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大きくなった弟チャラい?

夜、課題を済ませて寝る前にベッドでゴロゴロしていると、スマホの通知音がなる。


見ると大樹くんからだった。


黒瀬大樹 ①


『今電話しても大丈夫?』


特に何もしてなかったので、即レスする。


『大丈夫だよー』


着信が鳴ると、分かっていたのに身体がビクッとしてしまう。

"黒瀬大樹"の表示を見て、ドキドキしながら通話ボタンをタップする。


『はいっ!』

『はは、返事元気。今何してた?』


電話越しの声の笑い声に耳がくすぐったい。


『課題終わってゴロゴロしてた。』

『何のやつ?』

『英語の翻訳のやつ』

『わー、やばいな、俺もやらないと。』

『結構面白かったよ』


課題の話をしばらくして、遊びに行く場所の相談をする。


『友達に聞いたら、カフェとか映画とか漫喫とか。あとは家?何かしたいことある?』


『家か。前に言ってたリアル兄弟みたいならうちでもいいけど、見たい?』

『見たい!』

『即答うける。うーん、兄貴、休みの日昼間は家いるし、今週末午前中にうちきて、そのあとどっか行く?』

『やったー!了解!』


私はスマホを持ったまま片手でバンザイをする。

ついに!リアル弟な大樹くんを見る日が!


『すげー嬉しそうで、俺も嬉しいわ。じゃあまた時間わかったら連絡するね。あと一個確認なんだけど…』


『?』


少し言いづらいのか一瞬間が空く。

なんだろう。


『俺、鹿野さんの彼氏ってことでいいのかな?』


"弟もやるから、やっぱり付き合っても欲しいな。"

今日の準備室での言葉が脳内にリアルに蘇ってくる。

そうだ、私はっきり返事をしていなかった!

少しだけスマホを顔から離して、スゥハァと軽く深呼吸した。


『姉としても、これからは彼女としても、よろしくお願いします。』


『…』


すぐに返答がなくてオロオロしてしまう。


『…やばい、めちゃくちゃ嬉しい。俺今なら100本連続レシーブできると思う。』


『う、腕が壊れるからやめなさい?』



電話を切ったあと、数分間今起こったことに現実感が持てなくて呆けていた。

そのあと自分に彼氏が出来たという事実が猛烈に恥ずかしくなって枕にしがみついて悶えた。


そのまま枕とくんずほぐれずゴロゴロしていると、部屋のドアがノックされて舞花ちゃんが入ってきた。


「プリン食べたくなったから買いに行くんだけど、1人だと退屈だから友ちゃん一緒に行こ〜。」

「いいよ!」


私は外気で熱った顔を冷やしたくて、二つ返事で了承した。


舞花ちゃんと2人で寒い寒いぼやきながら夜道のスーパーへの道を歩いていく。


スーパーで舞花ちゃんがプリンを選んでいる時、隣の棚から男女が出てきた。


私より少し年上っぽい財布を持った女性と、たくさん商品の入ったカゴを持った私と同い年くらいの男の子。


なんとなく既視感があって、見てしまう。


「ねえちゃんまだ買うのかよ。」

「うっさいな。あんたは黙って持ってて。」


「!!」

私の頭の中の記憶と、目の前の2人が通電して明かりがついたみたいにピカッと繋がる。

声は低くなってるし、だいぶ大きくなってるけど、絶対この2人、あの時の2人だ!

あの時の弟だ!

ていうか、もしかして年下じゃなくて同い年だった?


「友ちゃーん、プリンどれがいい?一緒に食べるよね?」

舞花ちゃんがプリンの棚に視線を向けたまま私に話しかける。

声によって気が引かれたのか、カゴを持ったままウンザリした様子だった弟の子の方が、私たちに視線を向けた。


ガン見してしまっていた私とばっちり目が合う。

私が急いで目を逸らそうとすると、なぜか弟の子はさっきまでのダルそうな雰囲気をガラッと変えて、ニコッと笑顔を向ける。

私も気まずくて、ヘラっと笑う。


「あと肉買うからこっちきて!」

とお姉さんに腕を引っ張られて、また気怠そうな表情をしたけど、なぜか私にひらひら手を振ったので、私も遠慮がちに振り返した。


私の方を見ていた舞花ちゃんが、不思議そうにする。


「知り合い?」


私は興奮して舞花ちゃんに詰め寄る。


「舞花ちゃん!覚えてない?今の2人、絶対子供の時ホットケーキミックス3人で買いに行ってた時毎回いた姉弟だよ!めっちゃ大きくなってた!」

「ええー?!そんなん全く覚えてないよ。よく覚えてるね?」

「私、あの2人見て毎週毎週弟いいなぁってなってたんだもん!」

「私は妹派だから。で、なんで手振られてたの?もしかして話しかけたの?あの時の弟ですか?とか?」

「さ、さすがにそんなんしないよ!ただ、なんか思わず見てたら、ニコッてされて、手振られた。」


舞花ちゃんは選んだプリンをセルフレジで会計しながら「ええ〜」と引き気味な態度になる。


「なんかチャラいな〜、友ちゃん押しに弱そうな見た目してるから気をつけな?大樹くんのがたぶん良い子だよ?知らんけど。」


大樹くんの名前が出されて、せっかく外気で冷えた顔が、また少し熱くなる。


「あれ?どした?もしや、やっと彼氏になった?」


「うん。今日付き合うことになった。」


「えー!よかったねぇ!大樹くんも脱弟だねぇ!」

「弟もやめてないよ?」

「は?」


いつぞやの時と同じく、また私と舞花ちゃんの間に空白が生まれる。


「弟、兼、彼氏になってくれた。」


舞花ちゃんはしばし呆然としてから


「やっぱ大樹くんのが100倍いい男じゃん。」


と呟いていた。



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