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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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27話 ブランコお化け

昼。


適当な時間。


ホールを出る。


メダルも出ない。

やる気も出ない。

……それはいつもか。


「……。」


白のママチャリ。


鍵外す。

またがる。


「……行くぞ、イングラム。」


誰も呼んでない名前を、呼ぶ。

小声で。


ペダル踏む。


ギィ、と鳴る。


走る。

風。

ぬるい。


「……。」


さっきのやつ。

ユウト。


「……。」


なんか、変だった。

いつもより、

ぼんやりしてた。


「……幽霊って寝落ちするんだな。」


何か酷く憔悴してたけど。


「まあ、何かあったら言うだろ。」


ペダル踏む。

ガタガタする。


「……。」


セイコ。


あれも、よく分からん。

見えないのに、

なんとなく分かってるって顔してる。


「……。」


関わりたくないなぁ。

出来るなら。

何で隣来るんだよ。

空き台なんか捨てるほどあるのに。


「……。」


信号待ち。

止まる。

ぼーっとする。


考えてないのに

考えている様な顔をするのは得意だ。


「ねえ。」


「……。」


キコエテナイヨ。


今お腹いっぱいなんだ。

無視。


「ねえってば。」


「……。」


子供の声。


「……はぁ。なんだよ。」


横を見る。

小さい。

女の子。


「それ、なに?」


「……チャリ。」


「名前あるの?」


ぐぬ、まあガキだしいいか。


「……ある。」


「なんていうの?」


「……イングラム。」


「かっこいいね。」


「……そうか。」


少し嬉しい。


信号、青。

漕ぐ。


「ねえ。」


「……。」


憑いてくる。

めんどくさい。

チャリの早さ追い付いてくんな。


「どこいくの?」


「……適当。」


「ふーん。」


しばらく並走。


「……。」


静か。


「……なあ。」


「なに?」


「……なんでついてくる。」


「ひまだから。」


「……そうか。」


納得する。

いや、出来ないけど。

最近女運悪くないか?


「……。」


少し走る。

川沿い。

人、少ない。

止まる。


「……で。」


「うん。」


「……何。」


「……。」


ちょっと考えてる。


「……あのね。」


「……。」


「ブランコ、乗りたい。」


「……うん、乗れば?」


見る。

向こう。

公園。

古いやつ。


「……。」


「乗れないの。」


「……。」


ああ。

そういうやつか。

ため息、ひとつ。


「……押すだけ、な。」


「うん!」


元気。

眩しい。

幽霊の癖に。

でも歩く。


公園。


誰もいない。


ブランコ。

ギシ、と鳴る。


「……座れ。」


「うん。」


座ってる“つもり”の形。


「……。」


軽く押す。

揺れる。


「わあ。」


楽しそうで何より。


「……。」


もう一回。

押す。

揺れる。

風。


「……たかい!」


「……そうか。」


適当。

何回か繰り返す。

端から見たら完全な変態だな。

……まあ、いまさらか。


「……。」


そのうち、

声が小さくなる。


「……ありがと。」


「……。」


止める。

振り返る。

いない。


「……。」


ブランコだけ、

揺れてる。

ギシ、ギシ。


「……。」


少し見る。


「……こいつらはいつも勝手だな。」


戻る。

チャリ。

またがる。

ペダル踏む。


「……。」


さっきのやつ。

ユウト。


「……。」


まあ、あいつもそのうち、どうにかなるだろ。

どうにもならん時は、そうだな。

どうしよう。

2万枚は無理だぞ。


「……。」


セイコも。


「……。」


風。

ぬるい。


「……まあいいか。」


考えるの、やめる。


ペダル踏む。

進む。


たまにはこんな日もいいだろ。

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