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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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38話 豚のお化け

「ねえ、おじさん。」


「なんだよ。」


「お礼させて。何食べたい?」


セイコ、隣。

歩幅、少しだけ早い。


「……ラーメンだな。」


「えー、もっといいやつでもいいのに。」


「……ラーメンだ。」


「……。」


「……わかったよ。」


街外れ。

豚骨ラーメン屋。

そこそこ有名らしい。


「……。」


看板。

『ラーメン 生け贄の豚』


「……。」


センス。


「……お邪魔します。」


「……らっしゃい!」


店内、豚骨の匂い。

腹減った。


「……うまそう。」


「……。」


食券機。

ボタン。

並ぶ、奇妙な文字列。


「……。」


『昇天・極脂の滝』


修行ミスって昇天してる。


『悶絶・豚の断末魔』


業が深い。


『漆黒の冥界の煮卵つけ麺』


なんか、もう。


「……。」


『断末魔』、押す。


セイコは昇天したいらしい。


カウンター。

座る。


「……。」


「……味噌こそが至高に決まっている!。」


「……分かってないな、醤油ですよ、醤油!」


声。

横。


「……。」


いた。

男。

作業服、二人。

透けてる。


「……いいや、ラーメンは味噌に限るんだよ!」


「何言ってるんですか、醤油一択でしょうが!」


「……。」


言い合い。

盛り上がっている。

セイコ、肩を震わせる。


「……なんか、いる?」


「……さあな。」


「醤油だ!」

「味噌だ!」


ハモんな。


「……。」


ユウト、呆れた顔。


「……ここ、味噌も醤油もないんだけど。」


「……。」


俺、コップの水。

一口。


「……なあ。」


「なんだよ!」


幽霊、二人。

こっち向く。


「……ここ、豚骨ラーメンだぞ。」


「……は?」


「……え?」


二人、止まる。

顔、見合わせる。


「……あ。」


「……そうだったのか。」


「……。」


「……じゃあ、いいや。」


「……ですね。」


すっと。

消える。

静か。


「……。」


「……あれ、おじさんなんかした?」


「気のせいだろ。」


「……。」


「お待ち! 豚の断末魔です!」


ドン。

置かれる。

真っ赤なスープ。

背脂、たっぷり。


「……。」


レンゲ。

掬う。

一口。


「……。」


熱い。

辛い。

美味い。


「……。」


麺。

啜る。

ユウト、じっと見てる。


「……。」


「……おじさん、うまい?」


「……。」


無言の肯定。

ひたすら、啜る。


「……。」


完食。

汗、少し。


「……。」


「……ごちそうさま。」


「……お粗末!」


外。

夜。

風が心地よい。


「……。」


「……どうだった? 断末魔。」


「……。」


少しだけ、考える。


「……名前、なんとかならなかったのか。」


「……あはは。独特だよね。」


「……。」


「……さて。」


辺りを見回す。

見つけた。


喫煙所。


「おじさん、今日はありがとね。また相談に乗って。」


口の中に広がる断末魔。


「……気が向いたらな。」


ポケットまさぐる。

煙草。

100円ライター。

火を点ける。

一吸い。


「おじさん、俺からもありがとう。たぶんおじさんいなきゃ、あの子無理してた。」


「……だろうな。」


煙を吐く。


「……ありがとう。」


「……おう。」


煙りは広がってそのまま消えた。

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