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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
3章 おじさんと昔日

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73話 缶コーヒーのお化け

「……。」


同じホール。

同じ島。

同じ台。


「……。」


並んでる。

あの二人。


「……。」


レバーオン。

回る。

止める。

外れる。


「ほら。」


「またっすか。」


「“また”だな。」


「いや今のは——」


「今のもダメ。」


「厳しいですね。」


「だから言ってんだろ。仕事以外は厳しいんだって。」


「仕事では甘いんですか?」


「さあなー?」


「なんすかそれ。」


「大人の都合。」


「ずるいなあ。」


「お前もそのうち分かるよ。」


「分かりたくはないですね。」


「だろうな。」


「……。」


軽く笑う。


「……。」


レバーオン。

回る。

止める。

——揃う。


「お。」


「ほら。」


「たまたまっすよ。」


「またそれ言ってる。」


「たまたまですからね。」


「ほんと雑だな。」


「そうですかね?」


「そうだよ。」


「……。」


また笑う。


「……。」


音。


リール。


光。


全部。


軽い。


「……。」


少しだけ、間。


先輩が煙草を取り出す。


「お前、吸うんだっけ。」


「たまにですね。」


「たまに吸うならやめればいいじゃん。」


「やめる必要あります?」


「終わってんな。」


「そっちもでしょ。」


「俺はいいんだよ。」


「なんでですか。」


「もう手遅れだから。」


「終わってますね。」


「うるせー。」


「……。」


二人分の煙が浮かぶ。


「……。」


距離。

近い。

当たり前みたいに。


「……。」


ーーーーーーー


外。


空気。

少し冷たい。


「……。」


自販機前。


缶コーヒー二つ。

ブラックと甘いの。


「お前また甘いやつか。」


「ブラックは苦いですからね。」


「お子ちゃまだなー。俺は甘い方がいやだ。」


「……。」


少しだけ、静か。


「……。」


その時。

横。


「……。」


誰か立ってる。

スーツ。

俯いてる。


「……すみません。」


小さい声。


「……。」


先輩は気づいてない。

おじさんがちらっと見る。


「……。」


少しだけ、間。


「……なんすか。」


「……。」


「ケータイ、落としちゃって。」


「……。」


「……探してて。」


「……。」


少しだけ考える。


「……どこで?」


「駅前の……。」


「……。」


ため息。


「……はぁ。」


小さく。

でも。


「……。」


缶を飲み干す。


「……あとで一緒に行きましょう。」


「……え?」


「どうせ暇なんで。」


「……。」


その男は少しだけ顔を上げる。


「……ありがとうございます。」


「……。」


おじさんは軽くお辞儀する。


「……。」


そのまま。

ふっと、消える。


「……。」


先輩が横を見る。


「今なんか言った?」


「いいえ?」


「絶対なんか言ってたろ。」


「気のせいっすよ。」


「怪しいな。」


「そんなことより目押しのコツ教えてください。」


「……。」


少しだけ、笑う。


「ほんと変なやつだな、お前。」


「よく言われます。」


「直す気ないだろ。」


「必要感じてませんから。」


「だろうな」


「……。」


静か。

少しだけ。


「……。」


「まあでも。」


先輩が言う。


「そういうの、悪くねえよ。」


「……。」


少しだけ、止まる。


「……そうっすか。」


「おう。」


「……。」


短い返事。

でも。


「……。」


少しだけ。

嬉しそうだ。


「……。」


知らない。

こんな顔。


「……。」


なんか、変だ。


「……。」


二人はまた、

並んで戻っていく。

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