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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
2章 おじさんと旅行

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57話 ブレないお化け

「……。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


もう一回。

レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


隣。

同じタイミングで、同じ動き。

止める。

外れる。


「……。」


少しだけ間。


「……弱いな。」


男がぼそっと言う。


「そうだな。」


「据え置きないって言ったじゃん?」


「言ってたな。」


「なんで座ったの。」


「空いてたから。」


「理由それ?」


「あと、沖スロだから?」


男、少しだけ笑う。


「……やっぱおもしろいな。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。


ランプが光る。


「お。」


「お。」


ハモんな。


男がこっちを見る。


「当たった。」


「当たったな。」


「軽。」


「軽いな。」


そのままボーナス。

台の祝福。


「……。」


男は打ちながら、ちらっと通路を見る。


「……なあ。」


「なんだ。」


「さっきのやつ。」


「ん。」


「まだいる。」


「そうか。」


視線だけ向ける。


通路の奥。

さっきの“影”。

立っている。


でも。


「……。」


少しだけ、違う。


「……静かだな。」


男が言う。


「そうか?」


「さっきより。」


「そうかもな。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


もう一回。

レバーオン。

リールが回転する。

止める。

ランプが光る。


ボーナス。


楽しい。


「……。」


男、眉を寄せる。


「……なんでだ。」


「何が。」


「いや、あれ。」


通路を指す。


「さっきまで、もっと来てただろ。」


「そうだったか?」


「今、来てない。」


「そうかもな。」


「なんでだよ。」


「知らん。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


男、少し黙る。

それから。

もう一度、見る。


「……。」


影。

まだいる。

でも。


「……。」


近づかない。

ただ、立ってる。


「……。」


男がぼそっと。


「……寄ってきてる。」


「そうか?」


「少しずつ。」


「そうかもな。」


本当に。

ほんの少しずつ。

距離が縮まっている。


でも。

さっきみたいな圧はない。


「……なんでだよ。」


「知らん。」


「いや絶対あんたのせいだろ。」


「違うだろ。」


「違くないって。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

ランプが光る。


ボーナス。


とても楽しい。


「……。」


男、笑う。


「なにこれ。」


「楽しいな、沖スロ。」


「いやそうじゃなくて。」


「なんの話だ。」


「いや、……まぁいっか。」


少しの沈黙。

ボーナスの音だけが続く。


「……なあ。」


「なんだ。」


「これさ。」


通路を見る。


「……あいつ。」


「おう。」


「落ち着いてるよな。」


「そうかもな。」


「さっきまで、あんな感じじゃなかっただろ。」


「そうか?」


「……。」


男、少し考える。

それから。


「……関わってないよな。」


「そんな暇はない。」


打つのが楽しすぎる。


「……。」


少しだけ見る。

影。

まだ、いる。

でも。

ただ、いるだけ。


「……。」


男が、小さく笑う。


「……やっぱおかしいわ。」


「そうか。」


「何もしてないのに、ああなるか?」


「なるんじゃないか。」


「ならねえよ。」


「そうなのか。」


「そうだよ。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

ランプが光る。


ボーナス。


たまらん、これ。


「……。」


「……いや、当たりすぎだろ。」


少しの沈黙。

それから。

男が、ぽつり。


「……一番めんどくさいタイプだな。」


「なにが?」


「自覚ないやつ。」


「いや、楽しいぞ。」


「……はは、噛み合わないねぇ。」


また、レバーを叩く。

回る。

止める。

外れる。


「……。」


「……。」


通路を見る。

影。

まだ、いる。

でも。

さっきとは違う。


「……。」


ただ、そこにいるだけ。


「……。」


男が、ぼそっと。


「……そのままでいなよ。」


「……いい流れだしな。」


「いや、うん、もういいか。」


それだけ言って。

またレバーを叩く。


「……。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

ランプが光る。


ボーナス。


気持ちよすぎて俺が成仏するぞ、おい。


「……。」


「……。」


男、苦笑い。


「……ツイてるな。」


「ああ。珍しく、な。」


「珍しいのか。」


少しだけ間。

店内の音。

リール。

ざわざわ。


沖縄、悪くない。

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