46話 揃い出すお化け
夜。
公園。
昨日と同じ場所。
街灯。
風は少し冷たい。
ベンチ。
いる。
同じ位置。
同じ向き。
「……いるな。」
「うん。」
セイコ。
ユウトは何も言わない。
ただ、見てる。
「……。」
目を細める。
変わってない。
昨日と同じ。
「……どうするの?」
セイコ。
「どうもしない。」
「それじゃ意味ないじゃん。」
「あるだろ。」
「どこに?」
「見に来ただけだ。」
「それ昨日も言ってた。」
「今日もだ。」
「進展ゼロじゃん。」
「まあな。」
「……。」
少しだけ間。
セイコ、ベンチを見る。
「……やっぱりさ。」
「……。」
「待ってるっていうより。」
「……。」
「止まってる、だよね。」
「……。」
ユウト、わずかに頷く。
「……あー。」
煙草。
火。
点ける。
吸う。
吐く。
「……で?」
「で、って?」
「それでどうする。」
「……どうにかする。」
「方法は?」
「……。」
無言。
「ほらな。」
「うるさい。」
「……。」
風。
少し強い。
その時。
ベンチの女。
わずかに。
ほんの少しだけ。
顔が動く。
「お。」
「あ。」
「え。」
ハモんな。
「今、動いたよね?」
「……たぶんな。」
ユウト、じっと見る。
「……今。」
小さく。
「気づいた。」
「……何に。」
「……来てる。」
「……。」
セイコ、振り返る。
「なに?なんかあった?」
「いや。」
「なんでもない。」
「絶対あるじゃん。」
「キノセイダヨ。」
「それ昨日も聞いた。」
「……。」
ベンチ。
女はまた、止まっている。
でも。
さっきと少しだけ違う。
「……もう一回。」
セイコ、近づく。
「すみません。」
風。
揺れる。
「……。」
「……来てる。」
ユウト。
「……。」
「おい。」
声をかける。
「……。」
一瞬。
女の視線が、ほんの少しだけ動く。
セイコの後ろ。
何もない場所へ。
「……。」
セイコ、振り返る。
何もいない。
「……?」
ユウト、そこを見る。
「……いる。」
「……来てたな。」
「え?」
「何が?」
「終わってる。」
「は?」
「待ってたやつは、もう来てた。」
「……。」
セイコ、もう一度ベンチを見る。
女。
少しだけ。
肩の力が抜ける。
「……。」
風。
抜ける。
女の輪郭が。
少しずつ。
薄くなる。
「……あ。」
セイコ。
「……。」
ユウトは何も言わない。
ただ、見る。
女は。
そのまま。
ほどけるように。
消えた。
「……消えた?」
セイコ。
「まあな。」
「……なんで?」
「そういうもんだ。」
「……。」
少し間。
「……でもさ。」
「……。」
「なんか、ちゃんと終わった感じする。」
「……そうだな。」
ユウト、小さく頷く。
「……帰るか。」
「うん。」
「……。」
三人、歩き出す。
街灯の光りが優しく見えた。




