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牽制したいツンデレ弟

週末、私は大樹くんの駅の最寄駅で待ち合わせの20分前について化粧室で鏡を見ていた。


鏡の中のわたしは、頑張ってメイクした甲斐もあって、いつもより少し大人っぽい、はず。


服も持ってた中で1番似合う色のニットにした。

下は迷ってショートのキュロットに厚手のタイツで、靴はハイカットのスニーカーにした。

コートはどうしても寒くていつも通りのモコモコのやつ。

髪は散々迷って、結んだ。

可愛いって言ってくれたし。


腕時計を見ると10分前になっていたので、化粧室を出て改札に向かう。

なんと改札の向こうにもう大樹くんが立っていて、私の姿を見つけて手を振ってくれている。


フードが大きいタイプのパーカーに、少しブカっとしたブルゾンを重ねていて、片手を寒そうに手をポケットにしまっているのが冬の弟味を感じで良いです!と心の中で感謝する。


「ごめん!お待たせ!」

「いや、全然まだ早いし。」

「実は早く着いててトイレの鏡で身だしなみチェックしてた…」

「あ、そうなんだ。」


大樹くんは少し離れてから、私を上から下まで見る。

緊張するからやめてほしい。


「大丈夫!むちゃくちゃ可愛い。」

「…ありがとう。やめてくれ。」

「なにそれ?」

「嬉しい気持ちと、耐えられない気持ちが、」


「へぇ〜、…あ!やろうと思ってたこと忘れてた。ちょっと待ってて。あ、でもここだとさすがに人目がさらに耐えられないのかな?」


何の話か分からないことを言いながら、大樹くんの指示により駅の斜め向かいの公園の物陰に移動させられる。


「ここに居てね?」

「?…うん。」


大樹くんが、どこかに行ってしまったと思ったら、すぐに現れて私のもとに走ってくる。


そしてそのままぶつかるのでは?!という勢いで近くまできたら、なんとギューっとハグされた。


「な?!」


そんなにすごい身長差はないはずなのに、包まれている感がすごい。


「友花ねーちゃん、これ弟にして欲しかったんでしょ?」


顔が大樹くんの服に埋まってて、大樹くんの匂いを嗅ぎながら、耳元で大樹くんの声がして、もう全身が心臓化してて、五感がおかしくなる。


確かにお姉ちゃんのもとに走ってきた弟がギューっと抱きつくのは羨ましかったけど、確かにそうだけど。


「弟なのに、なんかいかがわしい〜!なんで?!」

「難しいな、弟。今は弟を感じさせようとしたのに。」


大樹くんはそのまま弟の挙動について、私を抱きしめたまま思案するもんだから私はお家に行く前に大汗をかくはめになった。



「ただいま〜」

「お邪魔します!」


大樹くんのお家はマンションの3階だった。

玄関を開けて、ご挨拶をすると、大樹くんのお母さんが笑顔で出迎えてくれた。

「ゆっくりしていってね!」

お母さんはそういうと奥に居なくなってしまい、慣れない環境に2人きりで少し緊張する。


「兄貴は、たぶん部屋にいるけど、…見たい?」

「いや!今はいい!呼ばせても何も面白い話できないし、何かの偶然で見れたらそれでいい!」

「だよね、俺も弟を見せるってよく分からんし。たぶん兄貴を前にしてもそんな変わらないよ?」

「それでいいの、なんというか関係性の空気感みたいのが好きだから。」

「分かるような、分からんような。」


首を傾げつつ、大樹くんの部屋に案内される。


部屋はとてもシンプルで、勉強机、椅子、スリムな本棚、ベッド、ポールハンガー、以上!って感じ。

唯一の装飾?にバレーボールが本棚の上に置いてある。


「わぁ〜、めちゃ大樹くんの香りがする!」

「え、俺ってそんな体臭濃い?」

「いや?クラスの男子ほど濃くはないと思うけど。」


なぜかドアノブを閉めていた大樹くんの動きが一瞬固まる。


「……え、クラスの男子と匂い分かるほど距離近いことあるの?」

「いや?なんか、男子って結構匂い濃い人多くない?隣の席とか、すれ違う時とか。話す時距離近い人とかもいるし。」


「…やっぱり教室の中まで送ればよかった…。」


「え?」


低い声で小さく呟かれた声が聞こえずに聞き返すが、大樹くんはなんでもなさそうな顔をしている。


大樹くんがクローゼットからクッションをだしてくれて、2人でベッドを背もたれにしてクッションに並んで座る。


「今度また鹿野さんの教室行きたいなーって」


「うちのクラスに誰か友達いるの?」


「まぁ、男バレの桑野いるけど、違うよ。鹿野さんに会いにだよ。」


「ひえぇ…」


「え、嫌だった?」


「いや、嬉しいけど、恥ずかしい。」


私は大樹くんの積極的な態度について、なんとなく思っていたけど聞けなかったことを勇気を出して聞いてみる。


「大樹くんは、やっぱり、私の前にも、誰かと付き合ってたことあるの?」


「え?…やっぱり?いや、ないよ!鹿野さんがはじめてだよ!」


「なんか、すごく慣れてるというか、私には、は、恥ずかしくてとても出来ないようなことをさらっとするから…」


「俺なら、ねーちゃんと呼ばれる方がよっぽど恥ずかしいと思うけど…。いや、俺は緊張する余裕すらないだけだよ。」


「…緊張する余裕?」


意味が分からず首を傾げると、大樹くんは少し目を背けて、立てた膝に顎を乗せてため息をつく。薄ら顔が赤い気がする。


「はじめから必死なの分かると思うけど、振られるくらいなら弟になってでもチャンスを狙うくらい、俺は鹿野さんと付き合いたくて必死なの。」


そのまま膝に顔を伏せてしまう。

おお、耳が赤い!

か、かわいい…。


「しかも弟として近くにいると、すぐ鹿野さんに弟らしさの方探そうとしてくるから、俺の方はちゃんと男として見てもらうためには恥ずかしがってる暇はない。」


少し顔を上げて、ちょっと上目遣いで睨まれて、わたしは慌てて赤くなった耳から目を逸らす。

赤い耳かわいいなんて思ってませんよと。

上目遣いの睨み、ツンデレ弟味嬉しいなんて思ってませんよと。


「必死ついでにお願いするけど、友花って呼んでもいい?」


「うん!も、もちろん!」


恥ずかしいけど嬉しくて、くすぐったいのを我慢するみたいな変な顔になってると思われる私を、大樹くんはジーッと見てくる。


「さらについでにさ、今度は弟じゃない方で抱きしめてもいい?」


恥ずかしすぎるけど、嫌じゃないし、大樹くんも頑張ってくれているのが分かったら、私も頑張らねばと頷く。


「…も、もちろ」


最後まで言う前に、気がついたら大樹くんの香りのする腕の中に包まれていた。


緑が深いけれど柔らかい草木の茂る居心地のいい森みたいな、好ましい香り。


恐る恐る、私もだらんと垂れていた手を大樹くんの背中に回してみる。


そしたら思った以上に骨とか、筋肉とか、固くて、大きいし、広いし。


やっぱり、男の子なんだな。


少しだけ身体を離したら、お互い至近距離のまま目が合う。

瞳の中の気持ちを探り合うように見つめ合っているうちに、大樹くんの顔が少し近づいた。


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