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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
4章 おじさんと迷子

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83話 動けないお化け

夜。


同じ道。


昼間は何でもないはずのこの道も、

夜になると、少しだけ別の場所みたいに見える。


街灯の光は頼りなくて、照らされている場所と、そうじゃない場所の境目が、やけに曖昧だった。


「……。」


立ち止まる。


昨日と、同じ場所。

足元のアスファルトは少しだけ白っぽくて、

昼間の熱が、まだかすかに残っている気がする。


「……。」


いるはず。

そう思って、目を細める。

ピントを合わせる。


「……。」


空気が、揺れる。

歪む。

ざらつく。


夜の空気に混ざって、

わずかに違う“何か”がある。


「……。」


「……ねえ。」


声。

小さい。

遠くから届くみたいな、頼りない音。


「……。」


少しだけ、安心する。

ちゃんと、いる。


「……。」


「……ここ?」


声の方へ、歩く。


一歩。


アスファルトを踏む音が、やけに大きく響く。


また一歩。


「……。」


近づいている。

はずだった。


「……。」


「……あれ。」


足が止まる。


「……。」


さっきより、遠い。


「……。」


振り返る。

誰もいない。

ただ、街灯がぽつんと立っているだけ。


「……。」


もう一度、耳を澄ます。


「……ねえ。」


今度は、違う方向。

電柱の影。


「……。」


そっちを見る。


「……。」


いない。

影だけが、少しだけ揺れている。


風。


「……。」


「……。」


少しだけ、間。


「……おかしい。」


声が、少しだけ低くなる。


「……。」


昨日は、あんなに近かったのに。

手を伸ばせば、届きそうなくらいだったのに。


「……。」


もう一度、目を細める。

ピントを合わせる。


「……。」


空気が歪む。

ノイズが走る。

でも。


「……。」


輪郭が、定まらない。


ぼやける。

消える。

また、現れる。


「……。」


「……ねえ。」


声。

今度は、すぐ後ろ。


「……!」


振り向く。


何もいない。

ただ、少しだけ風が通り抜ける。

髪が揺れる。


「……。」


胸の奥が、ざわつく。

怖い、というより。


「……。」


掴めない。

そんな感じ。


「……。」


「……ちょっと待って。」


思わず、口に出る。


「……。」


自分の声だけが、少し遅れて返ってくる。


「……。」


歩く。

音を追う。

でも。


「……。」


追うたびに、ずれていく。

近づいたと思えば、遠くなる。

遠いと思えば、すぐそばに来る。


「……。」


街灯の下に入る。

影が、足元に落ちる。

自分の影だけが、やけにくっきりしている。


「……。」


「……なんで。」


小さく。


「……。」


分からない。

昨日より、見えているはずなのに。

昨日より、聞こえているはずなのに。


「……。」


なんで、掴めないんだろう。


「……。」


足が止まる。


「……。」


静か。

さっきまで聞こえていた声も、

いつの間にか消えている。

風も、止まっている。


「……。」


「……。」


遅かったのか。

それとも。


「……。」


最初から、

こういうものなのか。


「……。」


少しだけ、息を吐く。

夜の空気は、さっきより少しだけ冷えていた。


「……。」


視線を落とす。

アスファルトに落ちた自分の影が、少しだけ歪んでいる。

街灯のせいなのか、

それとも。


「……。」


分からない。


「……。」


「……。」


握りしめた手に、少しだけ力が入る。

指先が、少しだけ白くなる。


「……。」


「……はあ。」


顔を上げる。

夜は、変わらない。


同じ道。

同じ時間。

同じ空気。


「……。」


でも。


「……。」


何も、うまくいかない。


「……。」


「……。」


少しだけ、間。


「……。」


「……帰ろうかな。」


ぽつり。

でも。


「……。」


足は、動かなかった。

その場に、少しだけ立ち尽くす。

何もない空間を、もう一度だけ見る。


「……。」


見えない。

でも。


「……。」


たぶん、まだいる。


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