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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
2章 おじさんと旅行

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68話 走るお化け

朝。


駐輪場。


「……行くぞ、イングラム。」


小声。

誰も聞いてない。

聞かれてはいけない。


ペダル踏む。

ギィ、と鳴る。

白い愛車。


道。

車。

人。

いつもの朝。

風は少し、冷たい。


「……。」


その時。


「なあ。」


横。


「……。」


いる。

並走すんな。


「レースしようぜ。」


「……。」


ミエテナイヨ。


ペダル踏む。


「なあって!」


「……。」


「ここからあそこまで!」


前。

信号。


「……。」


少しだけ。

ペダル、強く踏む。

ギィ。


「お。」


風、少し強くなる。


「いいねいいね!」


「……。」


もう一回、踏む。


「ノリノリだね!」


「……。」


信号、青。

そのまま抜ける。


「いい!すごくいい!!」


「……。」


ちょっと楽しい。


「ほら、イケる!」


「……。」


その時。


「……。」


ふと。


「……あほらし。」


力、抜く。

減速。

ギィ。


「え!?なんで!?」


「……。」


知らん。


「なんでえぇぇぇ……。」


「……。」


そのまま一人で突っ走って、

やがて見えなくなった。

走り続けろ。

風を目指せ。


ーーーーーーーーー



ホール。


駐輪場。

降りる。

スタンド。

ガコン。


「……。」


朝から疲れた。

煙草。


「……。」


喫煙所。


ポケットをまさぐる。

煙草。

100円ライター。


火をつける。

吸う。

吐く。

白い煙。


「……。」


落ち着く。


「……なんか疲れてない?。」


ユウト。

いつの間にかいる。


「あぁ。憑かれた。」


「また?」


ユウト笑う。


「で?何があったの。」


「走りたいらしい。」


「……は?」


「レース。」


「……。」


少しだけ間。


「ノッたの?」


「少し。」


「珍しいな。」


「なんとなくな。」


「で、満足させた?」


「急にあほらしくなって、やめた。」


「だろうね。」


盛大に笑う。


煙、吐く。


「……。」


「まだやってるのかな。」


ユウトが外を見る。


「さあな。」


どうでもいい。

煙、落とす。


「……行くか。」


「はいはい。」


喫煙所を出る。

自動ドア。

冷気。


「……。」


いつもの匂い。

いつものBGM。


お気に入りの台に向かう。


「……。」


セイコ。


「……あ。」


目が合う。


「どーも。」


「おう。」


「やっぱりここにいた。」


「他に行くとこないからな。」


「仕事だもんね。」


嫌みか。


少しだけ間。

セイコが、ふと外を見る。


「……。」


「……。」


「……ねえ。」


「ん。」


「さっきから、なんか……」


少し迷う。


「……外、走ってない?」


「……。」


「……。」


ユウトが吹き出す。


「例の奴じゃない?」


外。


まだ走ってる。


「……。」


「……絶対なんか走ってる。」


「そうか。」


「そうだよ。」


気にしたら敗けだ。

向こうはレース。

俺はスロット。


レバーオン。

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