62話 無気力お化け
昼。
人。
音。
熱。
「……。」
歩く。
「……まだ、いる気がする。」
セイコが小さく言う。
「そうか。」
「そうかじゃない。」
「……。」
「いるの?」
「たぶん、な。」
「たぶんって何。」
「分からないから分かる。」
「なにそれ。」
「人だな。」
「……。」
少しだけ間。
人の流れ。
「……。」
おじさんが、ほんの少しだけ視線を動かす。
「くるな。」
「え?」
セイコが反応する。
「どこ?」
「そこだ。」
顎で示す。
人混みの中。
女が近づいてくる。
「……妙な組み合わせだね。」
「あっ。」
ユウトが驚く。
「……。」
三人を見る。
「男探してるんだけど、知らない?」
「どんな?」
セイコが聞く。
女は少し考える。
「死んだ魚みたいな目してて。」
「うん。」
「無気力の塊みたいなやつ。」
「……。」
間。
セイコとユウトが同時に、俺を指差す。
「「これ。」」
「違う。」
即答。
おい。
「え?」
「違う。」
もう一度。
「それはもっとひどい。」
「ひどいな。」
「ひどいね。」
泣くぞ。
泣かないけど。
ユウトが笑う。
女は小さくため息。
「……そうか。」
「なんで探してるんだよ。」
「サボり野郎にお仕置きだね。」
それだけ。
「……。」
セイコが女を見る。
「……あれ。」
視線が止まる。
首元。
小さな勾玉。
「……似てる。」
「ん?」
「それ、流行ってるの?」
「……。」
ほんの一瞬。
女の目が細くなる。
でもすぐ戻る。
「どうかな。」
短く。
「色は違うけど。」
「そういうこともある。」
それだけ。
「……。」
セイコは少しだけ考える。
どこか、引っかかる。
女はユウトを見る。
「……ふーん。」
何か納得してるようだ。
ほんの少しだけ、視線が止まる。
「……。」
ユウトも、少しだけ眉をひそめる。
「……何?。」
「……いや。」
女は首を振る。
「なんでもない。」
「そうか。」
女は次にセイコを見る。
「見えてるね。」
「……ちょっとだけ。」
「まだ粗い。」
短く。
「見すぎると、疲れるよ。」
「……。」
その言葉にビクンと肩を震わすセイコ。
「……うん。」
小さく頷く。
「あんたが探してる男。」
「……?。」
「多分大通りのパチンコ屋にいる。」
「お?」
「多分、な。」
「……そうか。」
女は凄惨な笑みを浮かべ、
「感謝する。」
そう言って頭を下げ
人混みに消えた。
「あー、あの人か!確かに無気力な感じだった!」
「死んだ魚みたいな目してたな。」
「でもなんでおじさん、教えてあげたの?おじさんらしくないよ。」
「サボりはよくないからな。」
「おじさん、それ言う?」
「人生サボってるみたいなもんだよ?おじさんは。」
仲良いね、君たち。
「うるさいよ。」
「……でも」
セイコ。
「変な人たちだね。」
ユウトが小さく言う。
「あいつらは普通じゃない。」
「そうか?」
「そうだよ。」
「……。」
歩き出す。
人混み。
音。
熱。
午後は、まだ続く。




