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何もしてないのに、幽霊だけ勝手に成仏していくおじさん ~スロプーおじさんは除霊なんてしたくない~  作者: Samail
1章 おじさんと日常

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17話 いつものお化け

ホールの外に出た。


さっきまでの音が、遠い。


「離せって言ってんだろ!!」


少し先。

ユウトが、引きずられている。


「逃げるな!!ユウジ!!」


「離せよ!ジジイ!!」


「父さんだ!!」


「知らないって!!」


「……。」


少し離れて、それを見る。


「……何やってんだ。」


小さく呟く。


「おじさん!!」


ユウトが気付く。


「助けろって!!」


「……。」


少しだけ考える。


「……だめだぞ?ユウジ。」


「違うわ!!悪ノリが過ぎる!!」


「帰るぞ!!ユウジ!!」


「だから違うって言ってんだろ!!」


「……。」


小さく息を吐く。


「……めんどくさいなぁ。」


歩き出す。

距離が縮まる。

ジジイの横に立つ。


「……あんた。」


「なんだ!!」


「そいつ、違うだろ。」


「何言ってる!!俺の息子だ!!」


「違うって言ってるだろ!!」


「……。」


少しだけ、ユウトを見る。


「……違うらしいぞ。」


「違わん!!」


「違うわ!!」


「……。」


少しだけ間。


「……名前、なんだっけ。」


「ユウジだ!!」


「ほら違うじゃねえか!!」


「似たようなもんだ!!」


「似てねぇよ!!」


「いや、似てはいるぞ?響きに関しては。」


「あんたは何しに来たんだよ!!」


三人で、言い合う。

噛み合わない。


「……。」


「……あんた、どこに帰るつもりなんだ。」


「家だ!!」


「どこだよ。」


「……。」


ジジイが、少し止まる。


「……あっちだ。」


指をさす。

暗い方。


「……。」


「ユウジの部屋も、そのままだ。」


ぽつりと、言う。


「……。」


ユウトが黙る。


「ゲームも、まだ置いてある。」


「……。」


「帰らないと、怒られる。」


「……誰にだよ。」


「……。」


ジジイは答えない。

ただ、ユウトの腕を掴んだまま。


「……。」


少しだけ間。


「……一回だけだ。」


俺の言葉にユウトはギョッとした。


「……あ?」


「そこまで、行ってやれ。」


「は?なんで——」


「いいから。」


「……。」


ユウトは、顔をしかめる。


「……すぐ戻るからな。」


ぶっきらぼうに言う。


「帰るぞ!!ユウジ!!」


「だから違うって言って——……」


小さくため息。

そのまま、歩き出す。


古い家だった。

灯りはない。

静かだ。


「ほら、着いたぞ。」


「……。」


「……ユウジの部屋だ。」


ドアの前で、ジジイが止まる。


「……。」


ゆっくりと、手が離れる。


「……帰ってきたな。」


満足そうに言う。


「……。」


ユウトは、何も言わない。


「帰っただろ。」


「……ああ。」


ジジイが、頷く。


「……そうだな。」


小さく笑う。


「……じゃあな、ユウジ。」


「……。」


少しだけ間。


「……。」


「……おう。」


小さく返す。

気付けば、ジジイはいなかった。


「……なんだったんだよ、あれ。」


ユウトが呟く。


「……さあな。」


「……。」


少しだけ間。


「……おい。」


「なんだ。」


「……悪ノリしすぎだろ。」


「攫われてる顔が間抜けすぎてな。」


「……はぁ。」


少しだけ、静かになる。


「……戻るか。」


「……ああ。」


並んで歩く。

いつものホール。


音が戻る。

リールの回転音。

メダルの音。

いつものノイズ。


「……。」


席に座る。

隣にも、いる。


「また外してるじゃん。」


「うるさいよ。……ユウジ。」


「……俺が悪霊だったらおじさん今頃4万回は死んでるからな?」


「怖いねぇ、じゃあはやく成仏してもらわんとな、と。」


当たり。


台が祝福する。

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