16話 怒鳴るお化け
いつものホール。
自動ドアが開く。
どうでもいいいつもの雑音。
聞いたことがあるようなないようなBGM。
昨日の違和感が嘘みたいだ。
「……。」
いつものお気に入りの機種に座る。
派手に負けない、派手に勝てない、そんな台。
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
外れ。
「……。」
変わらない。
それでいい。
もう一度。
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
外れ。
目押しがズレる。
「……早いよ。」
隣から声がした。
「目押しはそんなに得意じゃないからな。」
視線を向ける。
いる。
少し膨れた顔で、 いつも通りの場所に。
ユウトは、少しだけ不機嫌そうに言う。
「昨日、来なかっただろ。」
「休みだったからな。」
「だから?」
「……普通は来ねえだろ。」
「ああ、普通はな。」
「いや、俺は普通だろう。」
「いや、どうだろう?」
少しだけ間。
「……。」
レバーオン。
ちょい熱演出。
リールが回転する。
止める。
外れ。
「……相変わらずだね。」
「……。」
「それ外す?」
「うるさいよ。」
「いやそれは——」
「うるさいよ。」
いつものやり取り。
「……。」
少しだけ、静かになる。
「……。」
レバーに手を置く。
「……。」
「……なんだよ。」
「別に。」
「そうかよ。」
「……。」
「……。」
少しだけ、笑う。
「……まあいいか。」
「何がだよ。」
「別に。」
「なんだ、それ。」
「……。」
レバーオン。
リールが回転する。
止める。
——その時だった。
「おい!!」
やけにでかい声。
「……あ?」
振り向く。
見知らぬジジイ。
やたら距離が近い。
「見つけたぞ!!」
「……誰だよ。」
「ユウジ!!」
「は?」
「やっと見つけたぞ!!」
「いや誰だよ。」
「何言ってる!!父さんだろうが!!」
「違うわ!!」
「帰るぞ!!」
「え、どこに!?ちょ、待てって!!」
ジジイは、ユウトの腕を掴む。
「離せよ!!」
「逃げるな!!」
「逃げるわ!!誰だよお前!!」
「ユウジ!!」
「だから誰だよっ!!」
そのまま——
ずる、と。
引っ張られる。
「おい!!」
ユウトが振り返る。
「おじさん!!」
「……あ?」
「助けろ!!」
「……。」
一瞬、間。
「……ええと、お幸せに?」
「いや、ふざけてんな!!」
「帰るぞユウジ!!」
「だから違うって!!」
そのまま、連れていかれる。
すっと、遠ざかる。
「……。」
少しだけ遅れて、立ち上がる。
「……なんだあれ。」
誰に言うでもなく呟く。
「……。」
もう一度、さっきの方を見る。
いない。
「……。」
小さく息を吐く。
「……めんどくせえなぁ。」
メダルを返却してダラダラと歩き出した。




