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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
2章 おじさんと旅行

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53話 ズレないお化け

※ユウト視点です。

昼。


強い日差し。

アスファルトが白く光っている。


知らない道を、なんとなく歩く。

沖縄の空気は重い。

でも嫌いじゃない。


「……。」


視界の端に、ちらつくものがある。

人と人じゃないもの。

多い。


見慣れてはいるけど、やっぱり多い。

少しだけ速度を落とす。


——いる。


さっきから同じやつが、同じ距離にいる気がする。

気のせいかもしれない。

でも、なんとなく気持ち悪い。

視線を向ける。

目が合う。

その瞬間。


「ちょっといい?」


横から声。


「うわっ!?」


思わず距離を取る。

女。

近い。

いつからいた。


「……あんた何?。」


迷いのない声。


「……何ってーーー。」


「ヤナムン?マジムン?」


なにそれ?


女は一歩近づく。

距離が詰まる。

首元で、小さな勾玉が揺れる。


「まあ、いっか。」


手が伸びてくる。


「どっちでも変わらないし。」


「は——」


止める前に触れられる。

触られる?何故触れる。

肩。


「……。」


何も起きない。

女の手が、そのまま止まる。


「……あれ?」


もう一回、触る。

少し強く。


「……。」


何も起きない。

なんかちょっとだけ頭を揺らされたような気持ち悪さ。


「おい、やめろって!!」


「動くなって!!」


「無理だろ!!」


女は気にせず、もう一度触る。

今度は腕。


「……。」


やっぱり、何も起きない。

女の眉が寄る。


「……え?」


もう一回。


「……なんで?」


三回目。


少し雑に掴みにくる。

——掴める。

でも、それだけ。

何も起きない。


「……やっぱり。」


女が低く呟く。


「……戻せない。」


ユウトがさらに距離を取る。


「だからやめろって言ってんだろ!!」


「ちょっと待って。」


女は一歩踏み込む。

もう一度だけ、触る。

今度は慎重に。

確かめるみたいに。


「……。」


数秒。

何も起きない。

風の音だけが通り過ぎる。

女が、手を引く。


「……よくわかんない。」


あっさり。


「は?」


「祓えない。」


短い。


え、今俺祓われるとこだったの?

ノータイムで殺し(?)に来たの?この人。

怖いんですけど。


「……どういうこと?」


「知らない。」


即答。

少しだけ間。


女はこっちを見る。

さっきより、ほんの少しだけ真剣に。


「……あんた、何?」


「こっちが聞きてえよ。」


「だよね。」


小さく頷く。

でも離れない。

その場に残る。


「……。」


ユウトも動かない。

なんとなく、そのままになる。

妙な沈黙。

その時。


「……あれ。」


女が視線を外す。

通りの奥。

さっきのやつ。

同じ位置。

同じ距離。


「……いるね。」


「……ああ。」


ユウトも見る。

今度ははっきり分かる。

さっきより、近い。


「……あいつ。」


「うん。」


短く返す。


女、少しだけ前に出る。

さっきとは違う顔。

真剣なまなざし。


「……あっちは普通。ちょっとタチ悪いけど。」


確かに、少し禍々しいものを感じる。


「ズレてるやつ。」


俺を見る。


「あんたは違う。」


「……。」


意味は分からない。


でも、さっきの言葉と繋がる。

“祓えない”。

女が一歩、そっちに向かう。

止まらない。


「お、おい。」


「ちょっと待ってて。」


軽く言う。


「はぁ?」


「すぐ終わるから。」


そう言って、また一歩。

その瞬間。


——影が、少しだけ揺れる。

通りの奥の“それ”が、動く。

距離が、詰まる。


「……。」


女も気づいてる。

足を止めない。


「……来るね。」


「来てるな。」


自然に会話になる。

さっきまでのぎこちなさが、少しだけ消える。


「……。」


ユウトはその場に立つ。

逃げるか、一瞬迷う。

でも。


「……。」


視線だけ、外さない。

女の隣にいる形になる。

意識したわけじゃないのに。


「……あんた。」


「……。」


「動くなよ。」


「……。」


もう、目の前まで来ている。


「……。」


空気が重くなる。

さっきとは違う“気持ち悪さ”。

女が、軽く息を吐く。


「……じゃ、やるか。」


「は?」


振り向かないまま言う。


「そっちはそのままでいい。」


「何がだよ。」


「そのままで。」


それだけ。

説明はない。


「……。」


意味は分からない。

でも。

さっきの「祓えない」が引っかかる。


俺は動かないまま。

目の前の“それ”を見る。


——距離がゼロになる。


そこで。

次の瞬間。

空気が、張り詰めた。

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