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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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35話 デビューのお化け

いつものホール。


いつもの匂い。

いつものBGM。


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「…目押しうまくなんないね。」


「うるさいよ。」


横。

変わらない。


もう一回。

レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「……。」


「……こんにちは。」


声。

横じゃない。

後ろ。


「……。」


振り向く。

セイコ。


「……おう。」


「……どうも。」


少しだけ間。


ユウトをちらっと見る。

なんだその面白い顔。


「……。」


セイコは何も感じてない様子。


知らない顔をする。


「……。」


「……座らないのか?」


「……うーん。」


座らない。

後ろで立ったまま。


「……ねえ。」


「なんだよ。」


振り返る。

セイコの隣。

いかにも大学デビューみたいな茶髪ロン毛デブ男。

うっすら透けてる。


「……なんかさ。」


少しだけ顔しかめる。


「……気持ち悪くない?」


「……だろうな。」


「……え?」


「ねえねえねえねえねえ」


軽い声。


「……っ」


セイコ、肩すくめる。


「ちょ、なにこれ」


「触っていい?ねえ触っていい?てかもう触ってるけど。おねーちゃんみてーな子も打つの?俺すげーよ?3日連続万枚とか余裕だから。だから一緒に遊ぼうよ。」


「……やだ、なにこれ」


腕、さする。

何もないはずなのに。


「うわ、すべすべ。いいねいいね。」


「……。」


ユウトを見る。

ゆでダコかな。

ホントに表情豊か。

幽霊だけど。


「……はぁ。」


ため息をつく。


「……気持ち悪い。」


「え。」


「……そういうことばっかしてっから、モテねえんだよ。」


「……え?」


止まる。


「……。」


「……マジ?


……あー……。


……そういう、ことかぁ……。」


少しだけ、しょんぼりする。


「……。」


「……ごめん。」


小さい声。

ふっと。

消える。

静か。


「……。」


「……え、なに今の。」


「シラナイヨ。」


「いや絶対……。」


「……。」


「……。」


少しだけ間。


「……。」


セイコ、じっと見る。

居心地が悪い。


「……。」


「……なんかさ。」


「……。」


「……おじさんいると、こういうの減る気がする。」


「気のせいだろ。」


「……うん。」


でも、少しだけ近い。


「……ここ、いていい?」


「好きにしろ。」


「……うん。」


「……。」


横。

不愉快そうなユウト。


「……。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

外れる。


「ちょっと早いね。」


「ちょっと早いよ。」


ハモんな。

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