60話 似ているお化け
セイコが男を見る。
「……どちらさん?」
「昨日、隣で打ってたやつ。」
「おじさん意外とコミュ力高い?」
「うるさいよ。」
男は独り言を止め笑う。
「どうも、おっさんのスロ友です。」
「いつそんな関係値上がった?」
男は俺の苦情を無視してセイコを見る。
「へぇ、見えてないのに分かるタイプ?」
「え?」
軽く言う。
「筋いいね。」
セイコの眉が動く。
「……それ、昨日も言われた。」
「そう。」
男はそれだけ。
その時。
セイコの視線が止まる。
「……。」
胸元。
小さな勾玉。
「あれ?」
「ん?」
「……それ。」
男が首を傾げる。
「なに。」
「……似てる。」
「何に。」
「昨日会った人の。」
小さく言う。
「形、似てる。」
「……。」
男は一瞬だけ黙る。
その沈黙が、少しだけ不自然。
「そっか。」
短く。
「色は違うけど。」
セイコが続ける。
「……そういうこともあるよ。」
男はそれ以上何も言わない。
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
ランプが光る。
ボーナス。
「お。」
「お。」
「お。」
「お。」
ハモんな。
音が変わる。
出玉が増える。
それだけでいいのに。
ノイズが多すぎる。
「……。」
男も隣に座る。
当たり前みたいに。
誰もいない台に。
「楽しいか?沖スロ?」
「楽しい。」
「そっか。」
男はどこか嬉しそうだ。
ユウトが横で笑う。
「仲良いな。」
「それはない。」
「言うと思った。」
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
ランプが光る。
楽しい。
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しばらく沖スロを、堪能して。
「……そろそろ行くか。」
「え、いいの?」
「買い物、いくんだろ?」
ユウトが横で頷く。
「ちゃんと約束守るんだ?」
「守れる約束はな。」
「もう止めんのか?」
「あぁ。とても、残念だが。」
「はは。あんたホントにおもしろいな。」
男は俺とユウトとセイコをみて言った。
「おっさんとその仲間たち。お前らおもしろいからまた来いよ!」
適当に返事をして席を立つ。
ホールを出る。
外。
暑い。
「……暑。」
「なんか不思議な人だったねー。」
「そうか?」
「ほんの少し、おじさんと似てた。」
「止めてくれ。」
ユウトは思案顔で言う。
「スタンス?思想?よくわかんないけど。確かに似てるところはあったかもな。」
自分ではわからない。
そんなに興味もないけど。
そんなことより、沖スロは楽しいということが分かった。
これが何よりもでかい。
そんなことを考えながら、俺たちは繁華街へ向かった。
妙な視線を背中に感じながら。




