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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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25話 呼ばれないお化け

昼。


いつものホール。

いつものBGM。


ーー微かな違和感


「……なあ。」


「……なんだよ。」


「……今日も、いる。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

——外れ。


「……何が。」


「……変なの。あそこ。」


ユウトの視線が、通路の端に固定される。


「……。」

つられて目をやる。


誰もいない。

——いや、いる。


見えてるのに、

うまく“形にならない”。


「……あぁ、みつけた。」


間。


「……ずっと、立ってる。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

——外れ。


「こんにちは。」


横から声。

後ろからは悲鳴。

死ぬかと思ったとかギャグですかね。


「今日もいいですか?」


セイコ。


「……好きにしろ。」


隣に座る。

少しだけ間。


「……ねえ、おじさん。」


「……。」


「……あそこ、なんか変じゃないですか?」


「……気のせいだろ。」


即答。


でも。

ほんの少しだけ、視線が戻る。


「……来る。」


ユウトの声が低い。


「……こっち見てる。」


「……。」


通路の端。

さっきより、近い。

でも。


「……あれ。」


セイコが眉を寄せる。


「……。」


「……。」


「人、みたいなのに……違う。」


腕をさする。


「……寒い。」


「……なあ。」


ユウト。


「……あいつ、ずっと口動いてる。」


「……。」


「……でも、聞こえねえ。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

——外れ。


「……ねえ。」


セイコがぽつり。


「……今、誰かに呼ばれた気がしました。」


「……。」


「でも……違う。」


少し考える。


「……呼ばれてない。」


「……何言ってんだ。」


「……分かんないですけど。」


視線を向ける。


「……あれ、“誰にも合ってない”感じがする。」


「……。」


ユウトが小さく頷く。


「……ズレてる。」


「……。」


「……俺たちと。」


一歩、近づく。

距離だけが縮まる。


「……。」


セイコが、ゆっくり息を吐く。


「……こういうの、初めてかも。」


「……。」


「……うっすら見えるのに、見えない感じ。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

——外れ。


「……なあ。」


ユウト。


「……あいつさ。」


少しだけ間。


「……“どこにもいない”んじゃねえか。」


「……は?」


「……見えてるのに。」


「……認識が、合ってない。」


「……。」


その瞬間。

影が、少し揺れる。

輪郭が崩れる。


「……。」


セイコが、目を細める。


「……今、見えた気がする。」


「……。」


「……でも、すぐ見えなくなる。」


「……。」


ユウトがぽつり。


「……こいつ、“呼ばれない”やつだ。」


「……何をだよ。」


「……どこにも引っかからない。」


「……。」


その瞬間。

影が、ふっと薄くなる。

最初からいなかったみたいに。


「……。」


セイコが息を吐く。


「……消えた?」


「……さあな。」


レバーオン。

リールが回転する。

止める。

——当たり。


遅れて音が鳴る。


「……すご。」


「……。」


ボーナスが始まる。


「……ねえ、おじさん。」


「……。」


「……さっきの、なんだったんでしょうね。」


「……知らないよ。」


適当な返事。

でも。

ほんの一瞬だけ。

通路を見る。


「……。」


もう、いない。

はずなのに。

床の端。

染みみたいな影だけが、

少し残っていた。

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