黒瀬大樹side 1
さかのぼること10月。
文化祭の日、俺はバレー部の企画である、モグラ叩き屋のダンボールの中でうんざりしていた。
(早く帰りて〜)
どデカい段ボールに3×3の穴を開け、その中に部員の1人が入って手につけたモグラの人形を時間内にランダムに出しては引っ込め、それを客が何回叩けるかを競うゲームだ。
2分間で100回叩けば金賞、80回で銀賞、40回で努力賞と決めた。
部員で試したけど、金賞は出なかったし、銀賞も1人、2人でかなり難易度が高い。
ちなみに景品があり。
努力賞は飴玉、銀賞は駄菓子豪華セット、金賞はなぜか高級ポテチ詰め合わせだ。
ちなみに文化祭は2年を中心に企画運営していて、ゲームは男バレ側が準備をして、宣伝や景品は女バレが担当した。
景品を決めたのは女バレのリーダーの石田えみりだ。
あいつは練習は真面目だしバレーの実力はあるけれど、かなりマイペースで独断だし、なぜあれで女バレが何とかなっているのか2年男子のリーダーとして俺はいつも不思議だ。
基本的には男女別れてやっているから、事務的な連絡事項や、コート利用をお互い融通する時や、こういった文化祭の時以外は特に話さないが、たまに石田に話しても
「へぇー」「ほーへー」いっそ小馬鹿にしてんのか疑わしいようなリアクションだし、常に話している時何か食べ物齧っている気がする。
それはさておき、当日になりいざ段ボールに籠ってモグラを出してみると、男子たちは自分たちの過ちに気付いた。
身体に対して段ボールが小さいため、シフト担当の1時間も入っていると、縮めていた身体がめちゃくちゃに痛くなると。
部員のクレームがあまりに多いのと、俺は悔しいが背が低いのであまり痛くならず、大半のモグラ係を俺が代わるという納得しかねる展開になった。
しかし企画のリーダーも自分であり、悔しいが確認不足のせいでもあるため、渋々ずっとモグラをして、段ボールでうんざりしているのが今だ。
(まじで早く終われ、文化祭。)
午前中になぜかシフトではない石田が客として来て(女子は受付をやっていた)、なぜか妙な気迫を帯びつつ肩を回してモグラを叩く準備をしていたので、身の危険を感じて、段ボールの中から
「石田、言っとくけど、部員はどんなに叩いても賞でないからな!」
と事前に話していた事実を再度知らせると、なぜかガーンと明らかにショックを受けた様子ですごすごと居なくなって行った。
(あいつやっぱ聞いてなかったな。)
会議の時点で俺が前で話している時も、己も女子のリーダーとして前に出ているくせに、進行もしないで、いっそ鼻でもほじり出しそうな顔で、部員と共に「は〜い」と言ってるだけだったしな。
そのくせ景品の用意だけやたら積極的だったから、あいつは自分で勝ち取って食うつもりだったんだろう。
(まじで、アホだな。)
「石田先輩残念そうでしたね〜。」
受付の1年の女子部員が段ボールに向かって話しかけてくる。
「だな。あいつに叩かれたら段ボール壊れるから諦めて良かった。」
「あはは〜!石田先輩アタックもめちゃくちゃ威力強いですもんねぇ。わたしまだ怖くて受けられないですー。」
「そっか、まぁその辺りは慣れるしかないよ。」
「黒瀬先輩、男子のリベロですもんねー。慣れてるのすごいー、絶対避けたりしないですもんね〜」
そのあとも一年女子は受付の相棒が居なくて暇なのか、客がはける度に俺にちょくちょく話しかけてきた。
俺は段ボールの中が暑いのと、申し訳ないけどあまり楽しめなくて早く文化祭が終わることを願っていた。
もともとあまり女子は得意じゃない。緊張したりはしないけど、そんなに楽しませたりできるタイプではないから、あれこれ考えて面倒くさくなってしまう。
そんな細かいことを気にするから彼女ができないんだと兄には言われるが、別に部活も楽しいし、意外と勉強も嫌いじゃない俺に特に彼女が欲しい欲求も無かった。
まぁ背も低いし、中学あたりから、異性からは男子というよりペット扱いされることも多かったから俺もそんな気になるタイミングを失ったというか。
本日15時ごろ もう一話更新して完結します。




