95話 静寂のお化け
廊下。
「……。」
軋む音。
昔から、こんな音だったか。
「……。」
覚えてないな。
まあいいか。
「……。」
奥。
母の背中。
何も言わず、歩く。
「……。」
止まる。
襖。
「……。」
母が、開ける。
静かに。
「……。」
部屋。
布団。
その上に、
「……。」
親父。
「……。」
寝てる。
「……。」
そんな感じだな。
「……。」
近づく。
足音。
やけに、響く。
「……。」
顔。
老けたな。
記憶より。
「……。」
寝てるだけ。
そんな風にも見える。
「……。」
「……。」
少しだけ、間。
「……。」
この家で。
親父だけが、見えてなかった。
「……。」
それなのに。
「……。」
一番、落ち着いていたのは。
親父だった気がする。
「……。」
『……また来てるのか。』
何もない方を見て、
そう言ってた。
そんなことを思い出した。
「……。」
そのまま。
湯のみを、置く。
「……。」
誰もいない場所に。
「……。」
「……。」
見えてなかったくせに。
「……。」
「……。」
今は、静かだ。
「……。」
後ろ。
母親。
「……。」
「……葬儀は、三日後だよ。」
母。
「……。」
「……わかった。」
それだけ。
「……。」
母は、何も言わず。
そのまま、
出ていく。
「……。」
少しだけ、残る。
「……。」
「……。」
記憶を辿る。
言葉を探す。
……。
何も出てこない。
「……。」
もういいか。
「……。」
踵を返す。
「……。」
一歩。
「……。」
止まる。
「……。」
「……お疲れ様。」
「……。」
少しだけ、間。
「……父さん。」
そのまま、部屋を出た。




