」と思っているらしい。

 そこでリーシャから「芽衣が作った卵焼きが美味しかった」「今度レッドボアの肉を調理してもらえるよう頼む」などと聞いていたので、どんな風に仕上がるのか気になってしまい、つい突撃して来てしまったようだ。


「えっと…」


 これは芽衣が城へ行かなくてはいけないのでは…と困惑していると、チラリと芽衣の様子を見たリーシャが助けてくれた。


「メイちゃんは一般人だし、お店のこともあるから城に行くのは無理。それならメイちゃんから直接教えてもらったトランたちがもっと調理をしたいだろうから、トランたちでよければ明日の午後にでも城へ向かわせるけど?」


「うむ…。本当はメイから教わりたかったが仕方ない」


 リーシャの言葉にギストルは渋々と頷いた。

 それから暫らくは料理の…主に調味料の話になった。芽衣が「もっと色々な調味料があれば」と声を出してしまったため、ギストルとリーシャが困ったような顔をしていた。

 ルスタたちからも話を聞いているが、調味料の殆どは他国から仕入れているため、輸送費などがかかってしまい、どうしても高くなりがちだという。

 そこでユイオンでも栽培・作成が出来そうなハーブや塩の話をしてみると、ギストルが真剣に話を聞いていた。


「…確かにハーブなら育てられそうだな」


 ユイオンでは森でハーブを採取できるが、目的のハーブを探すのがとても大変なので、市場でも香辛料と同じぐらいの価格で売られている。

 それが農村などの空いている土地で栽培に成功すれば、ハーブの価格も下がるし、料理などのレパートリーも増えて行く。それに野菜や木材以外からの収入が増え、次第に人も村も豊かになっていくだろう。


「栽培するには、まず森からハーブそのものを持って来ないと増えないので、必ず根を残したまま持ち帰って来て下さい。そうすれば時間はかかりますが、自然と増えていくと思います」


「うむ、早速試してみるか」


「あとは…こっちに同じハーブがあるのか分からないんですけど、私の世界で使っていたハーブの種の一部をお渡ししておきます」


 異世界商店を起動し、バジル、ルッコラ、パセリ、タイムの種をそれぞれ1袋ずつ購入し、ギストルに見せた。


「これも料理に使えるハーブの種です」


「ほう…これらは初めてみるな」


 写真付きの袋をジッと見つめ、ギストルは目を細めた。


「無事収穫出来た際には、そのハーブを使ったレシピを教えますよ」


 芽衣がそう一言告げると、ソマリとギストルの瞳が輝いた。


「本当!?」


「え、はい」


 幾ら食べられると云われても、どの料理にどう使うのかが分からなければ、数年後には栽培することに飽きてしまうだろう。

 そう思って料理の話をしたのだが、何故か興奮しているソマリとギストルが身を乗り出していた。


「ねぇメイちゃん、このハーブは畑や森でないと育てられないのかしら?」


 取り出したハーブが気になるらしいソマリは、芽衣に訊ねてきた。


「いいえ。庭などでも育てられますよ」


「庭…」


 実際芽衣も庭で(青じそなど)育てていると告げると、それを聞いたソマリはすぐにリーシャと相談し始めた。


「うちの庭の一部を菜園にすることは出来るかしら?」


「隅の方なら目立たないからいいんじゃないかな?」


「そうね。早速明日にでもハーブを植える場所を確保しましょう」


「そうだね。料理に使う物だから、トランたちにも声をかけて皆で様子を見てもらおう」


 翌日、詳しい話を聞いたトランたち料理人の協力もあり、リーシャの庭の隅に立派なハーブ園が出来たらしい。




当初予定していた内容とは随分変わってしまいました(^-^;

いつの間にか皆食いしん坊になってしまって…

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