139話 『この町の七不思議 その6』カーブミラー
※アラト視点
夕方。
帰り道。
「……。」
「……。」
目の前。
小さな交差点。
「……。」
赤い縁のカーブミラー。
「……。」
「ここです。」
キクエ。
「……え。」
思わず言う。
「……これ?」
「はい。」
「……。」
どう見ても普通。
ただのカーブミラー。
「……。」
少し後ろ。
サクラさん。
立ってる。
「……。」
「動きが、遅れて映るそうです。」
「……。」
「観測者の動作と一致しない挙動が確認されています。」
「……。」
「……。」
「……検証、するの?」
「当然です。」
即答だった。
「……。」
セイコさんが少しだけ笑う。
「まあまあ。」
「……。」
いや笑えないって。
「……。」
キクエが前に出る。
「では、開始します。」
「……。」
やるのか。
ほんとに。
「……。」
キクエが手を上げる。
「……。」
ミラー。
「……。」
同時に、上がる。
「……。」
普通。
「……。」
手を下げる。
「……。」
同時に、下がる。
「……。」
「……普通だな。」
「初期状態では異常は確認されません。」
「……。」
だよな。
「……。」
その時。
「……。」
セイコさんが、少しだけ首を傾げる。
「……。」
「……もう一回。」
「……。」
何?
「……。」
キクエがもう一度、手を上げる。
「……。」
ミラー。
「……。」
一瞬。
「……。」
遅れる。
「……?」
「……。」
「……今。」
セイコさん。
「……。」
「……遅れた。」
「……。」
「……え?」
「……。」
キクエが、ゆっくり手を下げる。
「……。」
ミラー。
「……。」
少し遅れて、
下がる。
「……。」
「……。」
「……は?」
「……。」
空気が、
少しだけ変わる。
「……。」
「……もう一回。」
セイコさん。
「……。」
キクエ。
頷く。
「……。」
手を上げる。
「……。」
ミラー。
「……。」
遅れる。
さっきより、
少しだけ。
「……。」
「……。」
「……なあ。」
「……。」
「……これ、さ。」
「……。」
「……やばくない?」
「継続します。」
「大丈夫かよ!?」
「必要です。」
「……。」
この微妙な会話の合ってない感じ。
「……。」
ふと、
気づく。
「……。」
サクラさん。
「……。」
ミラー、見てない。
「……。」
ずっと、
下。
地面見てる。
「……。」
「……。」
その時。
「……。」
キクエが、
動きを止める。
「……?」
「……。」
「……どうした?」
「……。」
キクエは、
ミラーを見ている。
「……。」
じっと。
「……。」
「……。」
「……なあ。」
「……。」
「……キクエ?」
「……。」
反応しない。
「……。」
「……。」
ミラー。
「……。」
キクエ。
動いてない。
「……。」
でも。
「……。」
ミラーの中。
「……。」
キクエが、
動いた。
「……!?」
「……。」
一歩。
前に。
「……。」
でも、
現実のキクエは、
動いてない。
「……。」
「……え。」
「……。」
「……おい。」
「……。」
「……キクエ!!」
「……。」
その時。
「……。」
キクエが、
ゆっくり言う。
「……。」
「……ズレています。」
「……。」
「……ズレてるというか、別物じゃないか?」
「……。」
ミラーの中のキクエが、
もう一歩、
前に出る。
「……。」
現実は、
動かないまま。
「……。」
「……。」
「……なあ。」
「……。」
「……これ、マジでやばくない?」
「……。」
セイコさんが、
小さく言う。
「……。」
「だめ。」
「……もう、見ないで。」
「……。」
「……見てると、引っ張られる。」
「……。」
ミラーを見る。
「……。」
見てる。
俺。
「……。」
ミラーの中の俺。
「……。」
一瞬。
「……。」
遅れる。
「……。」
「……。」
「……あれ?」
「……。」
「……今。」
「……。」
「……俺。」
「……。」
ミラーの中の俺が、
少しだけ、
遅れて、
こっちを見た。
「……。」
「……。」
心臓が、
変な音を立てる。
「……。」
その時。
「……。」
サクラさんが、
ぽつり。
「……もう、大分ズレてるね。」
「……。」
「……は?」
「……。」
ミラーの中。
「……。」
キクエが、
振り向く。
「……。」
現実は、
まだ動いていないのに。




