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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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40話 ライターとお化け

夜道。


街灯はまばらで。

足音、ひとつ分。


「……。」


男、前を行く。

少し、遅い。


「……まだか。」


「……もうすぐだ。」


「……。」


後ろのユウト。

気配は薄い。


「……。」


曲がる。

細い道。

青いアパート。

外階段。

錆びてる。


「……ここだ。」


「……。」


二階。

一番奥。

明かりがついている。


「……。」


「……いるな。」


「……あぁ。」


男、少しだけ前に出る。

手が止まる。

触れない。


「……。」


ノックは、しない。


「……開いてる。」


「……は?」


「……あの子、閉めないんだ。」


「……不用心だな。」


「……似たんだ。」


「……。」


ドアを少し開ける。


中はワンルーム。

狭い。


机。

カップ麺。

参考書。

女。

床に座ってる。


「……。」


ペン、止まる。


「……はぁ。」


小さく、息。


「……むず。」


「……。」


男はドアに近づく。


「……。」


「……また落ちたらどうしよ。」


女、ぽつり。


「……。」


「……親父、なんて言うかな。」


「……。」


男の動きが止まる。


「……。」


壁にもたれる。

煙草は、吸わない。

吸いたい。

我慢。


「……。」


「……でも、まあいいか。」


女、ペンを回す。


「……。」


「……別に、見てないし。」


少しだけ、笑う。


「……。」


男は俯く。


「……。」


「……だからさ。」


女。

誰もいない方向。


「……ちゃんとやるから。」


「……。」


「……心配すんなって。」


「……。」


静か。

風の音だけ少しする。


「……。」


男、息を吐く。

出ない。


「……。」


「……大丈夫そうだな。」


小さい声。


「……。」


一歩、下がる。


「……ありがとう。」


「……。」


「……顔、見れた。」


「……そうだな。」


男は笑う。


「……じゃあな。」


「……おう。」


すっと。

消える。

音もなく。


「……。」


女。

ペンを走らせる。

何も気づかない。


「……。」


ドアを閉める。


外。

夜。

空気、少し冷たい。


「……終わりか。」


「……うん。」


ユウト。

遅れて出てくる。


「……。」


「……。」


歩く。

少し静かになった。


「……なあ。」


「……。」


「……見えてたのか。」


「……ちょっとだけ。」


「……。」


「……でも、よかったね。」


「……。」


ポケットをまさぐる。

煙草。

100円ライター。

火。

点かない。

吸えない。


「……そうかもな。」


「……。」


ユウト。

少しだけ、笑う。


「……。」


一瞬。

また、遠い。

輪郭がぶれる。


「……。」


「……おい。」


「……。」


「……なに。」


気付いてないのか。


「……。」


少し、間。


「……いや。」


「……。」


また、歩く。

夜の音。

少しだけ、遠い。


ポケットの中。

壊れたライターを指で弾いた。

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