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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
2章 おじさんと旅行

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59話 独り言お化け

朝。


ホテル。

カーテンの隙間から光。


「……。」


起きる。

暑い。

冷房は効いているのに。


「……。」


周りを見る。

ユウトはいない。


まあ、どっかふらついてるんだろう。


顔を洗う。


着替える。


財布。

煙草。

ライター。

確認。


扉を開ける。


ホテルのロビーで声をかけられる。


「どこ行くの?」


セイコ。

待ち伏せ?


「……ホール。」


「は?」


「せっかく沖縄まで来たんだ。」


「せっかく沖縄まで来たんだよ?」


「そうだな。」


「そうだなじゃない。」


「……。」


少しだけ間。


「じゃあ午前中だけね。」


「……え。」


何を言っているんだ、こいつは。


「午後は付き合って。」


「……何に。」


「買い物。」


え、面倒くーーープレッシャー。


「……そうか。」


「嫌そう。」


精一杯悲しい顔をしているのに。


「……。」


「ほんとブレないね。」


「そうでもない。」


「そう?」


ユウトもいつの間にかロビーにいた。

苦笑い。


「捕まっちゃったね。」


「……あぁ。」


「今までで一番悲しそうな顔じゃん。」


「そうだろ?」


「まあいいんじゃない?たまには。」


「……はぁ。」


ホテルを出る。

朝。

なのにもう暑い。

空気がぬるい。

湿ってる。

肌に貼り付く。


「……暑。」


「沖縄だからね。」


昨日見つけたホールへ向かう。


「ほんとに行くんだ……。」


セイコがぼそっと言う。


「当たり前だ。」


「なんか他にないの?選択肢。」


「ない。」


言い切る。

力強く。


「本当に、もう。」


逆に沖縄まで何しに来たんだ?


ユウトが横で笑う。


「呆れられてるよー?」


「うるさいよ。」


ホール。


自動ドアが開く。

冷気。

助かる。

暑さで死ぬとこだった。


「……。」


中に入る。


相変わらず多い。

人とそれ以外。


「……。」


ざっと見る。

通路。

台。

角。

壁際。


「……いる気がする。」


セイコが足を止める。


「おう。」


「いや、おう、じゃなくて。」


ユウトが小さく言う。


「多くない?昨日もこれぐらいいたの?」


「いたな。たぶん。」


「何かいった?」


「沖スロは何処かなと。」


「……、夢中だね。すでに。」


歩く。

探す。

“いない”場所。

で、沖スロ。


「……あそこだ。」


セイコ もついてくる。


三台。

沖スロ。

空いてる。


「……ここ?」


「ここだな。」


座る。

セイコも座る。


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


1000札を握ったまま。

サンドに入れない。


「どうした。」


「落ち着かない。」


「トイレ行ってこい。」


「そうじゃない!なんかいる。」


「いるな。」


「なんでそんなに普通なの?」


「何処にでもいるからな。あいつら。」


「……。」


「せめて確認だけでも。」


セイコは目を細める。

呼吸を整える。


一拍。


「……見えた。」


本当に見えるようになっているらしい。


「……。」


「見えてるの?」


「見えてるな。」


「だからなんでそんな普通なの。」


「普通だからな。」


「普通じゃないよ。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


その時。


「また来たの?」


後ろから声。

男。


データランプを見ながら、当たり前みたいに立っている。


「おう。」


「昨日ぶりだね。」


「そうだな。」


男がこっちを見る。

それから。


「……。」


ユウトを見る。

ほんの一瞬だけ。

止まる。


「……あんた。」


「ん?」


「……。」


男の目が細くなる。

でも、すぐ戻る。


「……なんでこんなもんが。」


ユウトが眉をひそめる。


「なに?初対面でこんなもん呼び?」


いや、そこじゃないだろ。


「おじさんこいつ、見えてるの?」


「見えてるらしい。」


「そっか。」


「……おっさんの関係者か。なら、いいか?」


何かぶつぶつ言ってる。


そうか。

独り言ってこんな風に見えるのか。

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