93話 笑顔のお化け
※ユウト視点
「……。」
玄関。
入った瞬間。
「……なんだよ、ここ。」
思わず、声が出る。
さっきまでもいい加減おかしな雰囲気出てたけど。
ここは空気が違う。
重いとか、そういうんじゃない。
「……。」
いる。
多い。
いや。
「……多すぎる。」
壁。
廊下。
天井。
空気の隙間。
「……。」
全部。
いる。
でも。
密度がおかしい。
「……。」
動かない。
こっちを見てるだけ。
「……。」
質も、違う。
今まで見てきたやつらとは、 明らかに、違う。
「……。」
気配が、濃い。
セイコなんか青ざめてきている。
「……。」
「……おい。」
小さく。
「……おじさん。」
「どうした。」
普通に返ってくる。
「……これ、やばくないか。」
「なにが?」
「夥しい数の気配、感じるんですけど!!」
声が少しだけ大きくなる。
「……。」
おじさんは気にした様子もなく、 靴を脱ぐ。
「……。」
なんで平気なんだよ、この人。
いや、実家だからか。
そうだよな。
自分の実家、あんまり悪く言われるのは気持ちよくないよな。
ほどほどにしよう。
我慢だ、我慢。
「トラぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!??」
白い。
大きい。
虎。
大きい。
白い。
一歩、下がる。
「……やい、おじさん。」
「なんだ。さっきからうるさいよ。」
「……あれ。」
指さす。
「……。」
「……虎いるんだけど。」
「……虎?。」
軽い。
軽すぎる。
「……あぁ、シロだな。」
「ペットか何かなの!?!?」
「……。」
白いそれが、ゆっくりと口を開く。
「……坊主。」
低い声。
響く。
「……帰ってきたか。」
「……俺の方が年上なんだけどな。」
は?
え、喋るっけ?
虎って。
まあ虎の友達なんかいないからわかんないけどな。
そしておじさんの方が年上なのか。
そうか、そうか。
いやいやいやいやいや。
無理無理無理無理無理。
馬鹿か。
馬鹿なのか。
その時。
空気が、変わる。
さらに。
重くなる。
「……。」
いや、違う。
「……。」
これ。
虎のせいじゃない。
「……。」
もう一つ。
「……。」
もっと奥。
「……。」
「……。」
出てくる。
人。
普通に。
「……。」
おじさんと変わらないくらいの女性。
赤い、着物。
「……。」
なんでもない顔で。
こっちを見る。
「……。」
目が合う。
「……。」
一瞬。
止まる。
「……。」
「……あら。」
小さく、言う。
「……。」
その視線が、
「……。」
俺を、捉えた。
「……。」
え?
「……。」
「……。」
ニヤッと、笑う。
「……。」
ステキナエガオデスネ。
「……あんた。」
あ、終わった。
死んだわ、おれ。
もう死んでるけど。




