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 露店を丁寧に見てみたが、りんごは売られていなかった。

 果物を売っている店で聞いてみたが、「りんごの季節じゃないからね」と云われてしまった。つい日本のようにいつでも手に入る果物かと思っていたが、しっかりと季節限定商品になっていた。

 並んでいる果物を一種類ずつ鑑定して、似たような物を探した結果、りんご飴の代わりになるような物は杏とスモモぐらいだった。


「アンズ飴なら屋台にもあるし、アンズ飴を作ってみよう」


 芽衣は試作用に杏を6コ買い、家に帰った。


「飴はお砂糖と水を煮詰めて出来るはず」


 早速小鍋に砂糖と水を入れて煮立たせる。その間に杏を水で洗い、しっかりと水気を拭き取る。

 勢いをつけて割り箸を杏に刺し、煮詰まった鍋の中身をしっかりと絡める。飴が他の物とくっつかないようにクッキングシートを皿の上に敷き、暫らく放置する。これで飴が固まれば完成のはず。

 残りの中身もクッキングシートの上に流し、薄く伸ばす。そのまま捨ててしまうのは勿体無いので、こうすればべっ甲飴のようになると思った。

 その間に鍋を洗ったり、部屋の掃除をしたりして過ごし、全てを終えた頃に確認してみると、飴はちゃんと固まっていた。


「それじゃ試食」


 ドキドキしながらアンズ飴を一口。


「んっ…」


 飴がしっかり固まっていてカリッと音がする。


(飴はこのぐらいの甘さと固さでいいかな)


 もぐもぐと口を動かし、今度は杏の果肉を味わう。


「ちょっと杏がすっぱいけど、その分飴をもう少しだけ甘くすればいいのかな」


 食べかけのアンズ飴を置いて、早速次の試作品を作ることにする。今度は砂糖を少し多めに鍋に入れて煮詰め、杏と絡める。

 再度時間を置いて試食してみると、今度は丁度いい甘さと酸味を楽しめるようになったと思う。


「ん。これでやってみよう」


 他の人の意見も聞きたいので残りの杏を全部使ってアンズ飴を作った。作り終えた物は一つずつラップに包んでマジックバッグに入れた。




 次の日、また商業ギルドへと向かった。今日はちゃんと屋台の申請をするためだ。

 ギルドに入ると、運良く仕事待ちのエディルを見つけて「屋台の申請をしたい」と伝えると、すぐにルスタの部屋へ案内された。


「で、嬢ちゃんも屋台を出したいと?」


「はい」


 相変わらず忙しそうなルスタだが、ちゃんと芽衣の話を聞いてくれる。


「販売する物は決めてあるのか?」


「はい。アンズ飴を販売しようかと」


「アンズ飴?」


 聞きなれない言葉にルスタは不思議そうな顔をしていた。


「名前の通り、杏を飴でコーティングした物です」


「へぇ…」


 芽衣は説明するが、飴を知らないルスタとエディルはいまいち理解出来ないらしい。


(これは実物を見せた方が早い)


 マジックバッグからアンズ飴を2つ取り出した。


「これがアンズ飴です。試作品ですが、良かったらどうぞ」


 ラップを外してエディルが用意してくれた皿に置いた。

 飴でコーティングされた杏はキラキラツヤツヤしており、ルスタとエディルは「綺麗だな」と見惚れていた。


「杏が少しすっぱいので、飴と一緒にガブッと食べた方が美味しいかもしれません」


 芽衣の助言を受けて、ルスタは勢い良く飴をガリッと噛んだ。

 バリボリバリボリ…。

 物凄い音がしているので、ルスタの歯はとても丈夫なのだろうと思った。

 それを見ていたエディルもガブッと噛んで、アンズ飴を一生懸命味わっている。


「ん…確かに甘さと酸味が同時に味わえて面白い」


「棒があることで手を汚さなくて済むので、食べ歩きでも問題なさそうですね」


 二人の反応からして、アンズ飴はそれなりに売れそうだ。


「あとアンズ飴を作る時に残った飴が…」


 適当に切ったので、サイズがバラバラのべっ甲飴を差し出す。


「これは残った飴なので、そんなに多く売り出せないと思うんですけど…」


 べっ甲飴を見たエディルは目を輝かせていた。


「この飴だけでも販売してくれるんですか! 絶対人気が出ますよ」


 どうやらエディルは甘い物が大好きなようで、べっ甲飴を凝視している。


「良かったらこちらもどうぞ」


「ありがとうございます」


 べっ甲飴を受け取ったエディルはとても喜んでいた。

 それを見ていたルスタは「う~ん…」と何やら唸っていた。


「ルスタさんも良かったらどうぞ」


 慌てて芽衣は声をかけるが、ルスタは首を横に振った。


「いや、俺はやめ……そうだな、後で職員たちに配るか」


 止めておくと云いかけて、職員たちのことを思い出したルスタは、新たに受け取ったべっ甲飴をエディルに手渡した。


「そうじゃなくて、こう甘い物を食べてると、しょっぱい物も欲しくなるな」


「しょっぱい物ですか…」


 しょっぱい物と云われてパッと思い浮かんだのはポテトチップやフライドポテト。どちらも油で揚げる物で、少量を作るのならいいが、大量に作るとしたら常に鍋の傍にいなくてはいけない。

 鍋にばかり注意していて、他のことが出来なくなってしまうのは勿体無い。


(それだったら!)


 ハッと思い出し、芽衣はマジックバッグから1つのタッパー型保存容器を取り出した。


「これはどうでしょう?」


「ん?」


 保存容器のフタを開け、ルスタに差し出す。


「これは…野菜か?」


「はい。人参やキャベツなどを塩と海草で漬けた物です」


 本当は塩昆布で和えたのだが、昆布は馴染みがないかもしれないので、海草と説明することにした。


「塩か」


 そう呟いてルスタは塩昆布和えをフォークで刺し、パクッと食べた。


「…ん、ちゃんと野菜に塩の味がして美味いな」


「さっぱりしていて、口直しにもいいですね」


 モグモグと塩昆布和えを食べたルスタは、アンズ飴と塩昆布和えを屋台で出すことを承認してくれた。

 そしていつものように値段を決め、あとは夏祭り本番までに食べ物を用意しておくだけとなった。




7/19

タッパー型保存容器に変更

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