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第4話-③

 ユウキ達はシーラの部屋に戻った。この城下町について立て続けに色んな事が起こりすぎて、情報を整理しないといけなかったからだ。全員部屋の中央のソファーに囲むように座っており、真ん中にある机にシーラがメモ用紙をおいてメモをしていた。シーラは筆を走らせながら話す。


「まずこの町に来て半日経たないうちに3人の異邦人に会いました。モモさんと、あのイカレポンチのタカシとかいうのと、兄さん姉さんの学生時代……いや今も学生だったか……は置いといて先輩のシズクってことで、しかも今まで会ったのも含めると、全員”日本人”ってやつでしたっけ? ……ちょっと姉さんに質問があるんですが」


「何?」


「ユウキアオイ、サイトウ、モモ、タカシ、シズクはわかる。……ライオネルって名前なんなんでしょう一体……。一人だけ妙に命名法則が無茶苦茶なんですが」


「あ~それは……」


 アオイは答えに詰まり中空を見るが、ユウキが代わりにそれに答える。


「多分……ゲームのキャラクターの名前だ」


「ゲーム……? また”ゲーム”ですか……」


 オルレアの町で戦った、魔物を呼び出す能力を使ってきた異邦人の名前が”ライオネル”と聞いた時、アオイはどこかで聞いたような名前だと思っていた。そしてそのあとにユウキと話した際に、日本で流行っていたゲームのキャラにライオネルというキャラがいたことを思い出していた。


「やつらが断片的言っていた”ステータス”だってゲームによくある単語だった。レベルとかクエストとかもそう。……まるでこの世界をゲームとして遊んでいるような」


「ちょっと勘弁してくださいよ……まさかこの世界は、姉さんたちの言うゲームの世界とか、そんなこと言うんじゃないでしょうね」


 シーラが不安がってアオイに尋ねるが、アオイは首を横に振った。


「いや……それは違う。ゲームって言うには、私はこの世界に来て最初に衰弱死しかけた……。あの苦しみはゲームなんかじゃない、現実のものだった」


「とにもかくにもまずは情報を集めないとだ」


 コニールは立ち上がると、自分の荷物をまとめたバッグを手にした。


「一旦、まとめた情報を手に城に戻ってみる。夜にはこちらに戻るようにするから、少し待っていてもらえないかい?」


 シーラはコニールに顔を向けずに手を適当に振って返事をした。


「はいはい。まぁ頼むね~」


「……君は相変わらず、私に対しては当たりが強いな……」


 コニールが部屋を出ると、シーラは新ためてユウキ達に向き直った。


「さて。追加の情報はコニールが帰ってまで待つとして、ちょっと気になることがあるんですが」


 シーラはメモに書いていたシズクという名前に〇を付ける。


「学校の先輩って言ってましたけど、どういう関係なんですか? 向こうは結構親しげに話してましたが……」


 シーラの質問にユウキとアオイは互いに目を合わせる。


「……あんま聞いていて気持ちのいい話じゃないよ?」


 アオイの言葉にシーラは自嘲気味に答えた。


「大丈夫です。学校で除け者なのは私も一緒ですから。それよりもそのシズクとの関係がわかれば、今後の旅の指針が何か決められるかもしれないんで」


「わかった……。じゃあ、私が……結城葵が中学生1年生だった時の話をするね」


× × ×


 結城葵はF県の田舎町でずっと暮らしてきた。物心ついた時にはもう父親はおらず、詳しい話は母親からも聞かなかったが、どうやら離婚したとのことだった。


 そして母親は結婚にあたり親類と縁を切ってしまったようで、養育費も払わない父親のおかげで結城葵の今までの人生はずっと”貧乏”の2文字がつきまとっていた。


 そして何より結城葵は要領がよろしくなかった。それらの要素が合わさり、結城葵は当然のようにイジメの対象にあった。


 そして中学生1年生の時、結城葵は中学校の生徒会に入っていた。別にやりたかった訳ではない。クラスの中でやりたり者が誰もおらず、面倒ごとを結城葵に押し付けただけだった。そしてその時の生徒会長である鈴木雫――シズクに出会ったのだった。


 結城葵は生徒会の中でもその要領の悪さから周囲に疎まれていたが、シズクだけは結城葵に親しく接した。結城葵も今まで自分と親しくしてくれる者がいなかったこともあり、シズクに懐くようになった。


 だが、シズクはこの時から学校内でも上位に入るほどの美人であり、そして何より愛嬌があった。――必然のように付き合っている恋人もおり、結城葵のことはある種のペットとして扱っている節があった。


 そしてシズクは学校を卒業し、それ以降は当然のごとく連絡は途絶えた。


× × ×


「……って話なんだけどね」


 アオイは語り終わると、椅子に深く腰を落とした。


「鈴木先輩とは全く連絡も取り合ってなくて、本当に5年ぶりだから何がどうなのかさっぱりわからないのよ。私は友達もいなかったから、そういった経由で話を聞くなんてこともなかったし、なんなら鈴木先輩と仲良かったころは、それが原因で周囲から暴力振るわれてたし」


「なるほど……」


 シーラは律儀に今の話をメモに取っていた。


「…………ただ今ので少しわかりました。おそらく、そのシズクってのはこちらに、本当にコンタクトを取ってくるでしょうね」


「なんで?」


 ユウキがシーラに尋ねる。シーラはペンを手回ししながら答えた。


「”ペット感覚”って言葉が、先のシズクの対応と合致するんでね。ようはシズクは兄さんと姉さんを舐めてるんですよ。味方に引き入れればよし、ダメなら殺せばいい」


「ころ……!?」


 急に飛び出た物騒な言葉に、ユウキは身を乗り出すがシーラはそのまま続ける。


「やっこさん、間違いなく人を何人か殺してますよ。何故ならタカシってやつが暴れた際、被害状況を一切確認しなかった。あんだけ破壊されてたら普通、店主が大けが負ってるとか気にするでしょう? ……そういうのが一切無かったということは、”犠牲”が出ることに対して大分無頓着であるとしか言えない。……そしてこっちに来て長いのであれば」


「……当然、異邦人としての力を”他人”に試してる。ってことか……」


× × ×


 夜になってコニールが帰ってきた。コニールは相当疲れたのか、少しやつれ気味の表情を浮かべており、ソファーに思いっきり腰を降ろした。


「あー……疲れた……。でも、話はかなり進展しそうだ」


「どうしたんです?」


 アオイはコップに水を注ぎ、コニールに渡してやる。コニールはそれを受け取って一礼すると、一口で水を飲み干した。


「明日、王に謁見することになった」


「明日!?」


「ああそうだ。ちょうど明日、城でパーティーが行われる予定なんだ。普段なら王に謁見するのも多くの手続きと手順が必要なんだが、パーティに出席するテイなら、その面倒な手続きを全部すっ飛ばして直接王と話すことができる」


「王様に会って……どうなるんです?」


 アオイは疑問を口にすると、コニールはそれに答える。


「君たちの旅をサポートするのを国の方針として認めてもらうのさ。金とかはともかく、異邦人の情報などは個人で動くより、国で動いてもらったほうが効率よく集まるからね」


「なるほど……」


 アオイは納得しかけるが、それに待ったをかける声があった。


「質問。……そのパーティ、服装はどうすんの」


 シーラは手を上げてコニールに尋ね、コニールは当然だと言うように答えた。


「どうするって……そりゃスーツにドレスだが……あっ」


 ハッと気づく素振りを見せるコニールに、シーラは呆れた口調で言った。


「はぁ……やっぱ気づいてなかったか……」


「え? どうかしたか?」


 ユウキはシーラに尋ねると、シーラはさらに呆れた口調で答えた。


「……兄さんと姉さんの服。どうするつもりなんですか」


「「あっ……」」


 ここにいたりユウキとアオイもようやくシーラが何を言わんとするか理解した。


「まぁいいですけど。……この町にも私の影響下の服屋さんがありますから、明日早いうちに服を買って、夜のパーティに備えますか」


 やれやれと言わんばかりにシーラに、コニールはボソッと呟いた。


「……やっぱ君が、ユウキ君たちや異邦人より、よっぽど奇妙な存在だな……」


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