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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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45話 動かないお化け

昼前。


いつものホール。


いつもの匂い。

いつものBGM。


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


横。


「今日は静かだね。」


ユウト。

元気なまま。

輪郭、はっきりしてる。

ちょっと慣れた。


「……いつもと同じだろ。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


気配。


「おじさん。」


セイコ。


「……おう。」


「ちょっといい?」


「よくない。」


「いいじゃん。」


勝手に座る。


「……なんだよ。」


「友達の友達なんだけどさ。」


「他人だな。」


「夜になると、公園に誰かいるんだって。」


「人だろ。」


「違う。ずっと同じとこにいるって。」


「寝てるんだろ。」


「毎日。」


そういう人もいるけどな。

飲み込む。


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……それ、多分“いる”。」


ユウトが真面目な顔をする。


「多分、あれだよね。」


セイコも真面目な顔をする。


仲良いね、君たち。


「……あー。」


思い出す。


「なに?」


「いや、多分前からいる。」


「え?」


「公園のベンチ。」


「知ってんじゃん。」


「まあな。」


「なんで言わないの?」


「別に困ってないし。」


「困ってる人いるんだけど。」


「俺は困ってない。」


「冷た。」


「……。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……夜な。」


「行くの?」


「見るだけだ。」


「ありがとう。」


セイコ、頷く。


ユウト、少しだけ嬉しそう。


「……なんでお前が嬉しそうなんだよ。」


「いや、なんとなく。」


「……。」


ーーーーーーーー


夜。


公園。


街灯は少ない。


風、少し冷たい。


ベンチ。

いる。

おそらく女の。


同じ位置。

同じ向き。


「……あれだな。」


顎でしゃくる。


「どれ?」


「ベンチのとこ。ずっと座ってる。」


「……影みたいなやつ?」


「見えるのか?」


「なんとなく?あれ人じゃないの?」


「違う。」


「なんでわかるの?」


「……ずっと同じだから。」


「……?」


ユウト、前を見る。


「……。」


「……。」


変わってない。

前と同じ。


「話しかけてみる。」


豪胆。


セイコ、一歩前。


「すみません。」


反応、ない。


「……。」


「大丈夫ですか?」


「……。」


何も動かない。


「ねえ、聞こえてる?」


「……。」


振り返る。


「ねえ、無視されてない?」


「されてるな。」


「ひどくない?」


「……。」


ユウト、少しだけ首を振る。


「……違う。」


小さい声。


「……届いてない。」


「……あー。」


「なに?」


セイコ。


「いや、なんでもない。」


「絶対なんかあるじゃん。」


「キノセイダヨ。」


「雑。」


「……。」


女は動かない。

同じ姿勢。

同じまま。


「……帰るか。」


「え?」


「今日は無理だ。」


「ちょっと!」


「ズレてるやつは、急に直らん。」


「……。」


セイコ、もう一度見る。


ベンチ。

動かない人影。


「……明日も来る?」


嫌だ。

面倒くさい。

横からプレッシャー。


「……おう。」


「じゃあ、また来る。」


「好きにしろ。」


歩き出す。

ユウト、少しだけ振り返る。


「……。」


そのままついてくる。


出口。

街灯の下。


「……どうするの?」


セイコ。


「どうもしない。」


「それじゃ――」


「今日はな。」


「……。」


少し間。


「……なんかさ。」


セイコ。


「待ってるっていうより。」


「……。」


「止まってる感じ、しない?」


「……。」


ユウト、小さく頷く。


「……。」


煙草。

火。

吸う。

吐く。


「……まあ、そんなとこだ。」


「なにそれ。」


「明日だ。」


「……うん。」


「……。」


ユウトも、小さく。


「……うん。」


少し風が吹いた。


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