52話 三冠のお化け
昼。
いつもと違うホール。
いつもと違う匂い。
いつもと違うBGM。
少しテンションが上がる。
ユウトは散歩。
幽霊でも初めての土地は気になるらしい。
俺より人間臭い。
セイコは買い物。
あれ以上荷物を増やしてどうするのか。
やっぱり商人なのか?
「……。」
多い。
人とそれ以外。
通路。
座ってる。
立ってる。
少しテンションが下がる。
「……はぁ。」
ざっと見る。
探す。
“いない”場所を。
沖スロ。
三冠のやつ。
空いてる。
向かう。
同時に横から手が伸びる。
「……。」
「……。」
男、データランプを触る。
「ここ据え置き使わないよ。」
「そうか。」
「前日出てるし。」
「そうだな。」
「狙いは角2。」
「俺はここがいい。」
「ちなみに根拠は?」
「……。」
「そう。」
また間。
どっちも動かない。
男、ふっと笑う。
「……あんたさ。」
「ん。」
「見えてるでしょ。」
「あぁ。」
即答。
男、頷く。
「だよな。」
台に目をやる。
誰もいない。
「そこ、いないもんな。」
「いないな。」
通路。
視線だけ流す。
明らかに多い。
「……多い。」
「今日はマシな方。」
「そうか。」
男、首のネックレスを指で弾く。
小さな勾玉。
「俺は別に、どこでもいいけど。」
「じゃあ俺が座る。」
「あんたおもしろいな。隣で打たせてもらうわ。」
男は隣をシッシと追い払う。
少しの沈黙。
「隣で打つのか?」
「譲るんだからいいだろ?」
「……。」
「代わりに一つ。」
「なんだ。」
「あんた何もしないタイプ?」
「何もしない。」
「へぇ。」
少しだけ笑う。
「一番面倒なやつだ、それ。」
座る。
やっと本場沖スロを打てる。
サンドに1000円を入れる。
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
外れる。
その横で。
件の男が同じ動きでリールを回している。
「……なあ。」
「なんだ。」
「ここ、居心地いい?」
「別に。」
「だよな。」
小さく笑う。
「普通じゃないからさ。」
「どこにでもいるだろ、こいつら。」
「違いない。」
少しの沈黙。
店内の音。
リール。
ざわざわ。
その奥。
かすかな声。
「……。」
男、ぽつり。
「関わらない方が楽だよ。」
「……そうだな。」
「余計なことすると、増えるし。」
「……ああ。」
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
外れる。
ふと。
視線を感じる。
通路の奥に立っている。
男だ。
さっきはいなかった。
じっと。
こっちを見ている。
「……。」
逸らす。
男も見てる。
「……来てるね。」
「来てるな。」
「どうする?」
「何もしない。」
「いいね。」
少しだけ楽しそう。
次の瞬間。
その影が、少し近づく。
誰も気づかない。
店員も。
客も。
ただ二人だけが見えている。
「……あんたさ。」
「ん。」
「そのままでいなよ。」
「……何が。」
「変に触るとさ。」
間。
「戻れなくなるから。」
「……そうか。」
それだけ。
それ以上は何も言わない。
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
外れる。
知らないホールはやけに無機質に感じた。




