69話 旧型お化け
昼。
いつものホール。
いつもの匂い。
いつものBGM。
お気に入りの台。
派手に負けない、派手に勝てない。
そんな台。
「……。」
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
外れ。
セイコ。
横。
「……ねえ。」
「なんだよ。」
「……ここ、いる。」
「いるな。」
「やっぱり。」
「……。」
ユウトが横で、少しだけひきつる。
「やっぱり精度あがってるよなー。」
「……。」
その時。
「……はぁ。」
セイコの上から。
「……。」
「こんな若いねーちゃんに、目押しできるわけねぇだろ。」
「……。」
セイコ、少しだけ顔をしかめる。
「……なんかよくわかんないけど、馬鹿にされてる?」
「あぁ、そうだな。」
「……。」
セイコ、レバーオン。
リールが回転する。
「無理無理。」
「……。」
「絶対無理。」
「……。」
止める。
目押し成功。
セイコ、どや顔。
「余裕。」
「相変わらず上手いな。」
「おじさんが下手なだけだよ。」
「うるさいよ。」
上。
幽霊。
「……。」
少しだけ間。
「……上手いじゃねぇか。」
トーンが変わる。
「……。」
「そうか、こんな感じか。」
「……。」
もう一拍。
「……ありがとな。」
そのまま。
ふっと。
消える。
「……。」
静か。
いや。
ホールはうるさいまま。
でも。
上のやつはいない。
「……あ。」
セイコが小さく言う。
「……いなくなった。」
「そうだな。」
「……。」
セイコが少しだけ戸惑う。
「……今の、私?」
「さあな。」
「……。」
少しだけ間。
「……。」
「……妙に手慣れてるな。」
「え?」
「誰かに教わったか。」
「……うん、昔ね?」
「……。」
ユウトは笑って、
「おじさんより上手いよ、セイコ。」
「……そうかもな。」
セイコも笑う。
「おじさんにも教えてあげようか?目押し。」
「うるさいよ。」
少し不機嫌な声が響いた。




