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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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37話 密着型お化け

古いアパート。


階段。

軋む。


「……ここ。」


「……そうかよ。」


ドア。

開く。

隙間から、漏れる。

湿った空気。


「……お邪魔します。」


「……どうも。」


セイコの友達。

女。

隈が、刺青みたいに濃い。


「……ごめんね、急に。」


「いいよ。」


部屋。

狭い。


「……。」


いる。

女の、すぐ後ろ。


首筋に顔を埋めるようにしている男。

青白い無表情。


「……。」


「……なんか、いる?」


女が、力なく笑う。


「……。」


「……。」


「……あのさ。」


「……。」


「……近いの。ずっと、耳元で呼吸されてるみたいに。」


「……。」


ユウトを見る。

顔をしかめて、一歩引いている。


女、座る。

男も、影のようにぴったりとついていく。


「……。」


後ろ。

無言。

近い。

女の存在を、塗り潰そうとしているみたいだ。


「……。」


「……おい。」


女はビクリと肩を揺らす。


俺は男を指差した。


「……それ。」


「……。」


「……近い。鬱陶しい。」


「……。」


止まる。


男。

女の肩越しに、ゆっくりと顔を上げる。


無表情。

泥のような視線を俺にぶつける。


「……。」


「……あ。」


男は音もなく女から剥がれた。


空気がピチャッと鳴る。


「……。」


そして男は何も言わず、足元から溶けるように消えた。


「……あれ。」


「……。」


「……軽い。」


「……。」


「……消えた?」


女が、自分の肩をさする。


「気のせいだろ。」


「……。」


女が息を吐く。


「……おじさん、ありがとう。」


「……何もしてない。帰るぞ。」


「……うん。」


外。

階段。


「……。」


「……。」


セイコ。


「……ごめん、おじさん。ありがとう。」


「…キニスルナ。」


「棒読みじゃん。」


「……。」


月明かり。

歩く。

風はぬるい。


「……。」


喫煙所。

ポケットまさぐる。

煙草。

火を点ける。


一吸い。

吐き出す。

白い煙。


真面目な顔のユウト。


「……タチ、悪いやつだった。」


「……そうかもな。」


回転するリールがやけに恋しかった。


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