51話 やって来たお化け
昼。
来たぞ、沖縄。
外に出た瞬間。
「……暑。」
空気が重い。
まとわりつく。
セイコは元気。
「うわー!南国って感じ!」
「うるさいよ。」
「テンション低っ!」
「暑いならな。」
ユウトは横。
「……なんかさ。」
「……ああ。」
小声。
「ここ、変だね。」
「濃いな。」
「やっぱり?」
「あぁ。」
セイコ、不満顔。
「また独り言?」
「癖だ。」
「……。」
歩く。
人が多い。
観光客。
笑い声。
普通の風景。
でも、違う。
すれ違う。
その瞬間。
セイコの肩が揺れる。
「……え?」
立ち止まる。
振り返る。
誰もいない。
「どうした。」
「今、なんか……」
言葉を探す。
「ぶつかった、ような。」
「人が多いからな。」
「……だよね。」
歩き出す。
ユウト、小さく。
「今の、完全に触ってた。」
「……ああ。」
「セイコ、気づいてる?」
「なんとなく、な。」
「時間の問題じゃない?」
「……かもな。」
セイコ。
自分の腕をさする。
「……なんか、寒い。」
「クーラーが効いてんだろ。」
「外だけど?」
「そうだな。」
バス。
乗り込む。
席に座る。
セイコは窓側。
外を見る。
ユウト。
少し離れて立つ。
「……増えてる。」
「ああ。」
「これ、ここの普通?」
「さあな。」
セイコ、ぽつり。
「……ねえ。」
「ん。」
「ここさ。」
「なんだ。」
「なんか、変じゃない?」
「観光地だぞ。」
「そういうのじゃなくて。」
「気のせいだ。」
即答。
ユウト、苦笑い。
「雑。」
「うるさいよ。」
一瞬窓に映る。
知らない顔。
セイコの後ろ。
セイコ、固まる。
「……っ。」
振り返る。
誰もいない。
「どうした。」
「……なんでもない。」
目を逸らす。
ユウト、小さく。
「今の、やばいやつ。」
「見えてない。」
「でも感じてる。」
「だから面倒なんだよ。」
バスが動く。
ゆっくり進む。
「……俺は沖スロ打ちたいだけなんだけどな。」
誰に向けたか分からない言葉。
ただ。
嫌な空気は纏わりついたままだった。




