92話 ようこそお化け
※セイコ視点
「え、ここで乗り換え!?もう終点じゃないの!?」
思わず声が出る。
「まだだな。」
おじさんは、何でもないみたいに言う。
「いや、だいぶ来たよ!?もう十分でしょ!?」
「まだ乗り継ぐぞ?」
「嘘でしょ!?」
「……。」
おじさんの横。
「……。」
なんか、いる。
でも。
「……。」
見えない。
「……。」
気のせい、じゃない。
「……ほら、行くぞ。」
「……うん。」
ホームに降りる。
人はほとんどいない。
音も少ない気がする。
さっきまでのざわざわが、 少しだけ遠い。
「……。」
小さい電車。
一両。
ボタンで開くドア。
新鮮ではある。
「……。」
中に入る。
揺れる。
窓の外は、山。
ずっと、山。
どこまでも、山。
「……。」
「……ねえ。」
「ん。」
「……なんかさ。」
少し迷う。
「……近い。」
「なにが?」
「……分かんない。」
「……。」
おじさんは興味なさそうに外を見る。
「……。」
横。
「……。」
やっぱり、いる。
近いのに。
形にならない。
「……。」
なんだろう、あれ。
「次、終点です。」
アナウンス。
降りる。
ホームには誰もいない。
「……。」
風だけが吹いている。
「……ここ?」
「ここだな。」
「……ここからどうすんの。」
「バスだな。」
「……。」
困ったな。
適当にビジネスホテルでも取ろうと思ったのに。
この景色では期待出来なさそう。
バスが来る。
時代に置いていかれたような古いバス。
中に人は、いない。
揺れる。
どれくらい揺られたか。
時間の感覚が、曖昧になる。
「……。」
途中から。
「……。」
考えるのをやめた。
「……降りるぞ。」
「……うん。」
降りる。
「……。」
ここはとても静かだ。
音が、ない。
風と、葉っぱの音だけ。
「……。」
「……ねえ。」
「ん。」
「……なんか、不思議な感じ。」
「そうか。」
「そうかじゃない。」
「……。」
進む。
細い道。
道、なの?これ。
迷いそうなのに。
おじさんは迷わない。
「……。」
「……ねえ。」
「ん。」
「……なんで分かるの。」
「地元だからな。」
「……。そっか。」
「……。」
その時。
「……。」
視界の端。
「……え?」
足が止まる。
「……。」
家。
「……。」
さっきまで、なかったよね。
絶対。
「……。」
「……ねえ。」
「ん。」
「……こんなのあった?」
「あるだろ。」
「いや、今なかったよね!?」
「そうか?」
「そうだよ!!」
「……。」
近づく。
古い、歴史を感じさせる、大きい家。
静かで、人の気配は、ない。
「……。」
でも。
「……。」
見られてる感じだけ、ある。
「……。」
「……ここ?」
「ここだな。」
「……。」
足が止まる。
「……。」
入っていいの?これ。
「……。」
横。
「……。」
やっぱり、いる。
でも。
「……。」
分からない。
「……。」
その時。
カタン。
「……っ。」
玄関がほんの少しだけ。
開く。
「……。」
誰もいない。
でも。
「……。」
中から、何かいる。
「……。」
喉が、乾く。
「……。」
おじさんが、前に出る。
「……。」
「……帰ってきたか。」
奥から声がする。
「……。」
誰もいないはずなのに。
「……。」
おじさんは、普通に言う。
「……ああ。」
「……。」
足が、動かない。
でも。
「……。」
目が、離せない。
「……。」
ここは、きっと。
帰る場所じゃない。
「……。」
“入る場所”だ。
この章はここから視点がコロコロ変わります。




