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 リーシャたちに連れ出される前に、何とかレッドボアとグラスバードの肉をマジックバッグに入れることが出来た。これで保存状態を気にすることなく、料理に集中できるはず。

 イルナに案内され、早速キッチンへと向かう。リーシャの屋敷に居た時は、必要最低限の場所しか移動しなかったため(勿論メイド付きで)、今日初めてキッチンへ入る。


「トラン、メイ様をお連れしました」


「おう」


 イルナに呼ばれたトランという人が料理長なのだろう。キッチンにはトランの他に2人の料理人がいた。

 トランが芽衣の近くまでやって来たので、互いに挨拶をする。


「芽衣です。よろしくお願いします」


「トランだ。ここの料理長をしている。他の2人は見習いだ。よろしくな」


 ペコッと頭を下げると、トランはニカッと笑ってくれた。


「早速だが…この間教えて貰った卵焼きは美味かった」


「ありがとうございます」


 イルナがトランに作り方を教え、それを実践してみたそうだ。


「だからレッドボアの肉も何か新しい調理方法を知っているのかと思って、リーシャ様に声をかけてもらったんだ」


「そうだったんですね」


 確かにあの量では食べきるのは大変だ。


「早速で悪いんだが、何か教えて貰えるか?」


「はい」


 イルナは仕事があるということでここで別れ、芽衣はトランの許可を得てキッチンに入り、しっかりと生活魔法で全身や手を洗浄し終えてから、作業台へと向かう。


「あの、まずは今ある調味料や食材を教えていただきたいのですが…」


「おう。今ある食材はレッドボアの肉、人参、玉ねぎ、じゃがいも、キャベツ、グラスバードの卵、チーズとミルクと干物が少量…あとはパスタやパン、小麦粉や油とかだな」


 トランがスラスラッと食材を告げると、見習いの1人が調味料を教えてくれた。


「調味料は塩、コショウ、バジル、唐辛子、ガーリック…そんなところです」


 ふむふむと芽衣は頷く。


「いつもは肉を焼いて、塩を振ってるんですよね?」


「ああ」


 う~ん…と芽衣は考え、何種類かチャレンジしてみようと思った。


「美味しく出来るかは分かりませんが、何種類か作ってみましょう」


「おおっ!」


 何種類かという言葉にトランたちが騒ぐ。


「まずはお肉を1cmぐらいに切って…」


 そう説明してから、単位は日本と同じなのだろうか?と疑問に思ったが、芽衣の作業をトランたちが食い入るように見守っているので、なんとなく分かってくれるだろうと思った。


「そこに両面に塩コショウを振って、同じように小麦粉を少し振って…」


「肉に小麦粉も振るのか?」


 普通なら肉を焼くのに小麦粉を使ったりはしない。トランたちがそのことに衝撃を受けていると、「こうするとお肉が柔らかくなるんです」と芽衣は答えた。


(確かレシピサイトにそう書いてあったはず)


 小麦粉を振った後は肉を焼くが、その前に確認しておきたいことがある。


「チーズを少し貰えますか?」


「ああ」


 トランは冷蔵庫のような箱からチーズを取り出す。

 これは魔物が時々体内に秘めているという魔石を使った物らしい。全ての魔物が所持している訳ではないが、小さな欠片のような魔石は買いやすい価格で、大きな魔石は高値で取引されている。

 魔物によって属性も違い、火の魔石ならコンロや暖房器具などに、水の魔石なら冷蔵庫や井戸を作る際に使ったり…と様々な使い道があるらしい。

 その水の魔石を使った箱の中からチーズを取り出す。


「これでいいか?」


 差し出してくるトランに「使っても?」と聞くと、大きく頷かれた。


「それでは遠慮なく」


 チーズを受け取ると、それを薄くスライスし、さらに細切りにした。

 そしてフライパンを用意し、肉の脂身部分を油代わりに使う。牛脂のような感覚で思わず使ってしまった。


「なんだかいい匂いだな」


 脂を焼いているので、これだけでも美味しそうな匂いがする。

 フライパンが温まったところで、先程の小麦粉付きのレッドボアを焼き、火が通ってきたら細切りにしたチーズを乗せ、フタをして蒸し焼きにする。


「なんでフタをするんだ?」


 肉は焼き色が付いた物が美味しいので、いつもはジュワッと強火で焼いているらしい。


「こうして蒸し焼きにすることで、肉の柔らかさや旨みを維持して…じっくりと中まで火を通しているんです」


「なるほど」


「それでチーズが溶けてきたら出来上がりです」


 肉を確認するとチーズが溶けてきたので、火を止めて皿に盛る。


「レッドボアのチーズ焼きです」


「おおっ!」


 ふんわりとチーズの匂いが漂う。出来上がったチーズ焼きを包丁で一口サイズに切り、それをトランたちに差し出す。


「味見をしてみましょう」


 芽衣の言葉にトランたちは大きく頷き、チーズ焼きを手にする。


「いただきます」


 覚えている範囲で作ったので、本当に美味しいのか芽衣自身も不安だったが、チーズ焼きを口に入れると、柔らかい肉とトロッとしたチーズのおかげで噛みやすい。

 モグモグと噛み締めていると、同じように口をモグモグとさせているトランたちが目を見開いていた。


(もしかして口に合わなかった!?)


 思わず声をかけようとした途端、トランたちが「美味い!」と大騒ぎし始めた。


「こういう調理の方法もあるんだな!」


「蒸し焼き?にすると肉の脂も少ないし、何より焦げた部分がないのがいい!」


「チーズがトロッとして美味しい!」


 どうやらトランたちも気に入ってくれたようだ。


「レッドボアだけじゃなく、鳥のお肉でも同じように作れると思いますよ」


 アレンジレシピを告げると、トランは「それも美味しそうだ」と頷いていた。

 この反応を見る限り、芽衣の料理は受け入れてもらえそうだ。

 作れそうな料理はどんどん作ってみようと決めた芽衣は、早速次の調理に取り掛かることにした。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして、ここまで面白く読ませて頂いてます。 登場人物が気の良い人ばかりなのが安心して読めて良いですね。 [気になる点] ここで料理チート?かと思ったんですが、、、考えたら同郷の日本人に…
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