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戦闘シーンがあります
ゆったりと昼食を食べ終え、芽衣とリーシャは再び離れた草原へと移動する。
「それじゃここからは実際に魔物相手に戦ってみよう」
「はい」
拳を思わずギュッと握ってしまう。余計な力が入っている芽衣に気付いたのか、リーシャはもう一度説明してくれた。
「あっ、魔物は良い魔物と悪い魔物がいるんだけどね、向こうから攻撃してくる魔物だったら反撃していいよ。けれど魔物から攻撃をしてこない場合は攻撃しないで」
一番分かりやすく云うと…やられたらやり返す方式だと芽衣は思った。
「分かりました」
リーシャの説明を受けて芽衣は頷く。
そして魔物を探すために付近を歩き回る。ここで遭遇する魔物はスライムかフォレストラビットで、どちらも即攻撃してくるような魔物ではないし、仮に攻撃されたとしても少し痛みを感じるぐらいらしい。
いつ魔物と出会うのかと緊張しながら進んでいると、ついに初めての魔物と遭遇した。
「グウォォ!」
大きな鳴き声と共に遠くからドドドッと勢い良く突進してくる魔物は、明らかに敵意を持ってこちらに向かって来ている。
そしてその大きな魔物はこの草原では滅多に現れないレッドボアだった。
「メイちゃん!」
レッドボアが現れたことにリーシャは驚きながらも即座に攻撃態勢に入る。
「滅多に出ない魔物なんだけど…」
そう云いつつリーシャは足止めする時間を稼ぐため、魔法で土を高く盛り上げて即席の壁を作るが、勢いのついているレッドボアはそれを簡単に壊してしまう。
「うわっ…」
分厚い壁がドゴォンと音を立てて崩れ、芽衣は思わず引いてしまう。
「メイちゃん!」
リーシャに声をかけられ、芽衣はハッとする。折角リーシャが魔法を教えてくれたのだ。強い魔物が出て来たことは予想外だが、攻撃魔法の実践をしなくてはっ!と心を奮い立たせ、先程まで練習していた火の魔法を使う。
「えいっ!」
魔法を放つとボッと燃えるが、それよりもレッドボアの移動速度の方が速く、何度繰り返しても中々命中しない。
(練習してないけど、火の玉が有効かな)
芽衣はしっかりと火のボールのイメージをし、再び「えいっ!」と魔法を放つ。
すると火を纏ったボールがレッドボアに向かっていき、ボフッと命中する。
「グルゥ!」
魔法が命中したレッドボアは突然飛んで来た火にビックリし、それでもまだ勢い良くこちらに向かってくる。
「もう一度!」
再び芽衣は火のボールを放つが、中々致命傷にはならないようだ。
(もう少し威力を上げないと…)
よく命中後も燃え続ける火をイメージし、「えいっ!」と掛け声と共に魔法を放つ。
「グォォ!」
今度は命中後も火は少し燃え続け、一部分毛が焦げたようだ。
(ど、どうしよう)
同じことを繰り返していけば、火傷をさせるぐらいにはなるかもしれない。けれどそこまでには相当時間がかかる。
レッドボアは攻撃魔法を放つ芽衣をターゲットにしたようで、一直線に走ってくる。
「メイちゃん!」
このままでは芽衣が危険だと感じたリーシャは即座に風の魔法を連続で放ち、風の刃でスパスパッと足を斬り、レッドボアの速度が落ちたところで風の魔法で首を斬った。
ドォーンと大きな音を立ててレッドボアは倒れ、暫らくはピクピクと痙攣していたが、その後完全に動かなくなった。
「メイちゃん大丈夫!?」
レッドボアが完全に動かなくなったのを確認し終えたリーシャは、すぐにレッドボアをマジックバッグに入れ、慌てて芽衣へと駆け寄る。
「は、はい」
初めて出会った魔物は中々魔法が効かず、かなりの強敵だった。
「まさか初めての魔物がレッドボアとはね…」
「魔法も中々効かなくて、とても強かったです」
芽衣が感想を告げると、リーシャは苦笑していた。
「そうだね。レッドボアは素早いし、突進してくるから攻撃威力も上がるしで、駆け出しの冒険者にはキツイ魔物なんだよ。普段は森にいるんだけど、たま~に草原に現れたりして他の魔物や土地を荒らしているんだ」
どうやらそんなレアな魔物と出会ってしまったらしい。
「どうする? もう少し魔法の練習をする?」
いきなり強い魔物と遭遇して、芽衣の気持ちが折れていないか、リーシャは確認してくる。
このまま魔法の練習を継続するか悩んだが、折角リーシャが付き添ってくれているので、もう少し頑張ってみようと思った。
「はい。もう少し頑張ってみます」
「そう。無理はしないように」
芽衣が気合いを入れると、リーシャは優しく微笑んだ。
それから魔物を探しつつ、魔法のイメージの練習をする。
そうやって散策をしていると、草の茂みからピョコッと魔物が現れた。
現れた魔物は鶏に似た大きな鳥で、リーシャに云われた通り暫らく様子を窺った。
「ココココケー!」
鶏のような鳴き声を出しながら、芽衣に向かって突進してくる。
(これは攻撃していいってこと?)
攻撃をしに来ているのか、芽衣に近づきたいのか分からない。
「メイちゃん!」
リーシャの強い声にこれは攻撃していいのだと判断した芽衣は、慌てて魔法を使う。
「えいっ!」
先程のレッドボアと同じように火の玉ボールの魔法を使う。それがボシュッと音を立てて大きな鳥に当たる。
「コケケー!」
ボールが当たった次の瞬間には顔がボッと火に包まれ、大きな鳥は驚いた声を上げてその場を周り始めた。
「コゲェー!」
魔法は持続しているらしく、鳥の全身を炎が覆う。
「コゲゲェェ!!」
全身火だるまになった鳥は大きな悲鳴を上げて、ドタバタとその場を周っていたが、暫らくしてドタンッと横に倒れた。
「倒した?」
ドサッと倒れた鳥に疑問を抱きながらそっと近づく。するとすぐにリーシャが近づいてきて、芽衣を制した。
「僕が確認するから」
そう云ってリーシャは倒れた大きな鳥を確認した。
「…うん。ちゃんと倒せたね」
倒せたということを聞いて、芽衣はホッと息を吐く。それと同時に先程のレッドボアはレアというだけあって相当手強かったが、この大きな鳥はやけにあっさりと倒してしまった。
何とも云えない気持ちで立ち尽くしている芽衣とは違い、手馴れているリーシャは倒した鳥をマジックバッグに入れている。
「その鳥はどうするんですか?」
「ん? 後で解体して、素材とか肉とか使える部分を貰うんだ」
そういえば露店でも魔物の肉が売られている。解体した物を売り出しているのだろう。
(解体するなら火魔法よりも土とか風魔法の方がいいのかな)
素材や肉を回収するとなると、状態が綺麗な方がいいはずだ。
「レッドボアの分も含めて、後でメイちゃんにも渡すからね」
「ありがとうございます」
肉は食べられるから、分けてもらえることは素直に嬉しい。
「それじゃもう少し見回りをして、夕方前には帰ろう」
「はい」
その後草原を散策したが、魔物と遭遇しても向こうから攻撃してくる魔物はいなかった。
こうして芽衣の初めての魔物との戦いは無事終わり、火以外の魔法の強化もしていこうと心に決めた。




