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第六章 7
凛とした顔の朱里を見つめているうちに、距離を感じ始めていた。自分と朱里では住む世界が違う。朱里は夏目家の御曹司で自分は庶民だ。
胸の奥でツンと何かが染みたような気がした。
朱里のスピーチの後、感嘆の拍手が沸きあがる。この時、百合の隣に立って作り笑いを浮かべる乙姫の中では殺意に似た感情が芽生えていた。
(許せないわ。わたしのことを馬鹿にする奴等なんて、みんな、一人残らず死んでしまえばいいのよ)
頭が大きくて怖い。そんなことを言われて心はズタズタに引き裂かれている。
乙姫は崩れ落ちそうな気持ちを必死で押さえ込む。
みんなの前で泣くものか。
乙姫も自分の容姿がどの程度のものかはちゃんと自覚している。でも、いつも考えないようにしてきた。
自分はお金持ちで何でも手に入る。そう信じたかった。けれども、夏目朱里は、決して自分を愛してくれない。
そんな男との婚約に何の意味があるというのだろう。
乙姫に求婚する男は他にもいると西川は言っていた。
(そうよ。ハンサムで有能な殿方とラブラブになってやりますわ。高慢な夏目朱里を悔しがらせてやりますわよ)
この時、乙姫の脳裏には夏目朱里の叔父だと噂されている吉田礼馬という男の顔が浮かんだ。
(婚約者をチェンジするといいんだわ)




