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張宝

劉備と曹操の様子を見て、朱儁は笑いながら、


「おお、二人は知り合いか。ならば話は早いな」


と言って、おもむろに地図を広げた。


「これは、今我らが戦っているこの頴川の地図だ。張宝軍はこの崖に挟まれた小高い丘に、張梁軍は平地に陣取っている。我らの目標は、これらを打ち破り、二人を討つ事である。」


朱儁がここまで説明すると、曹操が口を開いた。


「戦っているうちにわかってきたことですが、この二人の軍は綿密に連携しています。一方を攻撃すればもう一方から援軍がくる。まるで我らの襲撃を読んでいるかのように・・・」



「伝令での連絡を取り合うにしては、あまりにも対応が早い。不思議なものだ。奴らの使う奇跡とやらも、あながち嘘ではないのかもな。」


皇甫嵩が皮肉混じりに言った。


「で、あればこちらも連携するのが良いかと」


劉備が提案をすると、朱儁は手を叩いた。


「そうだ!その為に、今日皆をここに呼んだのだ。ワシと劉備殿、皇甫嵩殿と曹操殿で当たってもらおうかと考えていたが・・・二人が知り合いならば、連携も取りやすかろうし二人で当たってみるか?」


「兵数が少なすぎます」


「ワシらの兵をいくらか貸そう。それでどうだ?」


「わかりました。曹操殿と二人、力を合わせて敵に当たります。」


「よかろう。頼むぞ。」


こうして、俺達は張宝と当たることになった。


「話には聞いていたが、玄徳が参戦していたとはな。」


「いやいや、俺も驚きだよ。孟徳殿が味方なら、怖いものは無いな。」


「ふふ、そう言ってくれるとありがたいな。二人で漢の敵を討ち滅ぼそうではないか。」


話す二人の後ろで、俺はずっと黙っていた。というのも、曹操の話す内容が、明らかに「奸雄」のそれでは無いからだ。


てっきり漢王朝のことなど本心ではどうでもいいのだと思っていたが、おそらくそうではない。この男は、本気で漢王朝を建て直そうとしているのだ。


「そうそう、玄徳殿の見事な剣を真似して、俺も剣を造らせてみたぞ。」


「おっ、そりゃ気になるな。」


「二本造らせた。一本は「倚天」もう一本は「青紅」だ。見事だろう?」


「こりゃ、なんでも切れそうだな・・・」


「何度も命を救われたよ、この剣には。おっと、敵が見えてきたな。」


崖の間、その向こうに張宝の軍勢が見える。

見間違いでなければ、その上に人が浮いている。まさかあれは・・・


「「滅びゆく漢に縋る愚か者共よ。地公将軍が、貴様らを消しに来てやったぞ。」」


凄まじい大音声が、崖の向こうから聞こえてきた。こりゃ、張飛でも出せるかどうかわからんな。

後ろを振り向くと、やはり張飛が歯ぎしりをしていた。


「俺よりでかい声を出せるヤツがこの世にいたとは・・・」


「益徳、そこで対抗心燃やさなくていいからね?」


最近は張飛に突っ込むのは飲み友達でもある俺の役目になっている。正直ちょっと怖い。


「・・・玄徳殿。どうあたる?」


「まず真正面からぶつかってみねえとわからんだろ。突撃はせず、相手の出方を見ようぜ。」


「俺も同じことを考えていた。では実行するか。」


軍が張宝らを守る崖に近づいた瞬間である。凄まじい風と地響きが俺たちに襲いかかった。


「ぬうっ!?」


「これは・・・!」


「「・・・貴様ら如きでは、この私に近寄ることすらできんぞ!」」


しかも、その風に乗って凄まじい勢いで矢が飛んでくるのだ。


「全軍散開!矢の届かない所まで下がるぞ!」


被害を蒙りながら逃げる俺たちの耳には、張宝の高らかな笑い声が、まるで悪夢のように聞こえていた。


俺達は、少し離れたところに陣営を築いた。張宝軍は何故か追撃してこなかったので、完全な硬直状態となって数日が過ぎた。


俺は、劉備の宿舎を訪ねることにした。


「玄さん、お邪魔するよ・・・って、徳然と曹操殿もいたのかい。」


「おう、いるぞ簡雍殿。」


「お先です、憲和殿。」


「よう憲和。今、張宝を打ち破るための作戦を建てていたところだ。参加してくれ。」


「あいよ。」


俺は長椅子に寝転がり、軍議に参加することにした。こうすると頭が冴える気がするのだ。決して、座りながら難しい話をするのが面倒くさい訳では無い。ほんとに。


「さて、張宝を倒す策を練る為に、今の状況について整理しとくか。徳然、頼むぜ。」


「はい。私達は今、張宝軍と対峙しています。数は互角でしたが先日の攻撃でこちらが少し減っています。」


「ありゃ凄かったな。どうにかしないと被害が大きくなるだけだ。」


「ええ。これは私の仮説ですが、張宝は崖と崖の間に自然に吹く風を利用しているものと思われます。」


「それを術の力で増幅させている訳か」


「おそらくは。」


確かに、彼らの使う術の大元が南華老仙である以上、必然的にそうなるか。


にしても、あの一瞬で術の本質を見抜くとは。徳然の洞察力には感嘆の一言だ。


「問題は、これを撃ち破るためにどうしたらいいか、だねえ」


「・・・皆さん、私に策があります。聞いていただけますか?」

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