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モテ期なの?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「鹿野さ、D組の黒瀬と付き合ってるの?」


週明けの月曜日。

私は昼休み、なぜかクラスメイトの篠崎に呼ばれて中庭にいた。


篠崎は何度か課題のグループが一緒になったことがある。

話す時の距離が微妙に近いのが地味に苦手な男子だ。

背が高くて、身体が大きくて、声が大きいこともあまり得意ではない。


「あ、うん。」


「俺、鹿野のこと好きだったんだけど…。」


(だ、だからどうしろと?!)


内心このタイミングで言われても何と返答して欲しいのか意味が分からない。

まぁ大樹くんと付き合う前でも断ってただろうけど。

そもそも大して仲良くないし。


「えーと、だから、彼氏いるので。ど、どうも?」


付き合ってと言われた訳でもないので答え方が分からず、とりあえずお断り?をして、背を向けてからチラッと振り返ると、篠崎がガックリと肩を落としている。


気まずいまま教室に戻ると、えみりんに


「遅いぞ!待ち合わせは遅れてもいいけど、ごはんの時間は守れ!」


と理不尽に怒られる。


「だって、なんか呼ばれちゃったから。」


えみりんはすでに弁当箱を空にして、おにぎりのラップを開けている。


「友花、モテ期だな。うらやましい限りだ。」


「絶対1ミリもうらやましいと思ってないでしょ。」


「ちなみにこないだ黒瀬にも女バレ内でモテ期がきた。」


「ええ?!」


私が机に手をついて身を乗り出すと、えみりんが「まぁよく聞きな」と私を制す。


「彼女ができたことを聞きつけた、何人かが、普段の融通の利かないバカ真面目さの裏に、もしかしたら女子に優しいところもあるのではないかと。」


「うそ!ばれちゃったの?!優しいところ」


「女バレ1、ビジュアル偏差値の高い百枝を遣わせて、黒瀬に女子の部室にでたゴキブリの滅殺を頼んだんだが…」


ごくりと唾を飲み込む。

たぶん大樹くんは仕方ないなと倒してくれるだろう。

私はゴキブリの恐怖から救われて、大樹くんにメロメロになる女子たちを想像して胸が苦しくなる。


「黒瀬は『おまえらがお菓子食い散らかしてるからだろ。仲良く共存しろ』と、嫌味を言ったうえに断ったらしい。やつのモテ期は一瞬で終わった。」


あれー?

なんか私の知る大樹くんとだいぶ違うけど、新たな一面ってやつなのか?

まぁ、ゴキブリはみんな嫌だもんね。

私も、もしもの際は大樹くんを頼らず姉として頑張って黒い悪魔と戦おうと心に決める。


「友花は、黒瀬と付き合い出したことで、本当は押しに弱いところが露呈したんだろな。そして、愚かな篠崎あたりが、黒瀬でいいなら俺でもと。アホなやつ。」


「なにそれ。私別に押されたから付き合ったわけじゃないよ。」


「まぁ、でも側から見ると、黒瀬がぐいぐい迫ってるし。それて押されると友花頷いちゃうし。」


「そんなことないよ。」


「いや、そんなことある。そして私は今から押しに押して、その紙袋の中のめちゃ胡麻パウンドケーキをもらおうと考えている!」


えみりんは私の机の脇の紙袋をビシィと指差した。

確かにそこには昨晩焼いたパウンドケーキが入っていて、篠崎に呼び出されたせいで今言われるまで忘れていた。


「それとも、もうダメなのか?もうめちゃ胡麻パウンドケーキは黒瀬にしか作ってくれないのか?」


えみりんは私の両肩を掴んで、本気で綺麗な瞳を潤ませている。


「いやいや、これはえみりん用だよ。こないだ大樹くんに作ったの持ってた時に、匂い当ててすごい食べたそうだったから。」


私は紙袋から、えみりん仕様の塊のままのパウンドケーキを取り出した。


飾り気のない透明のビニール袋に入っているけれど、綺麗な焼き色で、えみりんの好みに合わせて胡麻も増量だ。


「友花!!大好きだ!!黒瀬をやめてやっぱり私と付き合え!!」


えみりんにパウンドケーキごと豪快にハグされる。


苦しいよーとジタバタしていたら、急に解放される。

目の前に、いつの間にかえみりんの襟首を掴んでいる大樹くんがいた。


「大樹くん!」


私は飼い主を見つけた犬の如くテンションが上がってしまう。

いや、弟を見つけた姉か。

あれ?でも見つけて喜んで飛びつくのは弟なんだけどな〜

まぁいいか。


「…ライバルが多い。」


大樹くんは少し疲れているのかため息をついてから、私の方を見てニコっと笑顔になる。


「今日一緒に帰れるかなって、聞きにきた。」

「LINEでもよかったのに。」

「いや、教室にくる意味があるから。実際来てよかったし。」

「そうなんだ?」


大樹くんは、私の知らない面もあるし、彼氏だけど、弟もしてくれるし、ドキドキさせられたり、可愛かったり。


私は改めて大樹くんを見て、顔が緩んでふにゃっと笑ってしまった。


それを見た大樹くんは、なぜか驚いたような顔で赤面したのだった。

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