144話 縛られないお化け
※ユウト視点
夜。
「……。」
静か。
「……。」
ホールの喫煙所。
おじさんは煙草を吸ってる。
「……。」
「……さっき。」
小さく呟く。
「……。」
「……触れた。」
「……。」
スマホ。
重さ。
感触。
「……。」
「……おじさん、スマホ貸して。」
「……。」
おじさんは、ズイッと俺の顔の前へスマホを突き出す。
もう一回。
やる。
「……。」
触れない。
「……。」
「……は?」
もう一回。
「……。」
触れない。
「……。」
「……なんでだよ。」
「……。」
さっきは、
できた。
「……。」
今は、
できない。
「……。」
「……。」
「……ムラあるな、お前。」
「……。」
おじさん。
煙を吐く。
「……。」
「……シロとかよ。」
煙を吐く。
「……。」
「わらしも、河太郎も。」
「……。」
「……いつでもやってたけどな。」
「……。」
「……。」
「……あんなもののけ様たちと並べんな。」
小さく言う。
「……もものけ様、か。」
おじさんは楽しそうだ。
「……。」
「……俺、できないんじゃなくて。」
「……。」
「……出来ると思ってないだけか。」
「……。」
おじさんは何も言わない。
「……。」
煙だけ、吐く。
「……。」
「……。」
「……口裂けのやつがさ。」
「……。」
「……変なこと言ってたんだ。」
「……。」
「軽いのに、ぶれてない、とか。」
「……。」
「……自分で成ったのか、とか。」
「……。」
「……。」
おじさんは、少しだけ笑う。
「知らないよ。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……でもよ。」
煙草を咥え直す。
「……。」
「……あいつらは、ああいうもんだ。」
「……。」
「……お前は違う。」
「……。」
「……。」
その言葉で、
止まる。
「……。」
「……違う。」
「……。」
「……俺さ。」
「……。」
「……決めてたのかな。」
「……。」
「……勝手に。」
「……。」
幽霊だから。
触れない。
そういうもんだって。
「……。」
おじさんの隣にいる。
それが、自分だって。
「……。」
決めてた。
「……。」
「……。」
思い出す。
「……。」
『縛るな』
『決めるな』
『固まるな』
「……。」
「……あー。」
小さく、笑う。
「……。」
「……なんだよ、それ。」
「……。」
「……。」
手を見る。
「……。」
触れるかもしれない。
触れないかもしれない。
「……。」
見えるかもしれない。
見えないかもしれない。
「……。」
どこにでも、
いけるかもしれない。
「……。」
「……。」
少しだけ、
上へ飛ぶ。
「……。」
「……。」
一瞬、
少しだけ、
不安になる。
「……。」
「……。」
戻る。
「……。」
その横に戻る。
「……。」
「……。」
少しだけ、
何か分かった気がした。
言葉にできるほど固まってはいない。
ほのかな感触。




