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第3話-②

 ユウキとアオイ、そしてシーラとコニールの4人は町の中央にある高級レストランに着ていた。食事の部屋まで案内されながら、ユウキはアオイに小声で話しかける。


「す……すげえとこに来てないこれ?」


「う……うん……いや、ちょっとマジで緊張してきたんだけど……」


 ガチガチに固まる二人にシーラが笑いながら声をかけた。


「べっつに気にしないでくださいよ。この店も私の知り合いの店ですから。面倒くさいマナーもないし、個室だし、いくら粗相しても問題ないですよ」


「異邦人である二人と話に来たのに、なんでもっと変な女の子が横にいるんだ……」


 コニールは唖然としながらシーラを見た。このレストランに案内したのはコニールではなく、シーラだったからだ。


「うっせえな……。異邦人の話はあんま他のやつに聞かれたくねえんだろ? だからプライバシーが保たれる個室を紹介してやったのに」


「そして口調悪いな君は……あの子たちには敬語なのに……」


 ツッコミを入れるコニールにシーラは全く感情を込めずに返答する。


「はぁ……。んなのお前を全く敬ってないからに決まってんだろ? 私は兄さん姉さんは尊敬してるけど、お前にそんな態度取る義理なんて全くねえし」


「私がこの中で一番年上……っていうか騎士なんだが!?」


「ま……まぁまぁ落ち着きましょうよ……ね? コニールさん……」


 アオイがコニールとシーラをなだめるように声をかける。そしてそんな会話をしているうちに目的の部屋についたのか、給仕係の人間が部屋のドアを開けた。


「こちらです。どうぞ」


 中に入ったユウキとアオイはその部屋の豪奢さに言葉を失った。


「うへ~……」


「こんなんテレビでしか見たことないよぉ……」


 豪華なシャンデリアに、シミ一つない純白のテーブル。そして数々の装飾が施された壁。まるでテレビで見る豪邸の食堂そのものだった。


「じゃあお二人は適当なとこに座ってください……。あと騎士様もど・う・ぞ」


「ふん……!」


 シーラは嫌みったらしくコニールに言い、コニールは鼻を鳴らしながら椅子に座った。そしてまずそれぞれ座ったところに水が置かれ、給仕の人たちが全員部屋を出ると、コニールは本題に入った。


「さて……ユウキ君とアオイ君だったか。……君たちは”異邦人”らしいが……?」


「い……いや~実は自分たちもよくわかんないんですよ……。異邦人って言葉を知ったのも今朝なもんで……」


 ユウキとアオイはコニールにこれまでの自分たちのことを説明した。シーラの時と同じく元々結城葵であったことも隠さず、そして日本のことやここまでで異邦人と出会ったことも話した。全てを聞き終わったコニールは腕を組みながら唸った。


「う……う~ん……。信じられないけど嘘言ってるようには思えないし……。しかし君たちも異邦人については殆ど何も知らないようなものか……」


「……逆にコニールさんはなぜ異邦人を知っているんです?」


「正直……私も持っている情報は君たちと変わりないがな。ただ任務を受けているだけだ。”異邦人”を探せという」


 コニールは窓から町を眺め、話を続ける。


「先ほどの魔物の件もそうだが……ここのところパンギア王国近辺できな臭い事件が多発していてな。そしてその犯行グループが”異邦人”を自称しているんだよ。……そして何より目撃者の証言では、おおよそ鍛えているようには見えない若い男女が、兵士たちをなぎ倒していた……と」


 コニールの話を聞いてユウキとアオイは互いに顔を合わせた。


「俺たちもろくに鍛えてないし……」


「朝に会ったあの異邦人も、ヒョロっとした子供だった……!」


「……で、王国にそんな報告がたくさん上がってきたから、私が調査を命じられたわけだ。この町に来たのもつい昨日で、まさかいきなりヒットとは思わなかったけどね」


「じゃああの兵士に変装していた異邦人のことは……?」


 アオイはコニールに尋ねたが、コニールは首を横に振って答えた。


「全く知らなかった。私もまだこの町に来て1週間も経ってなくて、多少の訓練はしたけどその程度だからね。……あのライオネルとかいう兵士も新兵で、入ったのは1月前とかだったらしいしな」


 コニールの説明が終わり、ユウキとアオイは黙りこくってしまった。考えをまとめるのに時間が必要だった。――そんな中、シーラがコニールに嫌みったらしく話しかける。


「……なるほど。新進気鋭の女騎士様がなんでこんな田舎町に来てるか、疑問だったけど合点がいったわ。……ようは閑職送りってわけだ」


 シーラの言葉を聞いてコニールが苦虫を潰したような表情を浮かべる。ユウキは全くピンとこずにシーラに尋ねた。


「閑職送りって……どういうこと?」


「このコニールって女騎士は……まぁ有名人でしてね。いわゆる剣の達人ってやつで数々の功績を上げてきてるんですよ。確か最近は国のお偉いさんとの不仲って話も聞いてましたが。……ってわけで異邦人の調査なんていう投げやり任務を与えられて、国の中枢から追い出されたっていうのが、あいつの現状でしょうね」


「「なるほど……」」


 ユウキとアオイはシーラの説明に納得していたが、当のコニールは驚愕の表情でシーラを見ていた。


「な……き……君は一体何者だ!? こんな高級店に顔パスで入れて、そんな聡明さで……異邦人よりも遥かに怪しくないか!?」


「確か……ロマンディって名前って有名なんじゃなかったっけ?」


 アオイがロマンディの名を口に出すと、コニールは驚きながらアオイに問い詰める。


「ロマンディ!? ロマンディってあの魔法で有名なロマンディか!? ……そりゃこんな店に顔が効いてもおかしくないわけだ……」


 ロマンディという名前に、シーラは露骨に不機嫌そうに言い返す。


「言っとくけど、この店の顔なじみって事と、ロマンディは何にも関係がないから。私がこの店の経営のサポートをしてやってて、それでこういう待遇を受けてるんだ」


「そっちの方がおかしいが……。まぁいい」


 コニールは改めてユウキたちに向き直った。


「……君たちの事情はよくわかった。そして私の事情もわかってくれたと思う。そこでだ……私と一緒にパンギア王城まで来てくれないか?」


「「え……?」」


 コニールの提案にユウキ達二人は面食らうが、コニールは説明を続ける。


「もともと異邦人の存在が疑わしいから……という名目があったから、私一人に押し付けて厄介払いをしようとしたんだ。君たちが異邦人が実在するという証明をしてくれれば、王国は今度は私たちに協力しなければならなくなる。異邦人の脅威に対抗するためにね」


「はぁ……」


 いまいちピンと来てないユウキ達を見てコニールは肩をすくめる。


(まだ子供だ。この手の難しい話は無理か)


 しかしユウキたちとの出会いはコニールにとって僥倖であることは事実だった。雲を掴むような話だった異邦人討伐が現実味を帯びてきたのだから。


 そしてユウキたちはコニールの提案に承諾し、一緒にパンギア王城へ向かうことになった。ただし準備等があるため、一度ディアナの家に戻り旅の支度をしてから向かうことが決まったのだった。


 × × ×


 ディアナの家に戻ったユウキたちは、まずディアナに町で起こったことを説明した。そして今は町で待機してもらっているコニールと共にパンギア王城へ向かうことも話した。ディアナはまだベッドで横になっており、腰にはコルセットが巻かれていた。


「なるほど……ここからパンギア王城へは結構距離があるね……」


 ディアナは腰を抑えながら言う。


「私の怪我もまだもう少し時間がかかりそうだ。……いい機会だ。ここから先はユウキにアオイにシーラ。3人で行きな」


「え……でも……!」


 アオイは不安がってディアナに縋りつくが、ディアナは微笑みながら言った。


「なあに。案外あんたたちもしっかりしているし……なによりウチの孫娘がいるんだ。だいたいのことは、この子がなんとかしちまうさ」


 ディアナはベッドの横においていた分厚い本を手に取ると、それをシーラに渡した。


「お祖母ちゃん……これ……」


「渡しておく。そりゃ……使えないのはわかってるけど……あの子にはもしかしたら……」


 ディアナはアオイを見ながら言った。シーラとディアナからの視線を感じたアオイは何かあったのかと自分を指さした。


「わたし? なんかありました?」


「ククク……なんでもないよ。じゃあ今日はゆっくり休んで、明日から頑張りな」

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