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「そういえばこの間夏祭りの話を聞いたけど、詳しい話を商業ギルドに聞きに行ってみようかな」


 屋台を出す出さないにしても、夏祭りがどのような物なのか知りたい。

 いそいそと戸締りを済ませて商業ギルドへと向かう。

 外へ出て暫らくすると、夏が近づいているからか外の気温が少し高いと感じる。


「ここがどのぐらいの暑さになるか分からないけど、もしかしたら夏用の商品が売れるかもしれない」


 100円ショップには季節商品なる物が売られていた。それを販売してみてもいいかもしれないと思いながら歩いていると、あっという間に商業ギルドへ辿り着いた。

 いつ見ても立派な商業ギルドは、今日も多くの商人たちで賑わっていた。

 早速エディルを探そうと辺りを見回していると、接客中らしいエディルと目が合った。


(エディルさんのお仕事の邪魔にならないように…隅で待っていよう)


 申し訳なさそうな顔をしているエディルにニコッと笑い、芽衣はロビーの隅へ移動する。

 暇なのでロビーの様子をボーと眺めていると、仕事を終えたエディルが近寄ってくる。


「お待たせしました」


「こちらこそいつもすみません」


 エディルの仕事は案内係なので、その仕事を中断させてしまって申し訳ないと思う。


「それで今回もギルマスに?」


「えっと…夏祭りの屋台についてお話を聞きたくて」


「ああ。それなら私がお相手でも構いませんか?」


「はい。よろしくお願いします」


 忙しいルスタにわざわざ面会するのも申し訳ないので、エディルの都合が合うようならお願いしたい。

 応接室を用意するというエディルに、今日は簡単な話を聞くだけなのでそこまでは…と云うと、その場で立ち話をすることになった。


「まず夏祭りですが、夏の暑さに負けず、暑くても元気を得るために毎年ササの月の20日と21日の2日間で開催されます」


 ササの月というのは、日本で云う7月のことだ。

 ラスターニャにもいちおう暦があり、1月ならハツの月、2月ならニイの月…といったように、分かりやすい呼び名になっている。ちなみに1年は12ヶ月で全ての月は32日らしい。


「夏祭りには各地から大勢の人たちが集まり、暑さを吹き飛ばすような催しもあります。王都のあちこちに屋台も設置され、一般人でも申請すれば屋台を出すことが出来ます」


 ここら辺はこの間美月たちから聞いたものと同じだ。


「屋台は基本的に自分の敷地…つまり家を持っている人なら、家の前に屋台を設置してもらいます」


 店を持っていればその店先で、近隣からやって来た人は露店で使っている広場や門付近などの場所を提供するらしい。


「その屋台というのはどんな物なんですか?」


 思わず夜店の屋台を思い浮かべてしまう。


「屋台というのはあくまでも我々の呼び名であって、実際は用意したテーブルの上に販売する物を並べてもらうぐらいです」


「即売会みたいな感じかな」


 イメージ的にそう思った。


「その際の注意としては、地面に商品を置いての販売は絶対禁止。すぐにテーブルを用意してもらうか、対応出来ない場合は撤退してもらうことになります。これはいつもより王都内に人が増えて、商品の紛失を防ぐためです。…まぁテーブルに置いても落としたりしたら紛失してしまうのですが…」


 それ程人が多くなるらしい。


「そのテーブルはどうすればいいんですか?」


「テーブルは用意出来る人は各自で用意してもらい、用意出来ない人はギルドが土魔法を使える人を派遣するので、即席で作ってもらえます」


(魔法でテーブルを作ってもいいんだ。今度チャレンジしてみよう)


「そこで売る物は自由ですが、事前に販売物、営業時間を申告してもらいます」


 お祭りだからと販売価格を上げたり、隠れて違法な物(武器や爆発物)を売ったりする店もあるという。そうならないためにも申告時に厳しいチェックをしているらしい。

 営業時間もガッツリ売りたい人は2日間みっちりと。遠方から参加する人なら1日の数時間だけ…といったように、自分の好きなスタイルで営業できるようだ。


「それと屋台を出すのなら、事前に銀貨3枚を支払ってもらいます。所謂税金です」


 銀貨3枚は日本円でいう3,000円。それでも売るものが多ければ利益の方が多くなるだろう。


「大まかな説明はこのぐらいです。…ところでメイさんは屋台を出しますか?」


 ここまでしっかり話を聞いているので、エディルは芽衣が屋台を出すと思っているようだ。


「今はまだ検討中です」


 まだはっきりとは決めていないのでそう答える。


「そうですか。もし屋台を出すようならササの月が始まる前までに申告して下さい」


 ササの月まで残り10日。それまでに決めなくてはいけない。


「分かりました。お忙しいのに色々ありがとうございました」


「いいえ。また分からないことがあれば、いつでも訊ねて下さい」


「ありがとうございます」


 いつまでもこの場にいてはエディルが仕事に戻れないので、早々にギルドを後にする。

 夏祭りについての説明は聞けたので、歩きながら屋台について考える。

 もし屋台を出すとしたら、今店で売っている物をそのまま売るよりも、飲食物を売った方がずっと祭りっぽく感じる。


「飲食にするとして…材料の仕入れが問題かな」


 異世界商店で夏祭り用の材料を大量に仕入れると、店を開けられない、もしくは品薄状態で開店することになる。

 これから夏祭りに向けて人が集まってくると聞いているので、折角遠くから来たのに買えなかった…なんてことにならないよう、店の方の商品は少しでも確保しておきたい。


「どうせだったら、ここで手に入る物を使いたいよね」


 屋台といえば、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、綿飴、焼き鳥、りんご飴…といった屋台を思い浮かべる。

 お好み焼きや焼きそばはソースやマヨネーズなどの調味料や食材を異世界商店で仕入れないと作れないので却下。無くてもそれらしいのは作れるが、どうせだったら美味しい物に仕上げたい。

 綿飴は機械がないので作れない。焼き鳥は他の店で串焼きを販売しているので、止めておく。りんご飴はりんご以外の果物を使っても出来そうだ。

「りんご飴を候補にしておいて、あとは露店を見て決めようかな」

 早速芽衣は露店のある広場へと向かった。




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