91話 新幹線のお化け
暗い。
でも、真っ暗じゃない。
「……。」
目の前に、人。
「……。」
知ってる。
「……。」
親父だ。
「……。」
少しだけ、低い位置。 頭に、手。
「……。」
ああ。
これ、昔のやつか。
「……。」
泣いてる、俺。
うるさいな。
「……。」
親父は、何も言わない。
少しだけ、手を動かして。
ぽん、と。
軽く、叩く。
「……。」
「……なあ。」
声。
「……。」
「君はさ。」
「……。」
少しだけ、間。
「お母さんと同じで——」
「……。」
「見えないものが、見えるんだ。」
「……。」
分かってる。
「……。」
「だから。」
「……。」
「ちょっと、嫌なこともあるかもしれない。」
「……。」
泣き声。
うるさいな。
「……。」
「でもさ。」
「……。」
「恨まなくていい。」
「……。」
少しだけ、手が離れる。
「……。」
「……あいつらも。」
「……。」
「たぶん。」
「……。」
「ちょっと、羨ましいだけだから。」
「……。」
意味は、よく分からない。
「……。」
でも。
「……。」
まあ、いいか。
「……。」
手が、離れる。
少しだけ。
遠い。
親父は微笑んで、
「……大丈夫。」
「……そのままで大丈夫だよ。」
親父は、そのまま。
微笑んだまま。
消えた。
「……。」
「……。」
―――
目を開ける。
新幹線の音。
「……。」
少しだけ、ぼんやりする。
「……。」
横のセイコ。
寝てる。
「……。」
今どの辺りだ。
「……。」
体を起こす。
少しだけ、重い。
「……。」
窓。
外。
流れてる。
「……。」
もうすぐ、か。
「……。」
「……起きた?」
反対側にユウト。
「……。」
「……ああ。」
「……。」
「……夢でも見た?」
「……。」
「親父が出てきた。」
「……そっか。」
それだけ。
「……。」
少しだけ、考える。
いつも微笑んでいて、
穏やかな人だった。
怒鳴られたことは、一度もない。
「……。」
でも。
「……。」
変な人だったな。
「……。」
ユウトが、小さく言う。
「……間に合うといいね。」
「……。」
少しだけ、間。
「……いや。」
「……。」
「……もう、たぶん。」
「……。」
その時。
震える。
「……。」
ポケット。
スマホ。
「……。」
画面。
母。
「……。」
少しだけ、見て。
開く。
「……。」
「……。」
少しだけ、息を吐く。
「……そうか。」
窓の向こうの景色は流れて消えていく。




