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リアル兄弟

コンコンコン


2人で大きく肩を揺らしてビクッと固まる。

私はそのまま慌てて半歩分くらい身体を離す。


「大樹〜、ちょっといい?」


男の人の声がする。

もしや、と思って大樹くんを見ると、めちゃくちゃ機嫌悪そうな顔をして


「兄貴だ。」

と、呟くと、扉に行き、少しだけドアを開けた。


「何?」

「え、彼女来てんでしょ?ちょい挨拶しようかと。」

「いや。…あー、でも、挨拶なら。」


大樹くんがドアはそれ以上開けないまま、私に「今大丈夫?」と確認するので、すぐに頷いた。


大樹くんが諦めたようにドアを開けると、大樹くんと、男の人がニコッとした笑顔を向けてくれる。

笑った顔は大樹くんと表情が似てるけど、全体的にはそんなに似ていない。


「大樹の兄の広樹だよ!よろしくね!」


「はい!」


「おー、元気!いいね!大樹あんま慣れるまで喋らないかもだけど、悪いやつじゃないから、よろしくね。」


「え?あ、はい…。」


(なるほど、やっぱりツンデレ系弟なのか。)


私は新しい解釈を胸に、力強く頷く。

あなたの弟を、しっかりよろしくされましたよ、という責任感に溢れた気持ちで。


大樹くんは終始むっつりして待っていた。


「もういい?この後出掛けるから、ちょい準備するし。」

「なんだよー。仕方ないな。じゃあね、彼女さん」


と、お兄ちゃんは手を振って出ていく。


私は軽く手を振り返してから大樹くんに視線を戻すと、鋭い目で見られていて何事かとドッキリする。


「今、ツンデレ系弟とか、また俺に変な付加価値つけてない?」


(こ、心を読まれている!)


「そ、そそんなことあるわけないよ?!」


私の下手な誤魔化しなど、全く信じていなさそうな大樹くんの鋭い視線を誤魔化すために、私はふと思い出した話題を振る。


「そ、そういえばね!昨日なんと前に話したスーパーでよく会ってた姉弟に会ったの!」


「え?弟に憧れたきっかけのってやつ?」


上手く食いついてくれて、話題が変わったことが嬉しくて、わたしは詳しく話し始める。


「なんかね、私は弟の子すっかり年下だと思ってたんだけど、成長した姿見たら、たぶん同い年くらいで、びっくりしたわー。」


「見かけただけ?」


「そうそう。流石に話しかけたりする勇気ないよー。私は舞花ちゃんとプリン買いに行ってたんだけど、向こうもお姉さんと買い出しかな?してて、あ!でもニコってして手を振ってくれた。私は嬉しかったけど、舞花ちゃんはチャラそうだなーって。成長すると変わるもんだね〜。」


「え?手を振られたの?」


「え?うん。でもそんだけだよ。」


「そのスーパー近所なの?よく行くとこ?」


「まぁまぁ行くかなぁ。帰りとか買い物頼まれた時とか。」


大樹くんが、はぁ〜と深いため息をついてしゃがみ込んでしまう。


「ど、どうしたの?」


「…なんでもない。俺は変わらず必死に頑張るよ。」


「??」


大樹くんはしゃがんだまま膝に肘を乗せて、私を見上げる。

今度は笑顔だ。


「じゃ、今からどこ行こうか?」


「…うーん、今からか。」


目を閉じて腕を組みつつ考える。


映画、なんか観たいのあったかなぁ?

そんな観ないしなぁ。


なんだかんだ私は大樹くんとただお話ししてるのも楽しいから、公園とか?


私は公園結構好きだけど、公園行こうよって友達に言うと、おばあちゃんとか言われるしなぁ。


「特にないなら、公園とかは?」


「え!」


「あ、微妙?」


「違くて!私も公園どうかな?って思ってたからびっくりした!」


「まじか、じゃあ公園でいいね。うちからバスでちょっと行ったとこに、でかい公園あるから。寒かったら公園内に喫茶店もあったし。」


「うわ〜いいねー!そうしよそうしよ!」


公園好きな私としては、初めて行く大きな公園が楽しみで、思わずニヤニヤが抑えられず頬を抑えていたら、大樹くんが真顔でこちらを見ていることに気がついて、慌てて俯いて表情を整える。


カーペットの上にあった私の手の上に、大樹くんの大きな手が重なった。

手が熱くて硬い。

顔を上げると、息が掛かるくらい近くに大樹くんの顔があった。


「さっき、ほんとは兄貴きて出来なかったけど、キスしたいなって思ってた…。」


大樹くんの大きな瞳の中に、呆けた私の顔が映っていた。

おでことおでこがくっつく。


「…だめ?」

「…だめじゃない。」


気がついたら、唇に柔らかい感触がして、すぐに離れていった。


「やばい。かわいい…」


まだ唇がくっつきそうなほど近い距離のまま、掠れた声で大樹くんがそういうと、もう一度くっついた。

そのまま何度かくっついたり離れたりして。

最後離れた後、大樹くんに抱きしめられたけど、私は魂が抜けたみたいにぐにゃぐにゃになっていた。


そのあと、公園に行った後も、私はキスの後遺症なのかどこか上の空だった。

喫茶店でご飯食べてても色々こぼすし。

何もないところで転びそうになるし

思い出したように赤面するし。


その度に大樹くんが笑いを堪えながらフォローしてくれた。


あまりに私がポンコツなので、心配した大樹くんが夕方になると家まで送ると言ってついてきてくれた。


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