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料理回の後編です

「それじゃ次は…肉巻きを作ってみようかな」


「肉巻き?」


 聞いたことのない料理にトランは首を傾げる。


「はい。野菜をお肉で巻いて食べるんです」


 芽衣の説明を聞いて、料理を想像したらしいトランが顔を顰める。


「ほう。だが、肉が油っこくて食べるのが大変なんじゃないのか?」


「それは調理法を変えれば大丈夫です。今から作ってみるので、そこで思いついたことがあればすぐに云って下さい」


 早速鍋を用意してもらい、そこに水と塩を入れる。


(これだけだと下味が弱い気がする。家だといつも出汁か少しの日本酒を入れてた気が…)


 ぼんやりと調理方法を思い出してきた芽衣は、ここは思い切ってチャレンジしてみようと思った。


「あっ、お酒ってありますか?」


「エールかワインなら」


 見習いの1人が反応し、すぐに棚を確認しに行った。


「ワイン…白ワインは?」


「あります」


「それを少し使ってもいいですか?」


 トランが頷いたことで見習いが白ワインを取り出し、鍋の中に水と塩、そして受け取った少しの白ワインを入れてかき混ぜ、鍋を沸騰させる。


「水とワイン?」


 疑問に思っているトランに「お肉にほんのり下味を付けるんです」と答えた。

 本当ならここに出汁があればしっかり味を付けられるのだが、芽衣が欲しいと思っている出汁の材料はないので、ここにある物でそれらしく作る。


「その間に野菜を切っちゃいましょう。今回は人参とキャベツ、玉ねぎを細めに切ります」


 トントンと千切りにしていく。玉ねぎは辛味を抑えるため、切った後に水にさらした。


「玉ねぎを水に入れるのはなんでだ?」


 それを初めて目にする作業にトランは驚いていた。


「こうすると生で食べる玉ねぎの辛味を多少抑えることが出来るんですよ。でも長時間放置すると美味しくなくなるので、早めに取り出して下さい」


「なるほど」


 野菜を全て切り終えたタイミングで鍋が沸騰してきたので、レッドボアの肉を薄切りにし、それを鍋の中でしゃぶしゃぶと数回揺らして、すぐに皿の上に載せる。

 肉の水分を取りつつ、少し冷ましてから肉の中央に野菜を置き、くるくると肉を巻いていく。


「これで完成です」


 手早く4人分の肉巻きを作り、それを試食する。


「んっ、確かに肉にほんのり味がついているような…」


「あっさりとしていて、食欲のない時でも食べられそうですね」


「野菜もしゃきしゃきしていて、食感が楽しいです!」


 野菜には何の味付けもしていないが、元々生で食べられる食材なので、味付けをしなくても歯ごたえや食感を楽しむことが出来る。


「季節ごとに生で食べられる野菜をこうして細切りにすれば、また違った食感や味が楽しめると思います」


「そうだな…これからも研究する価値がある」


 どうやらこの料理も受け入れてもらえたらしい。

 その後もとにかく芽衣は見本として料理を作り続けて行った。

 レッドボアのガーリックステーキは薄切りにしたにんにくを油(聞いたところによるとひまわり油らしい)で炒めて香り付けをし、にんにくが焦げないうちに一度皿に取り出す。香り付けされた油で塩コショウをしたレッドボアの肉を焼き、最後に別皿に取っておいたにんにくを肉の上に置いた。

 試食をしてみると、これも好評だった。


「ガーリックの匂いが食欲をそそる」


「これも新しい調理法ですね」


「今回はレッドボアの肉でしたが、また別の肉でも同じように調理すれば美味しくなると思います」


 アドバイスをしつつ試食を終えると、また次の調理に取り掛かる。

 レッドボアの肉をミンチ状にし、そこに塩コショウ、玉ねぎと人参のみじん切りを加えてしっかりと混ぜ、形を整えた蒸し焼きにしたハンバーグも作った。

 それも好評だったので、是非ともトランたちには頑張って作り方を覚えてもらい、慣れてきたら自分たち流のアレンジをして、もっと美味しい物をリーシャたちに作ってあげてほしい。


「さて、これだけだと肉のみなので、野菜の付け合せとかも作ろうかと思います」


 幾らレッドボアの肉が大量にあるとはいえ、肉ばかりだと淋しいので、他のおかず…主に野菜が欲しかった。


「いつもお肉の時はどんなおかずメニューを作ってます?」


 芽衣が訊ねると、トランはスムーズに答えた。


「そりゃ…じゃがいもを焼いたり人参を焼いたりだな」


「味付けは?」


「味は塩だけだな」


 リーシャの屋敷に居た時はトランが云ったメニューだったので知っていたが、確認のために訊いてみた。


「毎回焼くだけ? 蒸し焼きには?」


「…したことがない」


 蒸し焼きと聞き、トランは何か思いついたようだ。


「そうか。野菜も蒸せばいいんだな?」


 思いついたことを早速試してみようと思ったのか、トランはすぐ傍にあった人参を切り始めた。


「あまり大きいと蒸すのに時間がかかるので、食べやすいサイズがいいかと…」


 芽衣が助言をすると、トランは「分かった」と頷きながら人参を食べやすい一口サイズのザク切り(よく見たら乱切り)にしていた。

 切り終えた人参は熱したフライパンに油を入れ、焼き目をつけから蒸し焼きにした。


「あっ、フタをする前に少しだけ塩をかけた方が…」


「おっとそうだな!」


 トランは慌てて塩を振ってから蒸し焼きにした。

 暫らく様子を見てからフタを開けると、ふわっと人参の甘い香りがしてきた。


「これで蒸し焼きが出来たと思います。試食してみましょう」


 芽衣の声でまたもや試食会が始まった。


「んっ、人参の中まで柔らかくなってて食べやすい」


 見習いの1人が驚いた声をあげる。その声を聞いた芽衣は頷き、他の野菜でも同じように蒸し焼きにすることが出来ると教える。


「他の材料…じゃがいもとかカボチャとか硬い野菜はこの調理法が出来ると思います。その際、お肉と一緒に野菜も蒸し焼きにすることが出来ると思います」


 芽衣のアドバイスを聞いたトランは少し考えた後、思いついたことを口にしていた。


「ふむ。同じ塩コショウの味付けをするのなら、フライパン一つで肉も野菜も蒸せる。こちらとしては料理を出すまでの時間が短縮され、尚且つ同時に温かい物が食べられる…そういうことか」


 肉は肉で調理し、野菜や魚もそれぞれ別々で調理するので、どうしても先に出来上がった物は冷めてしまう。けれどこの方法なら肉と野菜が一緒に調理出来るので、温かさを保ったままテーブルに並べることが出来る。


「そうです。その方法ならそれで1品完成ですし」


 いつも野菜は焼くか煮込むかしていたらしい。そこに新しい調理法が加われば、料理のレパートリーはどんどん広がっていく。


「あと野菜を炒めてもいいですよね」


「炒める?」


「はい。例えばじゃがいもと人参と玉ねぎなどを食べやすいサイズに切って、熱したフライパンに油を引いて、そこに切った野菜たちを入れて炒める」


 芽衣の説明を聞いていたトランは、首を傾げていた。


「? 焼くとどう違うんだ?」


「私も詳しくは分からないので予想になってしまうんですけど、焼くのは食材を極力動かさないで熱する方法だと思うんです。でも炒めるのは食材をかき混ぜながら熱していく方法だと思うんです」


「うむ…面白そうだ。それも試してみよう」


 こうしてトランと見習いたちがそれぞれ練習を始めた。

 時々アドバイスを求められながらも、楽しそうに調理をしているトランたちを温かく見守った。




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