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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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44話 逃げたお化け

朝。


いつものホール。


いつもの匂い。

いつものBGM。


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「ちょっと早い。」


「うるさいよ。」


横。

ユウト。

なんか知らんが元気になった。

輪郭、くっきりした。


もう一回。

レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


気配。


「どうもー。」


セイコ。

なんか久しぶり。


「……おう。」


「おじさん、いつもこれ打ってるね。好きなの?」


好きだ。

派手に負けないし。

派手に勝てないけど。


「まあな。」


「なんかセイコ、スッキリしてる。」


お前がそれいうな。

昨日まで不安定の極みだっただろうが。

体、ぶれてたし。


「……ふう。」


「どうしたの?」


「……煙草。」


喫煙所。

ドア開ける。

壁にもたれ掛かる。


ポケットをまさぐる。

煙草。

100円ライター。

火点ける。

一吸い。

吐く。


若者の成長に当てられる。

片方、幽霊だけど。


「……元気なのは、いいこと、か。」


吸う。

吐く。

煙、広がる。


「……。」


なんか、疲れる。


「……帰るか。」


駐輪場。

白いママチャリ。

股がる。


「……行くぞ、イングラム。」


小声で言う。

誰にも聞かれていない。

聞かれてはいけない。


ギィ。

ペダル重い。


いつもの帰り道。

日はまだ高く。


進む。


いつかの公園。

ベンチに横になる。


風、丁度いい。


眠い。


ーーーーーーー


寒い。


夜。

寝過ぎた。


起き上がる。

目の前、男がいる。


「……。」


「……。」


めっちゃ見てくる。

よく見ると透けている。

また例のやつだ。


「頼みーーーー」


「嫌だ。」


被せる。


「聞くぐらいしてくれ。」


「断る。」


「……公園を出て左の道を進んだところにおでんの屋台がある。そこで飯を食って行ってやってくれ。」


おでん?

そういえば腹、減ってる。


「……なにそれ?」


「……味は保証する。」


まあいいか。


「わかった。」


公園を出る。

左へ進む。

赤提灯。

見つけた。


暖簾をくぐる。


「いらっしゃい。何にしましょう。」


親父。

絵に描いた様な屋台の親父。


「熱燗、たまごとちくわ。」


「へい。」


屋台久しぶり。


中を見渡す。

写真。

さっきの男とこの親父。

いつかの自転車屋を思い出す。


「お待ち。」


たまご、ちくわ、熱燗。


たまご、うまい。

ちくわ、うまい。

熱燗、熱い。


「はんぺんとがんもも。追加で。」


「へい。」


気にしすぎか。

色々と。

らしくない。


「煙草吸っていい?」


「どうぞ。」


腹を満たして。

酒を飲んで。

煙草を吸って。


「……まあそういうもんか。」


夜は更けていく。


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